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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
119/201

平然としてるようにも見えたと思う

二年生になった美智果は、かなり落ち着いたようにも見えた。僕と二人きりの生活にも慣れて、平然としてるようにも見えたと思う。でも、実際には表面上そう見えるだけなんだってことを僕は知ってる。だって、僕自身がそうだったから。


僕が割り切ってるように振る舞うのは、無意識に辛いことと折り合おうとするからだと自分では分析してる。本当は割り切れてないから、割り切れてると自分に言い聞かせてそういう言動をとるようにしてるだけなんだろうなって感じてる。


だけど、それができてしまうというのは僕が薄情で冷酷だからっていうのも感じてしまうんだ。


それでも、自分が薄情で冷酷だというのを逆に活かすことはできる。だってそのおかげで、妻が亡くなったのを理由に感情的になって他人に八つ当たりせずに済んでるのも事実だし。特に、美智果に八つ当たりせずに済んでるのはすごく助かってる。


自分が辛いからって、苦しいからって、他人に八つ当たりするのは余計に問題を拗れさせるだけだ。八つ当たりされた方にしてみればそんな事情とか知ったことじゃないからね。


冷静に考えたら分かると思うんだ。アニメで、誰かに八つ当たりして口汚く罵ってるようなキャラがどんな風に見えるかっていうのを。


そんな人を助けたいと思う? そんな人に優しくしたいと思う? 今の自分がそういうキャラと同じだっていうのにどうして気付けないんだろう。自分が誰かに助けてもらえないのも、優しくしてもらえないのも、結局自分の所為じゃないのかな?


僕がこんな風に言ってるのを『説教臭い』って感じる人もいると思う。でも、それを説教臭いと感じるのは、思い当たる節があるからじゃないのかな?。そういうのがなければただ聞き流しておけばいいことだと思うし。


こういうことを延々と考えてしまうのは、そうしないといられないからなんだ。これは全部、本当は僕自身に対して言い聞かせようとしてることなんだ。ここまで毎日毎日毎日毎日、自分に言い聞かせてないと自分が保てないからなんだ。本当に立ち直れてて平気で気にしないでいられてるなら、こんなことをする必要もない筈だし。


大人である僕でさえこの有様なんだから、まだ小学二年生の美智果が平気な筈がないと思う。変に気を遣いすぎて腫れ物に触るような感じになるのも違うと思うけど、だからって『いつまでもうじうじするな』って怒鳴ったりするのも違うと思う。そんなの、『うじうじしてるやつを見てると気分が悪いっていう自分を甘やかしてる』だけだと思う。


だから僕は、美智果に対してそんなこと言いたくないんだ。



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