出勤前の…
時は移り変わり数年後の世界。
世界と言っても既にシロ達の住む国以外の諸外国は滅びた後なので、正確には《国》と表記すべきだろう。
世界に在る国はかつて日本と呼ばれた国、杜鏡のみとなっており、国籍を問わず生き残った人々が杜鏡にて日々を送っている。
何があったかは一先ず置くとして、あれからシロとスミは晴れて結ばれた。
こそばゆい友人関係を経てシロの熱烈なアプローチが決め手となったのだ。
良くも悪くも二人の生まれ育った環境は他人からしてみれば取っ付き辛く恋敵とのレースになる事も無く、大逃げでのゴールインを果たした。
既に多様性が確立された社会構造も二人の追い風となった。
やり取りこそ子供っぽいが二人は自立した面もあり、二人共に職に就いて仕事もこなしている。
スミは見た目に反して技術面での才能に突出しており、業界内では知る人ぞ知るエンジニアとしてその腕をいかんなく振るっている。
シロはと言うと意外な事に都庁の職員、つまるところ公務員として働いている。
正直そこに至るまでの紆余曲折があったため職業については大っぴらに公言は出来ないのだが、それでもスミは凄いねと喜んでくれたのでシロは特段気にしない事にしている。
「シロちゃん今日もお仕事?」
「うん」
何より環境に変化こそあれど二人の関係性は変わらない。
真っ白な部屋に映えるパステルカラーと甘い香り。
二人の帰るべき場所は何時だって此処だから。
「スミちゃんもカンヅメ続いてるみたいだけど大丈夫?ちゃんと寝れてる?」
「私は大丈夫だよ。最近はお仕事が楽しいから全然疲れ感じないの」
「私もだよ」
天職も天国も自分達は得たのだとシロは常々感じている。
例え此処が地獄であったとしても二人一緒なら楽園に変えられるとさえ思っている。
「でもね…会える時間が少ないとちょっと、寂しいかなって」
答え合わせの様な言葉と熱っぽい視線が帰って来る。
これこそが答えそのもの。
何時だって彼女はシロに答えをくれる。
此処こそが自分達になくてはならない場所。
彼女こそがなくてはならない存在なのだ。
「ね、今度一緒にお出掛けしよ。
お買い物とか公園でのんびりするのもアリだし、髪も伸びて来たみたいだから…今度切ったげる」
「…うん」
そのお返しに行動で示したい。
言葉を架け橋にして貰う代わりに、自分から彼女を迎えに行く。
折れてしまいそうな腰を支えて空いた手では彼女の頬をさする。
確かに彼女がそこに居る事を感じながら、唇を捧げた。
「行ってらっしゃい、シロちゃん」
「行、スミちゃん」




