ミレイの記憶
あれはいつのころの記憶なのだろうか。
まだ小さい子どものときなのは、たしかで、ネネを追いかけつつも未来スキルが未熟で、何度も失敗していたときのような気もする。
未来スキルと、似たようなスキルの先輩悪魔に教わるまでは、なにを使えばいいのかわからないでいたため、触ったり観たり、ふとした瞬間で未来景色を視てしまい、魔力はどんどん削られていた。
ネネの持つクラフトとは違い、一度発動したらある程度の "ミライ" がおわるまでは、視ていなければいけない。
視ている時間が不規則なため、現実ではずっとボーッとしているときもあるらしい。
そのためか、よくネネに「そんなにタイヘン? 手伝える?」と聴かれて、その幼い心配そうな表情に、何度もキュンとした。
ネネもクラフトの要領が悪く、トロピカルガンとナイフが成功したあとは、なかなか上手く造れないことも多くあり、仕方ないかと両方してスキル修行に、でかけたりした。
たぶん、わたしが心配していることと、ネネが気にしていることは違ったのだろうと想うけれど、クイーンの城にいて、なかなか遊び友だちができないネネは、わたしのお世話をよくしてくれた。
「ミレイ、しょっちゅうケガしてるね」
「あ、うん。なんだかボーッとするから」
「スキル使いこなせるのに、どれくらいかかるんだろうね」
どれくらい、という言葉に過剰に反応してしまう。
「そ……そうよね」
「どうしたの」
ミライのスキルについて、これまでも疑問に想ったことはない。
自身の固有スキルなのだ。
スキル訓練という言葉を聞かせられる前から、ずっとある。
でも、これを使いこなす日などくるのだろうか。
「ネネはさ、クラフトつかって怖いことない?」
「コワイかぁ。爆発したり大きい音したり、ほかの悪魔にケガさせたりしてきたけど、そのたびにツカウのと攻撃するのは違うんだよって言われる」
う〜んと考えこむ。
「それってツカウ対象が、違うっていう意味?」
「よくわかんない。お城の秘書たちが言うには、魔力っていうのは空気中にある視えてないけどある粒を集めて吸収したり形作るから、ツカウのは一緒っていう意味」
「じゃぁ、攻撃するのは?」
「よくわかんない。戦うには、それにあうカタチがあるとか……」
たたかうカタチがあるらしい。
一緒が、共にっていう意味なら、魔力はワタシになる。
「でも、ミライはワタシじゃないよ?」
「よくわかんないこと、言わないでよ」
ネネが公園で遊びつつそう言い返す。
可愛い。
いや、ネネが可愛いのは知ってる。
もっといいのは、常に銃を持っていることだ。
ときどき怒るときに、身体のどこからか似合う銃を取り出してくるのが、サイコーだ。
「ネネのミライもよく視えるけど、ネネは男の子とは、あまり遊ばないほうがいいよ」
「……なにそれ?」
「わたしみたいな、女の子と一緒にいようよ」
「ミレイとは、一緒にいるじゃん」
「そうじゃなくて……」
言いかけるも、じゃほかの女の悪魔と一緒にネネが遊んでいたら、わたしは嫉妬とかするんだろうか。
「ミレイは、オトナだね」
「オトナじゃないよ」
「……心配してくれてるんでしょ?」
ブランコから上手く降りたあと、わたしのすぐ目の前で、首を傾げて聴いてくる。
なにこの可愛いのは。
こんな悪魔ゼッタイに男の子にいいようにされて、もて遊ばれて捨てられて、泣きつくに決まっている。
それはそれで、なんだかわたしのどこかでは、いいなそれ、とか想ってるけどやっぱりだめだ。
「男の子とは、ジュウハチになるまで付き合えないからね」
「……ミレイ心配しすぎ」
今度は、じゃ女の子とならいいでしょとか言われたらどうしようか。
女の子の悪魔なら、キスされて身体触られて結局身体、目当てな気がしてくる。
心のどこかで、ネネが女の子とイチャイチャしているのを想像して、やっぱり捨てられてから泣きつくのはいいなそれ、とか想ってしまう。
「とりあえず、わたしがいるからいいでしょ?」
「はぁ。ミレイそういうの、ドクセンヨクとかっていうらしいよ?」
「悪魔だからいいのよ。欲がたくさん」
「……それもそっか」
納得してくれたらしい。
ネネが悪魔でよかった。
「女の子とは、ジュウロクまでは付き合えないからね」
「それミライでわからないの?」
それもそうだわ。
さっそくネネの両手をにぎり、ミライ視をつかう。
やはりまだ不安定らしい。
二年後くらいまではぼんやりわかるのに、十年ほどをサーチすると、どんどんと身体の自由がなくなっていく。
ふと気づくと、ネネの顔が上にあった。
倒れているらしいとわかったのは、ネネがペタペタと顔を触りながら、わたしに呼びかけていて、ネネの胸あたりにわたしの顔があるからだ。
「……倒れてた?」
「ミレイしんだ?」
「死んでないわよ」
「……はぁよかったぁ!」
「また倒れてたんだ。いつ?」
普段時計は持ち歩いていない悪魔もおおく、わたしも持っていない。
「いつ……えっ」
どこかくるくる見回しているのは、時計を持っていないからだろう。
「おおまかでいいわよ」
「ヨンジュウくらい……」
四十分は意識がなかったらしい。
十年ほどをみようとしたときに、身体が動かせなくなってきたから、いまのわたしだと、五年くらいしか辿れないらしい。
「ありがとう」
「ミライどうだった?」
そうだ。
ネネの十六歳くらいで設定してたから、
五年くらいだと、十一くらいの様子だったろうか。
「ネネは……」
言ってしまっていいのだろうか。
迷うのは、あまりいい場面ではなかったからだ。
「うん、なに?」
「えぇと……」
「平気よ」
「なんで」
「ミレイが一緒でしょ?」
それは、そうなんだと思う。
少なくとも、ネネがハタチかサンジュウくらいまでは、ずっといられるくらいの自信はある。
「うん」
「なら平気よ」
「どういう見方なの?」
銃を構えると、バンッ! と真似をする。
「これ魔改したら……うん。平気」
「つまりは、わたしがそいつに撃てばいいのね?」
「……死ぬかもね」
「相手が?」
「死……なない程度に改造する……」
死なない程度に改造できるなら、死ぬほど改造もできることになる。
「やっぱりネネいいわね」
「ミレイってときどき変だよね」
「そんなこと……ない」
「変っていうか変態だけど」
「わるくち」
「自覚あるから、ワルク聴こえてくるの」
「うわぁ、泣きそうだわ」
「ミレイ泣くの? いいわね。泣けるうちにミレイは泣いていいわよ」
「ヤメておく。泣くのは、女悪魔の心意気に反してるわ」
「まだ子どもだからいいよ、そんなの」
「よくないわ。こういうのは、子どものハヤイときから身に着けておかなくちゃ」
「はぁ、ミレイとおつきあいする悪魔の先がタイヘンだわ」
わたしがおつきあい。
ネネと女同士でつきあうことは、ずっと頭にあるけれど、わたしが男の子とずっといることなんて、事故レベルじゃありえない。
「ネネでいいよ。それは」
「よくないの。わたしがジュウハチになったら、ミレイだってジュウハチでしょ」
なんだ。
わたしの未来を不安に想ってくれているらしい。
そんな心配はいらないのに。
「ミライの心配なんていらないわ」
「……ミライスキルちゃんと使えてないのに?」
うわぁ。
かなり殴りにきたわ。
でもネネの顔をみると、ただ質問しているらしい。
「はぁ。わかったわ! 修行よ修行! ミライ修行して、ネネが不安に想うようなことはないわ」
「修行! いいわ! ちょうどナイフを爆発させたいと想ってたの!!」
「……バクハツはやめておきましょうね」
「なんでよ! 爆発だよ! 格好いいよ!」
「……ネネって怖い」
目が覚めた。
目が覚めたら、天使がいるわ。




