第百十七話 互いに
飛行機を見上げ、慣れ親しんだキーボードを叩く指先に、少しだけ前とは違う感覚が残っています。
沖縄で交わした言葉も、誰にも言えない秘密も、すべてを抱えて二人はまた、それぞれの場所から同じ世界へとログインする。
本社組を連れて、沖縄支部へ挨拶へ向かう。
「花峰さん、これ、後ろにありましたが、なんでしょう?」
(ん? アユの忘れものか? もう返す時間もない、とりあえず俺が預かっておこう)
「ああ、僕のです」
高口の送迎により、空港へ。
搭乗を待つ間、メッセージが届いた。
『気がついたかしら? あれは、わたしからの贈り物で〜す』
『そうだったのか、忘れてたからどうしようかと思ったよ。ありがとう』
『ところで、あれはわたしがもらっても良いの?』
『バレたか! 笑』
『バレバレよ! なんか膨らんでいるんだもの!』
『俺からの贈り物だ。世話になった』
『ちょっと! お別れみたいなこと言わないでくれる?』
『今から飛行機だ。何が起こるかわからん』
『心配しなくても、そんな簡単に飛行機は落ちません!
ありがとう。大切にするわ』
『生きて帰ったら、また向こうでな』
『はいはい(笑)気をつけてね! また向こうで会いましょう』
花は、購入したグラスをアユのバッグに忍ばせていたのだ。
この数日のお礼も込めて。アユには別の意味にもとられたが、花はそんなことに気がつきもしなかった。
◆
「花峰さん、また、何やってるんですか?」
「落ちないように、祈ってる」
当然、なんのアクシデントもなく飛行機は無事に到着した。
花はさっそくレポートを仕上げ、あとは本社メンバーと擦り合わせだけだった。
あの外国人の件の後、リサからはメッセージはなかった。
それが逆に不気味で、花はついに正体がバレたのではと考えていた。
◆
ログインして王都へ向かう。
「ハロ〜、久しぶり!」
「久しぶりだな。今日会ったばかりだけど」
「あのグラス、こんな感じに置きました〜」
アユは写真を見せてくれる。
アプリ内に保存しているものは、ゲーム中でも見ることができる。
「やっぱり良い感じだよな。このグラス、俺ももらったサンキャッチャー、書斎に置いた」
お互いに写真を見せ合う。
「近くには居てやれないが、その……御守りだと思ってくれ」
「わかったわ、見えるところにいつも飾っておきますね。
それにしても、お互い同じこと考えてたなんてね」
「まったくだ」
「あれから、リサちゃんから連絡は?」
「いや、無い。それが不気味なんだよな」
「まあ、そこまで深く考えなくていいんじゃない? 何かあれば言ってくるでしょう」
「だといいが……」
◆
「ただいま〜」
「おかえりリサ、修学旅行はどうだった?」
リサは祖母に旅行の一連を話す。
「それは、ハプニングだらけの旅行だったねえ。
で? その助けてくれた人、結局誰かわからなかったのかい?」
「そうなんだー……多分、ゲームの仲間だと思うんだけど、じゃあ、なんで正体を明かしてくれないんだろう」
「あんたねえ、普通に考えてみな?
ゲームの中じゃ、お互いに服装も、髪色なんかも違うんだろ? 例えば顔がほとんど同じだとしても、向こうもあんただと確信が持てないじゃないか。
声をかけて、いちいち確認しやせんよ。
ただ、偶然にもその場に居合わせた人が、たまたま共通点があった。それだけの可能性もある。
だから、あんまり疑わないであげな。
もし本人だとしたら、何か、正体を明かせない理由があるんだろうさ」
「そっか……そうだよね……わたしだと確信持てないと、わざわざ『俺は花です!』なんて言ってこないよね。しかもこっちは制服着てるし、余計に声かけづらいかぁ」
「そうさ、だから、ゲームの中ではいつも通りにしてりゃいい」
「うん! ありがとう、おばあちゃん!」
(まあ、十中八九、その彼だろうけどねえ。意外とあの子も天然だから、助かるよ。
しかしまあ、良い仲間がいたもんだねえ。
偶然とはいえ、助けてくれるなんてね。
しかも、あの子を前に、なんのアピールもせんとは。
普通は格好つけたくなるもんだけどねえ。いつか、会ってみたいものだねえ)
「さあ! 期末試験のあとは、夏休みだー! 勉強にアルバイトに、頑張るぞー!」
祖母のおかげで、余計な詮索はされずに済んだ花。
しかし、アユと現実で出会った以上、花とリサも、二人が偶然に会うことも、まだ無いとは言い切れない。
タクが一旦退き、これから花たちはどうプレイするのだろうか……。
◆
「部長! ダイニー大陸で、歓楽街の建築が進んでいるみたいです! ほら、このエリアを見てください! まるで街ですね!」
「ほう……もうこんなことをする連中が現れたか。
さて、この大陸、どんな未来になるだろうか……」
第百十七話 完
第百十七話をお読みいただき、ありがとうございます!
沖縄編が終わり、日常に戻った花たちですが、物語はここから新たなフェーズへ向かっていきそうです。リサと花の正体バレ問題、そしてダイニー大陸での新たな動き。これからの展開にますます目が離せません!
【読者の皆様へお願い】
リサの祖母の鋭い洞察と、花の天然な優しさが交錯する素敵な回でしたね。もし「おばあちゃんナイス!」「ダイニー大陸の発展が楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひ下部の**評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)**やブックマークをお願いいたします!皆様の応援が、執筆の何よりの活力です。
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