プロローグ 大人の消滅
―――ピンポーン
いつもどうり変わらない1日。
『あんたー!起きなさーい!また梨花ちゃんが来てるわよー!』
「う、う~ん……。」
日光を感じ、チクチクとした刺激が目に届く。いつもどうりの変わらない1日が、今日も始まったのだ。
「……あと五分だけ~」
「「私を待たせといてまだ寝るというのかッ!!」」
―――ドンッ!
勢いよく、扉が蹴り開けられる。薄目で見ると幼なじみの梨花が、部屋の隅にあったバックに手を掛け……
「―――痛いッ!」
おもいっきり制服とバックを俺目掛け投げてきた。こ、こいつ。華奢くな身体なのに、どうしてこんなに速く、重いものをぶん投げられるんだよ……
「な、何するんだよぉ……」
「「何するんだよぉ」じゃないでしょ!もう8時すぎてるのよ!あんた学校休む気!?」
「お前に知ったことじゃないじゃん……」
「口答えしない!さっさと服きて学校行くわよ!」
真里塚梨花。小学生の時からの幼なじみで、よく遊んだ中だ。今の俺が堕落しなかったのもこいつのお陰であり、そこは感謝してるのだが……
如何せん、皆をまとめたりするタイプであり、妥協しない。毎日遅刻しそうな俺を起こしに来てお袋の様に怒鳴ってくる。それを他の連中に言うから、溜まったもんじゃない。
おっと俺が悪いと言わないでくれ。2026年発売されたゲームがこれまた俺の睡眠を削って―――
「「―――だからさっさと服を着なさいっ!」」
「は、は~い……」
―――
1時00分 昼休み
何とか遅刻せずに済んだ。これも梨花のおかげだ。いやぁ~助かった助かった。
校庭を見渡すと生徒が走っている。インターバル走か?大変そうだ。
「おい。お前また委員長に起こされたのか?お前も大変そうだなぁ~」
「でも、梨花って結構美人だよなぁ~。羨ましいぜ。」
「なぁにが羨ましいだ。たしかに感謝しているところはあるが俺にとっては地獄だわ。」
「でもお前ら。1部の奴らの間で付き合ってるとか何とか言われてるんだぞ?」
「は?付き合ってないけど?」
一体誰がそんな噂流したんだよ?化け物みたいなあいつの1面を知らないバカが、そんな噂を流したんだろうな。
「まぁ、毎日一緒に学校来て、一緒に帰ってるんだから、「付き合ってない。」ていうのが無理あるよなぁ。俺達から見ても付き合ってるように見えるし。」
「や、やめてくれ~。俺とあいつが付き合ってるだと~?それだけで悪寒が―――」
「―――なぁにぃ?もしかして梨花姉の話~?何話してたか教えてよ!」
突如、首に腕が回り込まれる。少しでも逃げようとしたら、首が締められそう……いや確実に締められ、落とされるだろう。
「―――か、花梨ちゃん。別に俺たちは君のお姉ちゃんの話なんてしてな―――」
「こいつと委員長が、付き合ってるように見えるって話だ。花梨ちゃん的にはどう見えてんの?」
「―――な、なんで言うんだ―――」
息がしずらくなる。花梨のやつ俺の首をッ!
「―――う、うぅぅ!!」
「うーん……私から見ても、いつ付き合うの?て感じ。だって毎日梨花姉は早起きして、弁当作って、起こしに行ってるんだよ?それで委員会の仕事も早く終わらしてほぼ毎日一緒に帰ってるでしょ?」
―――う、うぐぐぐぐ。
「お前。男として悲しくならないのかよ。一層お前が羨ましいと思ったぞ。」
「それで梨花さんの悪口を裏で言ってるって……お前ってほんと情けないなぁ~……」
「え!?梨花姉の悪口言ってたの~?私用事出来たから帰るね~」
「―――ま、待てぇぇいい!!」
「嫌だよ~!じゃあ皆の衆さようなら~!」
「はぁはぁはぁ……」
首を軽くしてられていたからか少し苦しい……。これじゃあ陸上部の花梨には追いつけないな……。
「花梨ちゃんも大変だよなぁ。お前なんかの相手をしてて。まぁ元気いっぱいで見てる分には可愛くて、面白いけど。」
「あんのメスガキ……。次会った時には覚えておけよ……」
―――
―――
―――
下校する時はよく川沿いに沿って帰る。春の時は涼しい風が吹き、夏の頃は綺麗な太陽が見え、秋の頃は土手沿いに綺麗な花が咲き、冬の時には寒い風が逆にいい。四季それぞれいい所があるこの場所が俺は好きだ。
―――付き合ってるように見えるぞ
今日も梨花と一緒に帰る。太陽に照らされてる横顔を見ると、たしかに《《綺麗》》だ。
俺はこの顔を何回も見ている。小学校から今まで。一緒に帰らなかった時の方が少ない。
こいつは……俺のことをずっと考えて……
俺は……《《何を想ってるんだろうか?》》
「ねぇ。」
「は、はい」
「はぁ~。なぁに畏まっちゃてるのよ。いつもは何か話すのに今日は静かね。」
「あ、あぁ。」
「花梨から聞いたわよ。何?私の悪口言ってるんだって?」
「う、うぅ……」
「あんたも変わらないわねぇ……ほんとっ。」
長い沈黙が流れる。こんなこと俺達の間ではあんまりない。
確かに俺達は、川が太陽光を綺麗に反射し、花が咲き誇るこの道で帰っていた。毎日たわいのないことを話し、梨花が虐められた時には、俺が慰め、俺が梨花を虐めてた相手をぶん殴り問題を起こした時には梨花が俺を必死に守ってくれていた。俺は……変わった方がいいのかもしれないな。
「俺とお前が他のやつからは、……」
「ん?何?」
「……」
「付き合ってるように見えてるらしい……」
梨花の顔を見る。大きい目に、高い鼻。太陽光が輪郭を際立たせている。
―――綺麗だ。
俺は、初めて梨花をそういう風に見た。小学校から今まで、兄弟みたいなもんだと感じてたのに……俺は……
「ふふ、、似合わないわねぇ~。」
「な!なんだよ!俺は真剣なんだぞ!」
「じゃああんたは私のことどう思ってるのよ?」
「な……」
「真剣なら……答えられるでしょ?」
「……」
言葉が思い浮かばなかった。俺は梨花に……《《そういう考え》》をしていいのか分からなかった。
その後は、沈黙が続いた。結局俺は梨花に想いを伝えられなかった。
家に帰ってからも、ずーっとその事が頭を離れなかった。ゲームをやろうとしても梨花のことが頭をよぎり続かなかった。
俺は……梨花のことを……
―――
―――
―――
―――
―――
「……あ、あれ?」
寝ちゃったのか?6時……か。
布団から体を起こす。こんな時間に起きるのは珍しいからか何か違和感がある。
「母さーん?」
母さんを呼ぶも返事がない。いつもこの時間には起きてるはずだけど……
ドアを開けリビングに向かうも、そこには誰もいなかった。普段ならこの時間に母さん父さんがいるはずなのだが……。何か嫌な感じがした。家中を探すも、母さん父さんはどこにもいなかった。
気づけば1時間が経っていた。連絡をするも帰ってこない。一体何が起きて……
「―――ッ!」
突如RPGのゲーム音のようなものが部屋の中に響いた。
《《おめでとうございます(^-^)》》
《《この星は舞台に当選しました(^-^)》》
な、何が起きているんだ?!半透明なゲームのような画面が見え、文章が次々と打ち込まれていく。
《《ストーリーは《《子供だけの世界で》》亜人と戦うこと(^-^)いやぁ~楽しそうですね(^-^)》》
《《子供だけの世界》》……だと?
《《正式リリースまで残り3……2…………1》》
《《リリースおめでとうございます(^-^)》》
《《初心者のあなた方はチュートリアルを読むのをおすすめしております!チュートリアルを表示しますか(^-^)》》
状況がつかめなかった。まず子供だけの世界というのがずっと頭を離れなかった。一体こいつが何を言ってるのか。俺は何に巻き込まれているのか?
《《チュートリアを表示しますか?(^-^)
はい/いいえ 》》
何がなんだか分からなかったが。考えても仕方がないとりあえずチュートリアルというものを見てみよう。
「は、はい」
すると、様々な項目にわかれた文が目線いっぱいに広がった。
《ストーリー》
《初期能力値》
《能力》
《レベル》
《ランク》
《魔法》
《ステータス/ステータスポイント》
《フレンド》
《アイテム/アーティファクト》
《勢力》
《亜人種》
《亜人支配区域》
などなど様々な項目が出てきた。この《《非現実》》が俺を動かした。
「ス、ストーリー」
《《ストーリーを開示します(^-^)》》
《2026年、地球から大人が居なくなった。子供達は各々力を獲得し亜人との戦争に挑むのだろうか?そして魔世王を彼らは倒せるのだろうか?》
「な、なんだよこれ。」
とりあえず俺が変なのに巻き込まれていることは確信できた。そしてタチが悪いようにこれは夢では無いことも理解した。
「そ、それじゃあ……す、ステータス」
《ステータスを表示します(^-^)》
level 1
《力 0》
《体力 0+20》
《防御力 0》
《素早さ 0》
《魔力量 0+50》
《物理防御力 0》
《魔法防御力 0》
《総合力 0+100》
ステータスポイント数 0」
本当にゲームみたいだな……。ステータスポイントをこの分類に分けてそれぞれ割り振れるってことだろうか?まぁ十中八九そうだと思うが……
「じゃあ……初期能力値」
《初期能力値を表示します!(^-^)》
《スキル:天之御中主神
スキルレベル0
説明
惑星地球・国家日本国の神話における創造神のことであり、神話時代の系譜の中で最初に現れる神格。スキルレベルが上昇していく事に様々なものを独自または、物体を元に新しく創造及び改変することができる。だがそれはスキル持ち主による魔力総数とスキルレベルで決まる。
スキル特性
初期体力量ステータス20を獲得!
初期魔力量ステータス50を獲得!
初期総合力ステータス100を獲得!
》
これは……強いのか?比較者がいないと分からないが……
―――とりあえず外に
「―――きゃぁぁぁぁぁぁぁあ」
「―――ッ!」
悲鳴?!この声は……梨花だ!
部屋の外に目をやると奥の方では黒煙がそこらじゅうで空高く登っており、一部では火事が起きている。だがそんなことはどうでもよかった。
梨花……!
階段を勢いよく降り、玄関を開ける。
そこに《《居た》》のは化け物だった。
「―――梨花ッ!」
梨花の名前を呼ぶとその化け物が、こちらを向いた。
皮膚は赤く、額には角が2本程生えている。身長は2M程で素人でもわかるほどの筋肉量を誇っている。
その姿はまるで鬼。
だが俺は我を忘れてそいつに向かっていった
《チュートリアルを表示しますか(^-^)》
うるさいッ!
無意識にそう叫ぶ。だがこいつは、チュートリアを表示した。
《スキルを使用するには、スキルを使う意志を示す必要があります(^^)。試してみましょう!》
《目の前にある枝にスキルを使用しましょう(^-^)》
俺は面格子に目をつけた。スキルというものがまだよく理解できていなかったが、このスマイルが言ってる木の枝なんかよりよっぽどいいものだろう。
「スキル使用ッ!」
無意識にそう叫ぶ。すると面格子が行きよいよく抜け、先端が尖り赤いオーラのようなもので包まれているのがわかった。
「発射ッ!」
そう叫ぶと勢いよく鬼に向かって面格子が向かっていくのがわかった。
だがそいつはそれを簡単に掴んだ。
そいつの顔は口端が目元まで行くかのような笑顔でこっちを見ると同時に梨花の脚を掴んだ。
「―――梨花ッ!」
「助けて―――みっ―――」
―――グチャ
異音が響く。何かが潰れたかのような音。梨花の足が思いっきり握られ、潰されていた。
「やめろぉぉぉぉォォォォォォォォ!!!!」
俺は叫んでいた!だがそいつは……
―――ブチッ
梨花の脚を、軽々と引っこ抜いたのだ。それも器用に。できるだけ苦しめるためだろうか?鬼は笑っている。俺はそれを見て底から力が湧き上がるのを感じた。
《全魔力の使用を確認。》
鬼が掴んでた面格子にとんでもない力が込められ鬼の身体が高く上昇する。
「ヴォォォォォォォォォォッッ!!!」
同時に鬼の表情が困惑に変わるのを確認したが、そんなのどうでもよかった。俺は鬼が離した梨花の所に一目散に向かった。
そして俺は鬼を殺すつもりでスキルを使用した。
付近の一軒家を丸ごと槍状に変え、とんでもないスピードで鬼に向かって直進させた。
「―――梨花ッ!」
「ヒュー……ヒュー……」
梨花は息をしているが顔色がものすごく悪い。脚から……見たこともない量の血が出ている。
「りんかぁ……りんかぁあ!!」
気づいたら大粒の涙が出ていた。梨花の綺麗な顔にかかってしまっている。
「泣くんじゃないよ……男なんだから……」
「梨花!話すな!今から病院まで担ぎに……」
「冷静に……なりなよ。私より貧弱なお前が私なんか担げるわけないでしょ?それに……大人が世界から消えたんだから……私はもう……」
「―――大人がいないなんて限らないだろ!」
「みっちゃん。冷静になりなさい……。あの黒煙。飛行機が墜落したのよ?それも複数が……。近くの道路なんて……人がいない車が……」
「喋るな……!―――頼む……」
涙が止まらない。
「命……私はあなたのことが好きでした……。私を助けてくれた時より前から……」
「梨花……」
「絶対生きて……こんな世界になっちゃったけど……あなたは幸せになっ……て」
「梨花!俺もずっとすぎだった!頼む―――頼むから……」
「り……ん……か?」
梨花は既に死んでいた。梨花は最後の最後まで俺のことを考えてくれていた。なのに俺は……最後の言葉まで聞かせてあげられなかった。
《種族・人間・個体名《真理塚梨花》が能力神産巣日神を使用。使用対象《篠原命》
永愛の加護
永救の加護 が追加されました。
「俺は……最後まで……りんかに守られてるな……」
鬼が怒りの表情でこっちを見ていた。
俺は初めて生き物に明確な《殺意》が湧いたのを感じた。
―――
―――
―――
亜人種《鬼・幼少期》レベル2撃破(^-^)
《《初めての討伐おめでとうございます(^-^)》》
《《経験値が14手に入りました!》》
《level-up!1>3》
2026年4月日本は崩壊した。




