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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
112/201

そのおかげで、僕は

愛し合って結婚したからと言って、何一つ不満がないなんてことは滅多にないと思う。お互いに別の人間である以上、そこに行き違いや齟齬が生じる方がむしろ自然なんじゃないかな。だから、普段は気にならなかった程度の不平不満でさえ、自分の死を目の当たりにしたら気になってしまったんだろうな。


だからそれは別に構わない。ただ、良かったことも無かったことになったのが悲しい。


でも、今さらそれを言っても始まらない。すべては終わったことだから。


って、ああそうか。僕のこういう切り替えの早さみたいなものも、薄情で冷酷に見えるんだろうな。


……いや、薄情で冷酷なのも事実なのか……


なるほど罵られても当然か。


だけどこれが僕なんだ。妻もそれは知ってたはずなんだけどな。知ってて結婚した筈なんだけどな……




人間には欠陥や欠点があるのが当然だと思う。そういうのがない人間なんて僕は会ったことがない。見たこともない。


自分は完璧だ、欠点なんて何もない。って思い込んでる人間なら何度か見たことあるけどさ。だけど、そんな風に思い込んでることがもう欠点であり欠陥だよね。自分を客観的に見られないっていう点で。


誰しもがそういう欠陥や欠点を抱えて、それと上手く折り合いをつけて生きていくのが人間だと思う。だから僕も妻の欠陥や欠点についても受け入れてきた。イラッとすることはあっても、それだけで他の良いところを全否定してしまうようなことはしたくなかった。


パッと目についた嫌な部分だけを見てその人の全てを分かった気になって何もかも否定するような姿を、僕は美智果に見せたくない。美智果が誰かの一面だけを見て罵るような人になってほしくないから。


ネットを見てると、そういうコメントで溢れかえっている。ちょっと気に入らないことがあっただけで他人の人格も存在も根こそぎ否定して『死ね』と言わんばかりの攻撃をしてるのを見ない日はない。


そんな風に他人を罵ってる自分を醜いと思わない人にはなってほしくない。


あの三ヶ月は、美智果にそういったことを学んでもらう機会でもあったと思う。妻が美智果の前では優しい母親の姿を崩さないように最後まで努力してくれたことは、本当に感謝してる。たとえ死に瀕しても、超えてはいけない一線を自分で引いてそれを守り通す姿を見せてくれたから。


それはすごく大きなことじゃないかな。今の美智果を作ってるとても大きな要素の一つだって気がする。


そのおかげで、僕は、あの日からやってこれたんだ。



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