第六十三話 かけちがい
それぞれの日常に戻り、連休明けの慌ただしい時間が流れます。
完璧なモデルを演じながらも、心の奥底でリナへの執着を燃やすタク。
一方、ゲーム内では花が意外な「案内役」と共に、新たなスキル獲得へと奔走していました。
すれ違う時間と、静かに鳴り響く通知の音。
平穏な夜の裏側で、何かが動き出そうとしています。
「ああ、大丈夫。あんたはゆっくり休んで。
スケジュールはこの前送ってくれたものを見ながら、一人でも大丈夫だ。
親父さんのそばにいてあげな。
ああ…うん…了解。」
◆
「ということなんです。
しばらくマネージャーはご家族の事情で有休です。
スケジュールは、しっかり送ってもらえてますので、ご安心ください。」
「そうか……なかなか大変そうだけど、何かあれば、このスタジオも頼っていいから。
とはいえ、この前ほとんど仕事終わったから、今日、補足分終わったら、夏前まではフリーか。」
「そうなりますね。まあ、ゆっくりゲームでもやりますよ。」
「あなたが宣伝したALO?最近流行り出してきてるみたいね、さすが!
リナちゃんも、まだあっちのバイトもやってるのかな?
もし会うことがあったら、たまには息抜きにスタジオに顔出してって伝えといてくれる?」
「ええ、お伝えしておきます。」
「で?いつ告るの?リナちゃんに!」
「ちょっ、バカなこと言わないでくださいよー。」
タクは少し顔を赤くする。
「だってー、あなた、わかりやすいんだもの。」
「ち、違います。あいつとは、歳が近かったので……話しかけてただけですから。」
残っていた仕事もきっちり終えて、明日からしばらくフリーとなる。
(ふう。この前終わったと思ったら……これでほんとにフリーだ。
夏前の撮影まで、まだしばらくある。
ネットじゃあ、かなり作り込んであるって情報か。まあ、じっくりやるかな。)
スタジオを出ると、スタッフの子が待ち伏せている。
「タクさん!今からランチ、どうですか?もちろん、二人きりじゃなくて、みんなで!」
(ぐ……これから帰ってゲームしようと思ったのに……くそう、リナに会えねえじゃねえか!)
「もちろん、僕もちょうどフリーだったから、ご一緒させてもらえると嬉しいよ。」
「きゃー!ありがとうございます!ちゃんと周囲にバレないように、みんな変装しますね!」
「い、いや、別に僕はバレても気にしませんよ?」
「わたしたちが、ファンに袋叩きにされますから!」
「な、なら、スタッフ証を首からかけておいたら?」
「うーん、でも、それじゃあ特別感がなくなるんだよね〜、あ!もうみんな集まってるみたいです!」
(もう、好きにしてくれ……早く帰ってゲームしてえ!)
◆
平日の夜、花は一人でスキル獲得へ励んでいた。
「薬草(回復薬)を調合するために、アロエ草……10個か。そういえば、モンスターからドロップするものは、腐るほどあるが、こういった薬草とかは、どうやってとるんだ?
適当に引きちぎってもって行きゃいいんだっけ?
ああ、面倒だ。一度コモンに聞こう。」
キキャー‼︎
キッ!
花はゴブリンを睨む。すると、ゴブリンはガクガク震えて身動きがとれずに怯えている。
(……………こいつらって、俺らの言葉、わかるんか?………よし。)
「おい。」
ゴブリンに話しかける。かなり怯えているようだが、花を見ている。
「こんな感じの草、どこに生えてるか、知ってるか?」
花はウィンドウを出して、ゴブリンに見せる。
すると、ゴブリンは首を縦に何度も振った。
花は睨みを解除する。
すると、ゴブリンは、奥を指さして、ついてくるように案内する。
「ほう、わかるのか……ああ、一応言っとくが、嘘だったらタダじゃ済まねえからな?」
ゴブリンはビクっとした後、首を横に振りまくる。
「お!!これだ!こんなに大量に!ありがとうな!助かったぜー!
お詫びに、これやるよ!」
花は、はじまりの都で買いすぎた、守りの指輪をあげた。
ゴブリンは、伝説のアイテムをもらったかのように、雄叫びをあげて喜んでいた。
「まあ、ザコだと思うが、せいぜい生き延びろよ!じゃあな!」
花はその場を離れて、カレッジに戻ることにした。
(さーて、鍛冶スキル、獲得するかな!)
ピコン
「ん?今なんか音鳴ったか?気のせいか。」
花は全速力で走っており、その音に気が付かなかった。果たして、何の音なのか。
第六十三話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
現実でのタクは、なかなかの人気者のようですね。
そんな彼が執着するリサ、そして無自覚にゴブリンを懐柔してしまう花……。
ラストで鳴った謎の「ピコン」という音。一体、花に何が起きたのでしょうか?
「タク、早くゲームでボコられてほしい!」と思った方は、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします!
皆さまの反応が、物語を加速させる一番の力になります。
現在コンテストにも参加中です。今後とも よろしくお願いいたします!




