第六十四話 スタートアップ
新たなプレイヤーが、巨額の資金を武器に仮想世界へと降り立ちます。
一方で、現実世界では小さな「すれ違い」が静かに重なり始めていました。
運営の監視の目が光る中、物語は「個人」から「勢力」の争いへと、新たなフェーズへと向かいます。
とある部屋。
リビングは広々としており、寝室とは別の2LDK。
都内ではなかなか良いところに住んでいる。
「ふう。やっとできるぜ、ALO。ゲームなんて、いつぶりだろうな。まあ、ダチんところでちょくちょくやるが……ふはっ!うちはゲーム買う余裕なんて、なかったな。
ククク……俺も、やっと、こうして欲しいものが買えるようになったってわけだ。
長かったなあ……。いや、まだまだこれからだ。
とりあえず、リナに会いにいくか。」
ゲームの起動音と共に、豪華なソファに深く身を沈め、VRデバイスを装着する。
(さあ、ゲーム開始だ。)
ゲーム内で説明を受ける。
アバター設定。
「なるほどな、ここをいじれば……よし、どっから見ても俺とはわからねえだろうな。ゲーム内でファンがいたら動きにくいからなあ。
あとは……ほう……スキル設定は、引き継ぎ以外は課金なのか。
フッ……こんなの、微々たるもんだ、必要なスキルは取っとくか。」
こうして、タクはALO内へ入ってくるのだった。
◆
「ん?あらやだ、あの子、携帯忘れてるよ。
しかも、画面がついてるじゃないか。……よし、とりあえず画面は閉じた。充電切れると携帯の意味がないからねえ。
やれやれ、学校に持って行ってやるかな。」
◆
「あー!わたし、今日携帯忘れてきたみたい!
ま、いっか!どうせしばらくALOも休むし。さ、授業がんばるぞー。」
先生が入ってくる。
あとで職員室にくるように、とのこと。
授業が終わり、職員室にいくと、小さなポーチが手渡される。
「おばあさまからだ。わざわざ届けにきてくれたぞ。なんて若いんだ。」
「ふふーん、うちのおばあちゃん、綺麗でしょう〜」
自慢げにリサはポーチを受け取る。中身を見ると携帯が入っていた。
もちろん、画面は一度閉じているので、外からの連絡はわからない。
リサはアイコン表示も付けないのだ。
午後の授業も終えて、その日も塾。
帰宅後も勉強の時間に追われていた。
平日は勉強に専念して、週末のみ少しだけバイトする。修学旅行までに、勉強は頑張ると決めたのだった。
タクのマネージャーからは連絡はない。
それもそのはず。
マネージャーはしばらく父親の介護で仕事を離れるからだ。
◆
「よっし。装備も課金して整えた。これでそこらの雑魚モンスターや、雑魚プレイヤーには負けないだろう。
………ゲートか。さすがは世界規模、ゲート数は半端ねえな。
第1エリア……なんか匂うぜ。」
◆
--運営サイド。
「どう?プレイヤーの進捗は?」
「順調ですね、これといって進みすぎているプレイヤーもおらず、皆じっくり進めている様子ですよ。
特に、前作プレイヤーは、あえてランクの低いエリアを選択して、少しずつゲームの本質を掴んできている。
一方で、ランクの高いエリアにも、面白いプレイヤーがいますね!
ステータスはでたらめなんですが、隠しエリアとか、隠しスキルとか、とにかくイレギュラーです!」
「ふふ、思ったとおりね。
前作からアップデートする際に、最新のAIも導入して、世界中からフィードバックを受けた。
そして、このイレギュラーこそが、この世界観を面白くさせる。」
「ええ、そうですとも!
しかし、ここからが枝分かれすると、データも予測してますね!」
「そうね。ゲームを理解してきている者。そして、これから幅を利かせてくる者が出てくるわね。
これまで"個人"で楽しめていたプレイヤーも、本格的に楽しむとなると、"勢力"という集団が関与してくる。
さあ、どんな世界になるのか、楽しみね。」
「クランやギルドが増えてくると言うことですね?」
「その通り。現実世界でも、さまざまな組織があるように、この世界では、どんな組織が生まれるのか。
あと一年もすれば、台頭してくる組織も出てくるでしょうね。
現に、その下積みをやってるプレイヤーも、ちらほら現れ始めているわ。」
「本当ですね!
彼らが裏でどうなっていくのか、そして、このイレギュラーたちがどう立ち回っていくか。
楽しみですね!」
運営は、アップデートからモニタリングを欠かさなかった。
そして、進行を見ながら、新しい仕組みや、やり込み要素も、今後続々と開発していくこととなる。
第六十四話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついにタクが参戦!課金パワー全開の彼が、この世界でどう立ち回るのか……。
そして運営が注目する「イレギュラー」の正体とは。
いよいよギルドやクランといった「勢力」の影も見え始め、ますます目が離せない展開になってきました!
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