第五十四話 スキル選び
かつて、救えなかった命があった。
心に刻まれた「無力感」を抱え、ハナは今、大切な仲間を守るための力を求めます。
それぞれの決意を胸に、三人が導き出したスキルの答えとは――。
ーー14年前。
「花峰先生。本当にありがとうございました。
先生が島まで来て歩かせてくれていたおかげで、主人は、最後まで家で過ごすことができました。」
仏壇の前で、妻が泣きながら感謝を述べている。
自宅内で転倒し、そのまま搬送。その後容態が良くならず、帰らぬ人となった。
憧れていた訪問。
先輩から引き継いだ内容を、真面目にこなしていた。
いや………ただ反復していただけだった。
未熟すぎた。
帰りのフェリーの中で、利用者さんの妻の言葉が頭から離れなかった。
(感謝なんかされちゃいけない。
だって……自分は、人の人生に関わるだけの、知識と、スキルを持ち合わせていたのか?
いや……持ってない……もっと知識があったら……スキルがあれば……あの人はまだ生きられたかもしれない。)
帰りの間中、涙が止まらなかった。
そんな過去を、ふと思い出していた。
◆
資料室。
「お!サンキューなリサ!」
「ありがとうございます!」
「おひとつ、500万円で〜す!」
「了解〜!」
「え?!払うの花?!」
「冗談に決まってんだろーが!真に受けんな!ネタだネタ!」
(なんだ、ネタか!こういうのもまだよくわからないなぁ。)
「じ、じゃあ、さっそくだけど、それぞれどんなスキルを獲得していくか、話していこう。」
それぞれ目の前のパネルを操作し、検索しながら答える方法をとる。
「俺はすでに決めてある。"鍛冶スキルC"だ!」
「なるほど、さっき言ってたスキルのことだね?」
「そうだ。これがあれば、離脱アイテムが作れるらしい。まずは、遭遇したときにリサにそのアイテムを持たせておくことが必須だと思ってな。任意のセーブポイントへ飛べるアイテムなんだ。」
「うん。それは必要だね。万が一僕らが近くにいないとき、それを使って逃げるのが一番だ。」
「ランスは何かあるか?」
「僕は、自分自身がもっと強くなりたいと思ってるんだ。けど…………うん。やっぱり見当たらない。花の"スキルクリエイション"は習得できるものじゃないみたいだね。」
「ふーん………なら………お!……こんなのはどうだ?」
「……"スキルコンバイン"……?
スキル同士を組み合わせるスキル。
なるほど!これなら、既存の技から自分の技に組み合わせることができる!」
「だな。完全なオリジナルにしなくても、組み合わせるパターンなんざ、山のようにあるだろうからな。
例えばよう……俺の回転斬りも、その場で"回転二連撃"みたいな技と、"ハイジャンプ"の組み合わせかもしれないぞ?」
「なるほど、そうなれば……大剣でできる基礎の攻防スキルと、動きに関するスキルを優先して習得しつつ、スキルコンバインの習得を進めればいいのか。
ありがとう花!これで強くなれそうだ!」
(もう十分強えけどな。リサを守るためには越したことはない。)
「リサは何か見つかったか?」
「え、ふえ?あー、うーん……難しくて、なかなか〜。」
「まあ、リサは勉強もあるし、こっちは俺らで考えるから無理すんな。ランス、何か良いスキルはあるか?」
「うん。昨日考えてたんだ。花が鍛冶スキルって言うとは想定外だったけど、リサさんはこれかなっていうのは考えてきた。」
「ほ、本当??ありがとうランス!」
ランスは顔を赤らめた。
「えっと……さっきも話したけど、僕たちがもし近くにいないときを想定する。もしくは、近くにいても活用できるものがいいなと考えてたんだ。
その結果、リサさんには"感知系スキル"を持っててもらおうと思ったんだ。」
「なるほどな。近くにどんなやつがいるかわかれば、相手に悟られず、いち早く動けるってことか。」
「その通り。でも、今の段階では、上位のスキルを獲得することは難しいと思うんだ。
ほら、ここにも書いてあるように、冒険者ランクでスキル習得期間が異なってる。
取れないことはないけど、かなりの時間を要してしまうんだ。
それじゃあ、多分間に合わない。
だから……こんなのはどうだろう?」
ランスは、リサの方にパネルを向ける。
「"スキルサーチC"……?
半径が1.5km以内で、なんらかのスキルを発動している場所がわかる。」
「そう。これなら、例え相手が隠密スキルを持っていても、発動中は見破ることができる。
ただし……これにはリスクもあるんだ。」
「……サーチは10秒経つと一旦消える。その後サーチ出来るまでに1分のインターバルがある……って書いてあるね。」
「その通り……Cランクのスキルには、便利なものでも、なんらかの欠点がある。
そのスキルだと、半径1.5km地点がその瞬間わかっても、1分って結構長いから、その間に敵がどんな動きで迫っているかがわからないんだ。しかも。誰かもわからないから、複数いたら考えなくちゃならない。
ということは、瞬時に頭を回転させて、自分の行動を決めなければならなくなる。」
「まあ、お守り見てえなもんだな。使い方の工夫が必要ってわけだな。」
「ふえ〜、わたしに使いこなせるかなあ。」
「ひとまず、役に立ちそうで、すぐに習得できそうなのはこれくらいかなあ。
僕も、今日始めてこの一覧表を見たから……また、何かいいのがあったら、その都度報告するね。」
「…………」
「おい、リサ!聞いてんのか?」
「え??あ、うん!ありがとうランス!」
「リサさん、大丈夫??どこか、悪いの?」
(バカ!今さっき、聞くんじゃねえっつったのに!……まあ、しゃーねえか、こりゃあからさまに何かある。
この場で吐き出せる内容かどうかだけでも反応見りゃわかるか。)
「ふえ?え、あ、その……だ、大丈夫、体調が悪いとかじゃないから……ごめんね、心配かけて!」
(やはりな。否定しねえ、なのに、ちゃんと理由を言わねえ。こりゃ何かあったな。よし、ランスに合図を送ってこれ以上聞かんように……)
「そっか……体調は悪くないんだね、なら一安心だ。
もしかすると、"体調が悪い日なのか"とか、"ウンコ我慢してるのか"とか、"パンツ履いてないのか"とか、"俺は見たことある"とか、色々花が言うから心配しちゃった。」
(わ!バカ!なんで全部言うんだ!冗談だったのに!!……り、リサ……ど、どんな反応して……)
花はそろりとリサを見る。
すると、顔を真っ赤にして花の方を見ていた。
みるみるタコのように真っ赤になっていく。
(や、やべえ!!)
「は、な、さーーーん?!ランスに、なに変なこと、吹き込んでるのかな〜〜!?」
(ひーーー!逃げるが勝ちだ!)
花は資料室から飛び出した。
「まーーーてぇーーーー!花ーーーー!!」
ガタ!!
椅子から立ち上がり、くるりと回ってすぐに花を追いかける。
その時、スカートがひらりとなびく。
(あ。ちゃんと履いてる……って!ダメだダメだ!僕は、花みたいになるもんかーー!)
ランスは資料室で一人、顔を真っ赤にして頭をくしゃくしゃしながら項垂れているのだった。
第五十四話 完
最後までお読みいただきありがとうございます!
ハナの過去、そしてリサを守るための具体的な戦略が見えてきました。
……それにしても、ランスくんの正直すぎる暴露(笑)。リサさんの怒りの追いかけっこで、少しでも彼女の心の霧が晴れることを願うばかりです。
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