第二百三十四話 孤児院
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オアシスピアの冒険者ギルドで登録を済ませ、ログアウトするためにアルが育った孤児院へと向かった花たち。アルの仕送りやタイガーとの「ダチ」としての絆が深まる中、孤児院の建物に入った瞬間、その規格外の広さに度肝を抜かれることになり……!?
孤児院の全貌と、束の間のリアル(現実世界)の描写、そしてアルの衝撃的な出生の秘密が明かされる注目の第二百三十四話、ぜひお楽しみください!
「す、すげえ……広い……こ、ここが孤児院か?」
「ええそうです。孤児院とはいえ、時として教会も兼ねております。
行き場を失ったものが、時折流れてきたり、罪を犯したものが懺悔しております。」
さらに奥に進むと、居住エリアに入った。
「あ!アルトリウスだ!おかえりー!」
アルと同じくらいの子供たちが駆け寄ってきた。
「ただいまみんな。」
「アルトリウス、君はここでみんなと遊んでいなさい。わたしが彼らを送っていこう。」
「一旦戻るが、またすぐに来るからな!」
「アルトリウス!!」
そこに、シスターが走ってくる。
ガシ!
「アルトリウス!無事で良かった。」
超絶美女のシスターがアルを抱きしめた。
そこに、タイガーが駆け寄る。
「は、はじめまして!タイガーと申します!」
「あなたが、アルトリウスをここまで連れてきてくれたのですか?」
「そうです!」
花はその様子を横目に見ていた。
(まあ、みんなできたから間違いじゃねえわな。ぷ!シスターに一目惚れでもしたか?良いことだ、若えうちに楽しんどくんだぞ。)
花とロットはタイタスについて行き、無事にログアウトした。
◆
シャー!
カーテンが開く音がした。
「菜月さんー、昼食ですよー。」
ガバ!
「うん!今から食べます!ありがとう、葵衣さん!」
「あらまあ、グッドタイミングだったね!でも、最近本当に楽しそうね。」
「うん!花ってプレイヤーが、本当に面白いの!一緒にいると、時間がどんどん進んでるみたいで、なんかこう……わたしも前に進んでるっていうか、上手く言えないけど、楽しいの!」
「わたしも、その花って人に会ってみたいなあ。なんてね。」
「葵衣さんも、ゲームやろうよ!そしたら、みんなで一緒に楽しめるよ!」
「うん!考えとくね!じゃあ、失礼しましたー。」
シャー……。カーテンを閉めて部屋を出た。
(花……か。花峰さん……なわけないか。そんなピンポイントで知り合いに出くわすはずなんてないよね。ALOは全世界共通のゲームだもん。)
「さて、仕事仕事!終わったら、わたしもログインするぞー!」
◆
花は、冷凍食品を食べながら、送られてきた画像を見た。
「しっかりエンジョイしてるな。娘の笑顔だけが癒しだよ。ちょうどアルと同じくらいだな。世界は違えど、この世界には戦争がある。娘くらいの子でも、アルのような子はたくさんいるんだよな。」
花は娘とアルを重ねて複雑な気持ちになっていた。
「いけね、これはゲームだった。すげえな、こんなに感情入るもんなんだな。」
◆
「お!花も早かったね!」
「ロット?お前、早すぎじゃねえか?母ちゃんに後片付けまでさせたんか?」
「え?あ、う、うんそうなんだー!急いでたから、任せちゃったー!」
「ぷ、まあそんな時もあるわな。今のうちに甘えとけよ。」
「う、うん!」
(そっか、普通はご飯自分で作ったり、後片付けがあるもんね……ちょっと不自然だったかなあ。)
二人は孤児院内へ戻る。
すると、ちょうどタイガーたちも食事をしていた。
「うまい!うまいです!シスター!」
タイガーはガツガツ食べていた。
その様子を子供たちが引き気味に見ている。
(何やってんだあいつは。)
「あ、あの……あいつ、あんなに食べて大丈夫なんですか?」
「あ、花さんとロットさん、戻られたんですね。ええ、実はタイガーさんが、食材を街で調達してくれたのです。本当にありがとうございます。」
「あいつ、お金持ってたんですね。」
「ほとんど使い切ってしまったみたいで……なんとお礼をして良いか。」
「いえ、気にしないでください、あいつが自分で望んでしたことですから。子供達も、遠慮なく食べてください。」
それを聞いて、子供たちも美味しそうに食事をしていた。
(俺、ガキの頃何食べてたっけ……正直覚えてねえんだよな……母親とは不仲だったが、たとえインスタントラーメンだろうと、カップ麺だろうと、無けりゃ飢え死にだからな。
飯食べれただけでもありがたかったんだな。
たまに、チーズやらポテトやらの混ざった、美味しい料理も出てきたっけ……社会人になって、まだ貯金ねえのに家追い出されたときは、インスタントラーメンを昼と夜に食べてたな……懐かしい……高校と専門学校の奨学金返済……家賃と光熱費……給料もほとんど残らねえ中、食べることは最低限だったな……)
花は子供たちを見てしんみりしていた。
(は、花?なんだか、悲しそう……いや、苦しそう?なんとも言えない顔してる。もしかして、花は現実で辛い思いをしてるのかな……)
「花?どうしたの?大丈夫?」
「ん?あ、ああすまん、ぼーっとしてた。あいつら、美味しそうに食べるよな!」
(なんか、はぐらかした気がする……花は、過去に辛い思いしたのかなあ……)
「わたしさあ……」
「ん?」
ロットは自分のことを話そうとしたが、やめた。ゲームの中で現実のことを言うと、気を使わせると思ったからだ。
「俺、昔は裕福じゃなくてさあ……我慢の連続だったんだよ……でもさあ……我慢って言っても、そもそも誰かに施してもらえるだけで、十分恵まれてるって、その時は思わねえんだよな。自分が与える側にならなきゃ、わからねえよ。」
ロットは、自分より先に花の方から自身のことを話したことに驚いていた。
(やっぱりそうだったのか、花は、裕福じゃなかったのか……)
「ま、今は食いっぱぐれることはねえけどな。だからこそ、振り返ってわかるってもんさ。カッカッカッ!今ある当たり前、過去の世話になったこと……しんどい時は気付けねえと思うが、若えうちから感謝を心がけるといい……きっと周りにも同じように、優しい人が集まってくる……って、じいちゃんが言ってたっけ。」
(笑ってるけど、目が笑ってない……相当しんどかったんだね……)
ロットは自身が入院しているため、人の辛い表情はすぐにわかった。なぜなら、自分も同じ顔をよくするからだ。
「花……わたしね……実は……」
「ロット……無理すんなよ?俺はただの独り言だからな。お前に素性を話して欲しいわけじゃない。
ただ、俺の経験が、若い奴らに少しでもプラスになったらいいと思ってぼやいてるだけだからな。」
「あ、うん……ありがとう。」
(わたしが無理しそうなこともお見通しか。)
食事はまだ時間がかかりそうだったため、ちょうど食事を終えたタイタスと話をすることにした。
無人の大聖堂へ花とロットは向かう。
「ちょうどお二人とお話しをしようと思っておりました。アルトリウスのことについてお話ししたいことがあるのです。」
「アルは、親がいないんだろ?」
タイタスは静かに頷いた。
「その通りです。アルトリウスは……ダンジョンの生まれなんです。」
「な、なに!?ダンジョンの、生まれ!?」
第二百三十四話 完
第二百三十四話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
今回はログアウト中のリアル(現実世界)の描写が非常に印象的な回となりました。
ロット(菜月)と看護師の葵衣さんの会話から伺える「花」という存在の大きさや、花さんが娘の写真を眺めながら現実とゲーム、そしてアルと娘を重ね合わせて物思いに耽る姿には、胸が締め付けられるような深みがありましたね。
さらに再ログイン後、全財産を叩いて子供たちに食事を振る舞うタイガーの不器用な優しさと、過去の苦労や下積み時代を振り返りながらロットを優しく諭す花さんの大人の包容力。お互いの「辛い経験」を知っているからこそ通じ合う二人の静かな絆が非常に心へ染み渡る描写でした。
そしてラスト、施設長タイタスの口から明かされた衝撃の事実――「アルトリウスはダンジョンの生まれ」という怒涛の展開!
「現実世界の花さんの過去が切なすぎる……」「タイガー、残金叩いて飯奢るとかイケメンかよ!」「花さんとロットちゃんの屋根裏での会話、すごく沁みた」「葵衣さんのフラグ(?)が気になる!」「アルがダンジョン生まれってどういうこと!?次回が待ちきれない!」など、たくさんの熱い感想をお待ちしております!
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「ダンジョン生まれ」というアルの壮絶な生の秘密とは一体――!?
気になる第二百三十五話も、どうぞお楽しみに!




