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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
113/201

美智果以外の誰に嫌われても平気だ

妻が入院してた時から美智果との二人暮らしは始まってたけど、これでもう、本当に、完全に美智果との二人暮らしが始まってしまった。


妻の遺骨は親族の方に引き取られた。美智果が墓参りに来るのはいいけど僕が行くのは許されてない。だからうちにあるのは妻の遺品だけだ。遺骨も位牌も向こうにあるから。


でも、僕にとっては遺骨も位牌もただの<物>でしかない。そこに妻はいない。それは妻じゃない。そんな物よりは、僕の中にある妻の方がよほど確かなものだと思う。


僕のこういうところも、嫌われる原因なんだろうな。


けど、別にいいよ。今はもう、美智果以外の誰に嫌われても平気だ。僕を嫌う人とケンカしてる醜い姿を美智果に見せたくない。自分にとって気分が悪いからって、都合が悪いからって、誰かを口汚く罵ってる親の姿を子供に見せることがどれほど悪影響を与えるか、僕は知ってしまったし。


ネットで誰かを罵ってる人間達は、自分の姿を鏡に映してみるがいい。たぶんそこに、自分の親の姿が透けて見えるから。子供を見れば親が分かるというのは本当だと僕は思う。たとえどんなに体裁よく繕ってる親だったとしてもね。


親を馬鹿にされたくないんなら、自分の態度を見直すべきじゃないかな。それができるかできないかも、自分の親から受け継いでると思うから。それができない人は、親がそれをできない人間だったんだと思うよ。


ああ、こんなことを言ってるとますます嫌われるな。でもいい。それでもいい。これで感情的になるようなら、まさに図星ってことだろうから。


だけど、僕がこんなことをしてたら美智果に迷惑がかかるな。それも嫌だ。言いたいことはまだまだあるけど、自重しよう。それに僕のこんな姿を美智果に真似されても困る。


ただ、あの子もいずれ、母親を亡くしたことの苦しさとか悲しさとか苦しさを、大きくなっていろいろと考えるようになるからこそ自覚するようになるかもしれない。今はまだ子供だから難しく考えないから気にせずに済んでる事でも、気になってくるかもしれない。


特に、母親を守ってくれなかった僕に対する恨みとかね。


それも、覚悟しておかないといけないな。


愛情を注いだから何もかも許してもらおうっていうのもムシのいい話だと思ってる。あの子の母親を守ってあげられなかったことは、恨まれても仕方ないことだから。もしそれで美智果に嫌われても、僕は美智果を恨まないようにしたい。『ここまで育ててやったのに』とか言いたくないんだ。


それ自体が、妻を守ってあげられなかった僕への報いかもしれないし。



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