ミレイの夢みがち
何度もなんども夢をみた。
夢は、ミライだ。
わたしの場合は。
近くのものもあったし、だいぶ先のもある。
寝てるのだから魔力を回復して欲しいのに、魔力での調節がしづらくなるダウン現象のときには、自然と魔力を使用してしまい、回復途中で、また、ダウン現象の手前になる。
悪魔回復士が見にきたときに、ようやく着替えのことを聴けたけれど、アマツキに報せる方法が、そういえばなかった。
いまみてきたのは、アマツキのことだ。
わたしに近しいほどに、ミライもみやすくなるけれど、いいこと悪いことがあるため、通常ならそれを記録したり覚えておいて、途中の分岐を通り過ぎないようにする。
けれど、いまは回復がしきれていなくて、ろくに動けない。
アマツキには、いいと言ったけれど、側にいてもらってもよかったわ。
「ダウン現象なんて、だいぶ前のことだけど、なってみるとひどいわ」
目眩と頭痛がずっとするし、怠さが取れないため、動くのが大変で、寝ていることになる。
それなのに、寝るとミライを視てしまうため、魔力消費を繰り返してしまう。
「ネネがいれば……」
と考えるもやっぱりいなくていいとなる。
前は、ネネにベタベタ甘えてみたりしたけれど、最近では、そんなにしなくなった。
愛情も質とやらが、変化するらしい。
深化なのか退化なのか、よくわからない。
もう一度寝てしまおうか。
いい加減、シャワーくらい浴びれるようになりたい。
ふと、顔に影ができるため、みると黒鉄鳥がすぐ側にいた。
「あ、くろ」
「まだ、うなされる?」
「まぁねぇ……」
黒鉄は、少し疲れているようだ。
年中飛びまわっては、いるようだけど、いまはわたしの仕事が、いちおう休みなためほかの用だろうか。
「はい」
渡されるのは、簡単な着替えだ。
「ありがとう」
「それからシャワー室も小さいけれど、あるから、もう少し動けるようになったらいってきなさい」
「そうね」
「いま、とりあえず着替えて」
「え、いま?」
「洗濯場所、確保したから洗えるわ」
仕方なく、くろがいる前ではあるけど、ノロノロとベットに座り、着替える。
「もしかして、それ探してたの?」
「しばらく動けないでしょ」
この黒鉄鳥は、かなり活発なほうらしい。
前に秘書たちの前で、先回りをされていたら、その契約黒鉄鳥は、働き過ぎだという。
そんなのお願いしてもいないうちから、そうなのだから性格だろう。
わたしがメディの秘書になる前から、そうなのだ。
それだけ、優秀な黒鉄鳥なだけに、鳥のセカイでもかなり苦労してそうだわ。
着替えて、くたくたになりつつまたベットに倒れると、水のボトルを渡される。
いつみても器用な羽根使いだ。
ごくっと飲むと、頭がまだ痛むため、すぐに返して横になる。
黒鉄は、着替えたものをカゴに溜めると、今度は部屋で探しものをしている。
わたしは、それを眺めるだけだ。
なにを探しているのだろう。
「あった」
引っ張りだしてきたのは、わたしのバックだ。
中から悪魔ノートを出すと、なにか書きこみしている。
もうひとつ持っているため、それは新魔導書だろうと思う。
「なにか増やしたの?」
「アマツキとヒイロが、契約鳥がいないらしいの」
「そういえば、そんなことも言ってたわね」
「代理鳥もいまはムリだから、一応わたしが中継してるわ。書いておくわね」
新魔導書からの追加分は、契約鳥の項目らしい。
働き過ぎかと思うけど、いまはこちらが倒れているため、あまり言えない。
「洗濯お願いね」
パタンと閉じると元に戻すため、こちらに渡してもらう。
「じゃ」
もういってしまう。
洗濯カゴを提げているため、次は洗濯らしい。
バックから中身をいくつか確認して、やっぱりやめにした。
いま仕事のことを考えても、余計頭がいたくなる。
しばらく休もう。
バックを下に置くと、また寝転がる。
あまりしないうちに、寝ることができたけれど、今度は夢のセカイにいる。
完全に魔力制御がきいていないようだわ。
アマツキが、黒鉄鳥にいくつか質問している。
「ミライは、過去とどう違うの」
「過去も未来もいまも、ときが違うだけで同じよ」
「同じってどういう意味」
「未来にあることはいまあることで、過去にあることは、いまあること」
「意味わからなすぎ」
ヒイロが、美術館でなにか熱心にみている。
わたしの知らない絵だ。
魅力はスキルのなかでも、魅了とは違うようだ。
魅力満載。
そんな絵らしい。
ウラナイとミライと空間が違うようなものかもしれない。
絵は次第にぼやけていく。
ネネが、クラフト調整している。
なにかの準備だろうか。
銃でもナイフでもない。
クラフトは、わたしにとってとてもキレイに見える。
ネネをカタチにしたような作品たちは、いつもネネに似ている。
わたしの知らない作品は、数多くあるようで、もっとみていたい。
また、視界はぼやけていく。
有限の生命は、無限にあるらしい。
それは、メディに教わったことだ。
悪魔メディだけ、ひたすらわたしの時間のなかで、余地がない。
ふと、音で起きる。
黒鉄が、洗濯カゴを置く音だった。
どれくらいだろう。
「いつ……?」
「一時間。魔力洗濯乾燥機が混んでて、外に干してからきた。いい風だわ」
「それ、乾いてない」
「いまここで、また乾かすの」
中干しのために、ここにきたらしい。
カーテンのある上のほうに、なんとかロープを縛りつけて、干し場所をつくっている。
「下着も替えればよかったわ」
「また着替える?」
「シャワーしてからにするわ」
「でも」
「そうね。もう少し……」
いったいいくつの夢を視ただろう。
ネネがいて横にある小さいテーブルでクラフトしている。
ハンマーでもなく、アクセサリーでもない。
なんだろう。
よくみるとまだ造りかけで、ナイフの先のようだ。
小さい宝石を拡げているため、テーブルが光ってみえる。
これも夢だろう。
「ネネ、それナイフ」
「あ、ええ。起きたの」
起きた。
夢じゃないらしい。
「ナイフ……?」
「よくわかるのね。そうよ」
「魔改ナイフは、あるわよね」
「刀でもいいんだけど、あれは長すぎるから、作成するのに時間かかっちゃうわ」
そう言いつつ、ナイフに細工をしている。
まだ、持ち手はない。
寝ぼけている頭では、よくわからない。
そのままの横の姿勢で、ネネの作業をみている。
「作業してるのね」
「ここが落ち着くの」
部屋は、どうしたのだろう。
「メディは?」
「置いてきたわ」
どうやら部屋だと集中できなくて、こちらの療養室まできたらしい。
「夢視てたわ」
「ここはどちらかしら?」
「ネネがホンモノだから、現実よ」
「それ、どうやって見分けるのよ」
くすくす笑いながら、作業している。
ネネは、ほかは不器用でも、クラフトのスキルはもう悪魔一だろう。
少なくともこれだけ、繊細な作業を何時間も集中しておこない、魔力付加を微調整できるのは、ほかにみたことはない。
「ネネがキレイだから」
「それはありがとう。宝石キレイよね」
「宝石じゃない……」
「ほめられたのね。嬉しい」
いつもと違うな、と想う。
いつもなら、ほめてもなにもないとか、抱きついてこないでとか言うだろう。
「わたしが動けないと、そうなのね」
「なにかしら」
「いつもより、ずいぶんと機嫌いいから」
「あ……機嫌ね……作業してるし」
そっかと納得する。
クラフトに集中しているせいか、機嫌がハイらしい。
そういえば、魔列車でなにか作業したあとは、ずいぶんと機嫌がよかった。
「あまりネネの作業時間で、話すことなかったかもね」
「そうかもね」
テキパキとそれでいて、丁寧にナイフの作業をこなしていて、かっこいいと想う。
「しばらく眺めていたいけど、邪魔しちゃうかしら」
「ここで、作業することにしたんだから構わないわ」
メディは、たぶん仕事だろうから、わたしの休養期間それなりに、過ごせているようだ。
「それで、なんでナイフなの?」
「スズネと話してるうちに、やる気が……」
スズネに、あげるものらしい。
珍しい気もする。
「珍しいわね。スズネとよく話してるの?」
「スズネ最近、寂しがりだからね」
「そうなのよね」
怪我をしたのも、いまダウンしているのも結局は、わたしの管理が甘かったからなのだけど、スズネはなにか自身の責任みたいな話しをしていて、少し前は、ずいぶんと不安定な感じがした。
話しだすと、意外と平気にみえてしまうのは、スズネの損している部分だろう。
「でも、なんでナイフなのよ」
せっかくならかわいいのとか、小さいチャームとかでもいいのではないかしら。
「ナイフ便利なのよ? 護身にも使えるし、料理にも使えるし」
「料理に、そんなに攻撃力はいらないと想う。ネネだけよ」
「そんなことないわよ……たぶん」
どれだけ切り刻む気なのだろう。
ネネに刻まれたい。
飾りもつける気らしいし、ちらっとみえる案には、魔力調節になにやらほかの機能も追加する気らしい。
どちらかと、実用よりも宝飾品を目指すみたいだ。
たしかに、ネネのクラフトの幅を考えてみると、実用百にも飾り百にもできるため、ネネの意識が強くでるのだろう。
わたしもなぜかネネの道具が欲しいという時期があったけれど、いまはネネ本悪魔が欲しいだけなので、道具は二番めという感じになった。
「ネネが、あげるなら効果は保証ね」
「喜んでくれるかは、わからないけどね」
「喜ぶわよ! ネネのならなんでも」
「それは、ミレイだけ」
ネネは、相変わらず自身の魅力をなにもわかっていない。
いま元気なら、百くらいは余裕で聴かせてあげるのに。
けれど、いまは体力もないため、話してるだけでつかれてくる。
「やっぱり回復がおそい」
「いいわよ寝ていて」
寝ていたいけれど、作業もみていたい。
でも、ネネが側にいるというなら、これほど落ち着くこともない。
「そうね……」
「しばらくかかりそう」
「それは嬉しい」
「いや作業がおそいのに、嬉しいって言われてもね!」
そう言いながらも、ネネの作業はなかなか進まない。
かなり凝ったつくりにしたいようだ。
「ナイフ進んできたら、みせてね。少し寝るわ」
「おやすみ。いい夢をみてね」
「そうだわ」
「なに?」
手を伸ばす。
「魔改ナイフ、少し持っていていい?」
「ええ、いいけど」
「それあれば、ネネの魔力で少しは落ち着くかも」
「わかった。おやすみ」




