旧妖精文字願い
「ああぁぁぁぁ、スズネそれいいわ」
「それそれ」
「ふふはは」
ミレイがスズネに髪を乾かすのを手伝ってもらっているのだけど、スズネがいたずらをするため、ミレイが笑ってしまうらしい。
仲良いわね、と思いつつ、わたしはクラフトの続きをおこなう。
だいぶ方向は決まったけれど、もう少しかかりそうだ。
ミレイはこのまま、ここでしばらくいるのだろうか。
「スズネ、髪結ぶのうまいわ」
「そうっすかね、割りと自分でやるからかな」
「それに、髪の触りかたもなんかいい」
「ミレイせんぱいのは、なんかつやつやしてる」
「ふふふっ、ケアは大事よね」
「そうっすね」
どことなく、スズネが適当感があるのが、聴いてる分にはおもしろい。
ミレイは、サロンやマッサージなどショップを使うことが多いのだろう。
その分、化粧品などでケアをするようだ。
スズネは、きっとほんとになんでも自分でこなしているのだろう。
髪や服装、小物など手作り感があり、ときどき他のお店ではみないアレンジスタイルがある。
はじめは、ギャル個性をだしていたものの、だれかに言われたのだろうか。
ここ最近は、軽装で肌見せはあるものの、どこか清潔感もあって、前よりも爽やか系だ。
ホントにギャルをやめてみればいいのに。
わたしは、クラフトで続きを進めるものの、ネックレスがもう終わりの作業で、指輪はまだこれからになる。
魔宝石の欠片をはめた、形で月と矢のモチーフだ。
宝石は小さめなものの、ホンモノだ。
少し工夫しながら、ようやくスキルを追加して、ネックレスのが完成する。
次は指輪だけど、こちらのほうがより細かい作業になりそうだ。
スズネが渡してくれたケースにネックレスを収めておく。
指輪は、色が変わっていてデザインもいいのだけど、文字や装飾を少し増やす案だ。
さらにスキルも付加するため、時間がかかる。
ミレイが、髪アレンジやスズネのテクニックを一通りされる。
「ふぅ、よかったわ。一度バックに片付けてくるわ」
「しばらくかかるから、のんびりしてていいわよ」
「わかったわ」
「あ、スズネいい」
「はぁい」
スズネがミレイに手をふってこちらにくる。
「指輪の案なんだけど」
「うんうん」
「あまり、いまの文字や飾りは、変えないほうがいい?」
「いえいえ、ネネせんぱいの好みにしてもらうんで、充分ですよ」
「そう、かな。せっかくの文字を消さないように、うまく刻もうかな、とは想ってるのだけど」
「いいすね、かわいい感じになりそうですか」
「どちらかと、格好よくかもね」
「うん、いいすね!」
「そっかぁ」
魔列車の風景がいつの間にかかわる。
今度は、少し都会でビルや街並みが鮮やかだ。
指輪の刻まれた文字は、たぶん古代悪魔文字と、もう一種類あるみたいだ。
「この文字は、なに文字かな? 悪魔とは違うみたい」
「え、どれです?」
指輪の表面に飾られた文字のうち、
回転させると反対側に別の種類のものがある。
「う〜ん、妖精?」
「妖精文字かしら」
「前に中央図書館で、少しみかけた文字に似てるっちゃ似てるんかな」
「そっかぁ」
悪魔と妖精なのね。
天使とは、仲があまりよくないからか、ヒトのデザインするものではよく並べられていても、悪魔たちがなにか装飾するときには、なかなか一緒にはいられない。
わたしは気にしないけれど、アヤネのグループの子たちは、たしかにまだ引きずっているようだ。
戦争の爪痕が、という風によく言われるけれど、もう何年も経っている。
たぶん種族間の壁を越えるなにかがないと、ずっと続いていく視えない壁なのだろうとも想う。
「絵の妖精」
「うん」
「キレイですよね、悪魔とまた違うなにか、不思議な存在感」
「そうよね。絵のデザインのなかだって、悪魔よりも数おおく残されているんじゃないかしら」
「でも、なにか存在するっていうそこがもう不思議」
「悪魔や天使も、観えていない側からしたら、そう思われているんじゃないかしら」
「ネネせんぱいが見えないなんて、残念」
「それは、言い過ぎ」
「ふふふっ、わたし常々想うんですよね」
「なに」
「ネネせんぱいとミレイせんぱいが並ぶ姿、絵になるなぁって」
「スズネ絵を描くのだっけ?」
「そんなに描きませんけど、ほら、中央図書館で巨大な絵が飾ってあったじゃないですか」
「あぁ、あれね」
「あれみたく、いつかせんぱいたちの絵を依頼したいな」
「おおきすぎない?」
「あれくらい存在感があったほうが、いいすよ」
「えぇせめて、もう少し小さいのにしない?」
「小さい絵だと、ネネせんぱいの魅力伝わりませんって」
「そこは、飾る場所優先で……」
「優先ならエ○かっこいい優先ですって」
「わたし、そういう認識なのかしら」
「あ、それもいいすけど、文字考えましょうよ」
「あ、それね」
手元で指輪に眼を戻す。
魔力を流すと色が少し変わるのと、文字を刻むこと。
あと、なかに描いてある文字が読めればいいのだけど。
「スズネの黒鉄鳥はすぐくるかしら?」
「呼びましょうか」
「そうね、これ少し調べたい」
スズネがすぐ来てくれるかな、といいながら、黒鉄鳥を呼ぶ。
魔列車のなかにいるため、外から来るのかと想っていたら、列車内を低空で飛んでくる。
いったいどこにいたのだろう。
「あ、きた」
スズネの黒鉄鳥もほかの黒鉄とそれほどに違いはないけれど、どことなく目つきが上品で、着地した姿もシャキッとしている。
「呼んだかい」
声を聴くと、男の子っぽい。
イケボイスじゃん。
黒鉄などの使い種たちはあまり性別不明なのがおおいけれど、それでも、わたしの黒鉄は女の子っぽい仕草で、しゃべり方もそうだ。
「クロクロ聴きたいんだけど、中央図書館で、調べものしたじゃん」
「んん? スズネいつくらいのことだい」
「あぁ、えと、先輩たちがいなくなってすぐとかかな」
「あぁ、あれね」
「そのとき、妖精種のいくつか、探して周ったの覚えてない」
「あぁ、たしかノートに……」
黒鉄鳥は、背中の小さいバックから、ノートをだしてくる。
器用に羽根の一部をつかってめくる。
「頼みますよ、クロクロ」
「また呼びかた、かわったの」
「前なんだっけ」
「クゥとか、ロウとか」
「あぁ」
「ほかの黒鉄が、からかってくるんだけど」
「そ、それはいいから!」
どうやら、スズネの立ち位置的に、黒鉄鳥のほうがいろいろと上にいるのかもしれない。
「スズネの黒鉄、たずねていいかしら」
「どうぞ」
「妖精の文字や象形ってどのくらいわかるの」
まだノートをめくる羽根を止めないで話す。
「そうだね……」
「クロクロ?」
なんだかぼんやりと考えているような感じだ。
クロクロはいつもこうなのか、それとも、
なにかあるのだろうか。
少しページをめくっている。
仕草がかわいくて、ジーッと見てしまう。
「あぁ」
「なにかわかった?」
「スズネが、先輩たちがいないって寂しいってずっとため息と愚痴をしていたときだから、それがメモしてある」
「おい! そんなのメモしないでぇ、消してけして!」
「使い鳥は、報告の役目もあるから」
「報告することと、しなくていいことと、削除することがあるのぉ!」
「削除してたら、報告に違反するんじゃ……」
「イハンイハンって、クロクロだって、違反よくしてるじゃんね」
「さぁ、なんのことかな」
「知ってるからね! わたし知ってるから」
「さぁ、スズネはよくわからないなぁ」
なんだか、この黒鉄は、なんというかスズネの扱いかたが上手らしい。
わたしも今度からは、クロクロを見習うのがいいのかもしれない。
「それで」
「妖精種と、文字などについては調査するよ。いまわかるのは、少しだけ」
「うんうん」
クロクロは、背中のバックから今度は新魔導書をだしてくれる。
でも、悪魔のとは少し違う気がする。
みせてくれるため、のぞきこむ。
「妖精の新魔導書だよ。簡易版で、あまり詳しくないけどね」
「へぇ、妖精版のははじめてみた!」
「ふふっ、これに少しは読める文字があるといいけど」
別の手帳もだしてきて、三冊を並べながら、翻訳作業をしている。
わたしも少し横からみて、見つけたのをメモする。
スズネは、いじけているようだ。
そんなに、わたしたちのいない間、愚痴ばかりだったのだろうか。
たしかに、再会してすぐのメディにけっこうな勢いで抱きついていたから、ウソではないのだろうけれど。
翻訳の作業に集中しているのか、あまりしゃべらないけれど、前にわたしの黒鉄に聴いてみたことがある。
使い鳥たちは、基本おしゃべりで、魔力の作業や連絡報告作業が、落ち着いてきたときに、話しているのは、基本噂話しや界隈の綿密な情報交換なのだそうだ。
この黒鉄もたぶん普段はおしゃべりで、よく話すのではないかな。
いくつかの読めそう文字を探っていく。
黒鉄は、少し予備知識があるのだろうか。
三冊使いながら、自身のノートになにか器用に描いていく。
そのうち、いくつかをわたしやスズネにみせてくれる。
まぁ、スズネは、ふ〜ん、としか言わない。
前までの成長したスズネは、どこにいってしまったのだろうか。
「すると、水や風、光とか自然に関する文字は、似ているのね」
「そう」
「あと、いくつか見たことあるのもあるけど」
「それは、なにかの書籍でみるんじゃないかな。妖精に関するものも、悪魔たちがまったく見かけないわけじゃないでしょ」
「そっかぁ!」
黒鉄のクロクロは、スズネがいじけているのをみて、少しだけ羽で気にしている風だ。
「それから、スズネたちが見たのは、販売妖精のものだよね」
「うん」
「あのおおきいやつは、見応えあったでしょ」
「そうそう!」
「中央図書館に飾られたのは、だいぶ前だった気がするけど、別の絵がかけられていた時代もあったよ」
「へぇ〜、そうなの」
「スズネは、少しは絵描いたりするのよね」
「ふぇ、あ、う〜ん、まぁね。わたしのにキョーミないでしょ」
まだいじけている。
「自然、魔力、制御、願い」
「願い?」
「あぁ、たしかにこの指輪の文字、少し願いって描いてある気もするよ」
「ほんとですね」
「もう少し、理解しやすいの、見つけてくるね。それまで、これを参考に」
「え、いいの?」
「買い取ったものだから、あとで返してもらえれば、それで」
「サイズ小さい、かわいい」
クロクロは、羽を広げると空中にひとつ飛んでから、狭いなかを一回転して、また去っていく。
「クロクロ、じゃね~、また呼ぶね」
「じゃ」
なかなか素っ気ない態度だ。
「いつも黒鉄鳥は、あんな感じなの?」
「え、いいやぁ、なんかいろいろ怒るんですよね、あきれるのかな」
専用の使い鳥ではあるものの、クロクロにしか観えていないスズネの姿があるんだろう。
「スズネのこと、よくみてるってだけな気がするわよ」
「え……クロクロのことですよね」
「そうよ」
「いやぁ。なんか怒りっぽいんですよね」
「使い鳥って、一度契約するとそのままじゃない」
「うん」
「でも、堕悪魔になってたりすると契約外しで、いなくなる子もいるのよ」
「あぁ」
「そういえば、ヒイロの使い鳥はいないんですよね」
「そうね、ヒイロもアマツキも一度契約を外されてしまったのかも」
「クロクロはじゃ、基本性格があぁなんですね」
「ちゃんとしてほしいだけなのかも」
「えぇ! わたしがちゃんとしすぎると、バランスっていうものが」
「なんのよ」
「悪魔界の色とりどりっていう魅力の話しです」
「じゃ、ときにはわたしが性格改変しようかしらね」
「ま、まさか……」
「なにまさかって」
「ネネせんぱいもミレイせんぱいを見習ってセクシーネネ誕生になりますか? そしたら、マジほれるしか選択肢がないです!!」
「ちょっとなに言ってるかわかんない」
「足やお腹や首をさらけだして、うふふわたしと夜遊びしちゃう? うふふとか言うんでしょ?」
「どんなイメージかますのよ!」
「改変にはおおきな犠牲がつきものなんですよね、わたし知ってます」
「どこでそんなの知り得てくるのかしらね、ホント」
「知りたいです?? わたしのひみつ??」
「いいえ、やめておくわね」
「なぜ! 知りたいって言わないです」
「悪魔界ではね、知りたいっていうと、代償がおおきいのよ」
「知りたがりは、先に倒れていくのがたしかに、よくありますよね」
「知りたがりは、罪深く……」
「夜辺りは、真に深く……」
「朝に問うは……」
「夢にみる」
「影か鏡か」
「よく知ってるわね」
「でしょ!」
「クイーンの城に飾ってある絵と、同じ場所になぜか描かれてるんだよね」
「そうそう! わたしもなにこれってなりました」
「それじゃ、指輪の文字も決まってきたし、もう少しクラフトしてようかしら」
「え! え! なにか決まりました!?」
「当然よ」
「教えてください」
「自然の光でしょ、制御はつけるにして、あとは……」
「うんうん」
「あとは、やっぱりこれでしょ!」




