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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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本当に自分に厳しい人っていうのは

<厳しい指導>っていうものの殆どが、実は自分のストレスを相手に転嫁してるだけっていうのをすごく感じる。だから自分の指導が上手くいかなくてストレスがかかるとさらにエスカレートするんだ。そうやって自分に掛かったストレスを相手に転嫁する為に。


上手くいかないというのはそのやり方が適切じゃないっていうことの筈だから、本来は別のやり方を試すとか、適したやり方ができる他の人に任せるとかするのが合理的な筈なのに。


本当に自分に厳しい人っていうのは、他人には優しい筈なんだ。自分の思う通りにならないのを他人の所為にしないから。


僕もまだまだぜんぜん自分に甘いと思う。そんな僕が美智果に対して偉そうになんてできない。僕なんかが偉そうにしてたらそれこそ美智果に信頼してもらえない。


それを自分に言い聞かせて、僕は毎日を過ごした。一日一日を無事に過ごすことを心掛けて。


多くは望まない。大それた希望も抱かない。ただただ穏やかに静かに毎日を送る。一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て。美智果が九時過ぎに寝るから僕も九時過ぎに寝る。その分、朝早く起きて家のこととかして仕事をする。


そのおかげか、僕の体調はすこぶる良好だった。妻が亡くなってしばらくの間は倦怠感があったり胸が痛くなったりしたけど、それも一年もしないうちにすっかりなくなった。健康的な生活っていうのは、確かに効果があるんだなって実感した。


気分が落ち込んでる時に不健康な生活をするとますます気分が沈んでいくんだろうな。


健康的な生活ってのを、実は僕も馬鹿にしてたんだ。今度のことがあるまでは。まあもっとも、気分が落ち込んでない時に不健康な生活をする分には結構楽しかったりするけどさ。


そんな僕の目の前で、美智果はどんどん成長していく。一見しただけでは昨日のあの子と今日のあの子は何も変わってないようにも見えるけど、実は違うんだ。間違いなく成長していってる。


美智果は、いつも笑顔だった。時折、ふとしたはずみで無表情になることもあっても、少しすれば笑顔になってくれた。半年が経ち、一年が経ち、二年生になる頃にはテレビとかで人の死を窺わせる話が出ても呆然とするようなことも殆どなくなってた。ただそれでも、ママと同じ病気で亡くなった人の話を聞いたりすると沈んだ顔をすることもある。


だから僕は、油断はしないように心掛けた。『もう大丈夫』って決め付けないようにして、注意深く見守った。


そういうのを過保護って言うのもいるかもしれない。でもそんなのは、自分が親にそうしてもらえなかったことを僻んでるだけだと思う。恨むなら、自分の親を恨むべきだろ。他人に八つ当たりして何が解決するんだ。



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