第四十五話 あの丘を超えて
過酷な坂道を登り続けるような、青年の日々。
国家試験合格という栄光の裏で突きつけられた、あまりに理不尽な「分かれ道」。
現実世界でギリギリの生活を送りながら、それでも「甘える」という選択肢を選んで生き抜いた花。
ゲーム内でもまた、彼は長い丘を登り続けていました。
その頂上で見つけた、潮風の吹く場所と、その先に広がる未知の営み。
花の旅は、新たな集落へと導かれていきます。
「あんた、国家試験受かったんだから、来月ここから出ていきなよ?」
「はあ?貯金もろくに無いのに、部屋借りたり物が揃えられるわけ無いじゃん?」
「あんた、前に言ってたじゃない?こんな家そのうち出て行ってやるって?だから、出て行ってくれる?
就職したら"みんな"そうしてるんだから。」
(またこの人は、人の話を聞きゃしねえな。)
「みんなって誰だよ。俺の周りは全員地元に残って、実家から仕事行ってるけど?ざっと10人以上。そっちは何人くらいの人が一人暮らししてんの?」
「みんなはみんなよ!とにかく!来月出て行って!必要な家具はおじさんのところで揃えるから!」
(金、無えんじゃなかったのかよ。けど、これでもうふっきれたわい。こいつ、もうあかんわ。こんな理不尽なやつ、まともに生きててええんか?)
案の定、俺は無一文で家を追い出され、就職しても、5パック160円のインスタントラーメンを、昼も夜も食べていた。
生き延びることに必死だった。
高校と専門の奨学金、家賃、光熱費、携帯、それらを払うとほとんど給料は余らなかった。
しかし、俺は学習していた。
留年したときのことを思い出し、ばあちゃんに甘えることにした。
と言っても、たまたまばあちゃんが実家を訪ねたら俺がいつのまにか追い出されていたことを知り、急いで連絡してきたのだ。
ばあちゃんは何度も俺に謝ってきた。
"あんな子に育てた、わたしらが悪い。どうしてあんなふうになったのか"と、いつも嘆いていた。
俺は状況を説明すると、ばあちゃんは夕食を食べに来いと言ってくれた。
そのおかげで栄養失調にならずに済んだ。
体重も減り、生活も体調も、すべてがギリギリだった。
自分の経験を活かしたからこそ、しっかり甘えることができて、乗り越えることができた。
◆
「よし、左のおぞましい空気感も気になるが、今はこっちの丘だな!登った先に何があるか見ておきてえ!」
花は走り出す。
長い坂道を駆け上がりながら、昔のことを思い出していた。
(ああ、長えよこの丘。登りばっかり……まるで俺の人生だぜ。
無一文で立て直して、県外に修行に行って、やっと一人前になれたかと思ったが……今度は嫁選びにしくじるとはな。
登り切ってねえんだな、まだ俺は……)
「お!!そろそろてっぺんか??
なんか、建物が見えるぞ!」
頂上には、小さな風車があった。
どうやら、展望台らしい。
開かれた入口をくぐると、すぐに階段がある。
そこを登ると、屋上へ出た。
海が一望できる、眺めの良い場所を見つけた。
教会とはまた別の方角。
潮風が静かに通り過ぎる。
「んあーー、ここも気持ち良いなあ。二人にも見せてやりてえ!
お!そうだ、ここをセーブポイントにしよう!」
花は手際よくセーブポイントを設置する。もちろん複数のアイテムも備えて。
「まあけど、直接会わねえとセーブの共有はできねえらしいからな。また明日以降だな。」
花は気分良く辺りを見回す。
先ほど登ってきた丘の反対側を眺めると、緩やかな下り坂が広がっていた。
「ああ、今度は下るのか。しかしまあ、広い丘だなあ。……ん?あれは?村か?」
丘を下った先を見ると、何やら集落が見える。
「あんなところに村があったのか……なんか、煙も出てるぞ……よし!行ってみるか!」
花は階段を駆け下りた。風を切りながら丘を下っていくのだった。
第四十五話 完
最後まで読んでいただきありがとうございました。
花の知られざる「極貧時代」が描かれた四十五話。彼の口癖や、若者を見守る優しい眼差しが、こうした過酷な経験から来ていると思うと、より一層「ハナ」というキャラクターが好きになります。
そして丘の先に見つけた謎の集落。カレッジから離れたこの場所に、一体どんな出会いが待っているのでしょうか。
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今後とも hanaXIII をよろしくお願いいたします。




