魔列車前ホテル、ネネとメディ
うまく着地できたほうは、威勢よく話す。
「もう夜だけど、キレイね」
「まだ悪魔おおい」
「ショップにぎやかみたいだよ」
他方、転移酔い。
「うぅ、えーん」
「よ、よう。ぐるぐるする」
ヒイロとアマツキは、転移中に魔力の集中を途切れさせてしまったらしい。
流れる魔力量が中程度なら、酔わないらしいのだけど、それより低下させていると、転移中の魔力放出のバランスが崩れて、着地の瞬間に身体に負荷と付加があるらしい。
「もう、余所見したんでしょ」
「違うこと考えてるとなるわね」
「まぁ、ベテランでも間違うし」
スズネが、ヒイロとアマツキの両方の背中を軽くたたいて、魔力のバランスを抑えたり強くしたりして、目眩を軽くしてあげているようだ。
どうでもいいのだけど、服装が軽装で、まるで散歩にきてるようなスズネは、やはり損してると想う。
面倒見いいし、こうやって子どものお世話もするし、ときどきギャル目線なのに、一線を越えない程度なのがなんとも愛らしくて、よく見てると悪魔スズネは、なんというか、自分で安売りしてる気がする。
いまだって、音楽ショップを出入りする男の子悪魔たちが、ちら見しているのは、スズネとミレイで、モテてそうなのに、いつも話しをすると、少しだけスズネは、自分のことより、ほかのことを気配りしてしまう。
「ほら、ヒイロ、アマツキ。深呼吸して、そのあと周囲の魔力の粒をよくみて。魔力のバランスは、外と内側、両方に存在するんすよ。つまりは、ネネとミレイがあわさって分割して、それが倍になって周りにたくさんいるって想うと、これサイキョーな環境になるっていう」
「わかりっづら」
「なんともいえないわ」
「でも、ネネとミレイがサイキョーだというのは、同意するね」
メディが、なにかハレンチな想像をしている気がして、思わず聞き返してしまう。
「ねぇ、メディ、わたしたちの変な姿想像してないよね」
「まさか、コスプレとかさせて、なにか変なセリフ付け足したりしてないよね」
今度は、メディが不思議な表情をみせたあと、マジメに質問をしてくる。
「前からの疑問を聴いてみてもいいのかな」
「ええ、いいわよ」
「男の子が、毎日いつもそんなに妄想をして毎回、変なセリフを創造したりとか、少し悪魔偏見があるんじゃ」
「だって悪魔じゃん」
「そうよ。悪魔な男子って言ったらエ○いこといつも考えて、女の子にどんな命令をしようか、妄想爆発をさせることが、ひとつ生態なんかと」
「いやいやいや、悪魔って言ったらどちらかというと、サディスティックで刻みつけてやろうか、てきな」
「それ、いいわね」
「刻まれたいわ」
「メディ、ちょっとやってみてよ」
「えと、イヤに決まってるんだけど」
「なんでよ」
そんな不毛な言い合いをしている間にも、スズネは、ヒイロとアマツキをすっかり落ちつかせていた。
「ふぅ、それで、なにやってるですか、せんぱいたち。とりあえず混ぜてください。妄想勝負なら、負けないすね」
「べ、別に勝負なんかしてないわ。ただ、メディがよからぬ妄想をしだしてないか、見張っただけなんだからね」
「つまり、ネネはわたしの話しでよからぬ妄想をしたと、そういうことっすね。承知しました」
「違うったら。なに聴いてたの」
「ネネとミレイが、合体したいっていう話しっすよね」
「ぜんぜん違うわ」
すると、スズネの目つきが、するどさを増す。
「わたし知ってますからね。メディせんぱいを想像して、夢のなかで、いや、そんなとこ触らないでって言ってるの、知ってますからね?」
「なぜ。そんな夢のなかまで」
「知らないったら!」
「ふふん、悪魔寝言で、う〜んとか、セクシーな声だして、えっちとか言ってるの、わたしちゃんと? 知ってますからね」
ネネが、恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしている辺り、ホントっぽいことで、スズネは勝ちほこっている。
ヒイロとアマツキは、今度は冷静になって
「ふ〜ん、ネネのえっち」
「えっちぃ」
と言ってるのは、たぶん本気ではなくて、あきれているのだろう。
ようやくヒイロとアマツキが落ちつけるみたいなため、ネネのショックは置いておいて、音楽ショップの店内BGMを聴きながら、お店にミレイが入ろうとしていた。
「ちょっと待って」
「ん、どうしたの」
「なんで、なかに入るの」
「え、音楽がそこにある限り、わたしはそこにいかなくちゃいけない」
「はい。ミレイはこっちです〜」
「そんな、ひどい。目の前にあるのに、あのライブとこのライブの情報が、すぐ目の前にあるのに」
そういうミレイを引きずりながら、なんとか泊まる場所を探していき、ひとつのホテルの玄関ロビーにいた。
「ご予定は、いつですか」
「明日のお昼くらいまで」
「それですと、お部屋が三部屋でよろしいですか」
「メディは、一部屋でいいわよね」
「ヒイロとアマツキが、それでいいなら」
「ぼくは、メディのところにいこっかな」
「なんでよ。わたしとじゃ不満なの」
「そういうんじゃないけど、なんかヒイロと一緒ばかりだし」
「なら、いいじゃん」
アマツキがゴネゴネしているのも理由は、ありそうだけれど、結果そのままヒイロとアマツキは同じ部屋になる。
ようやく部屋につき、メディを探してみると、部屋にいない。
どこにいったのか、気になって聴いてしまう。
「メディみなかったかしら」
「え、いないの」
「うん。部屋に荷物はあるみたいなんだけどね」
ミレイが、考えたあと
「ま、すぐに戻ってくるわよ」
「それは、そうね」
そういいつつ、スズネもいないため、なんとなく気になり、少しホテル内を探しまわる。
四階のフロアは、窓が少し多めにあり、開かないものの、夜景がキレイだ。
部屋はそれぞれ、となり同士で建物の形に沿って、部屋の形も少しだけ違う。
四階から下っていき、階段で三階二階と進むも、廊下にはいなさそう。
一階のロビーにでてみると売店があり、
そこに、姿を発見する。
「なにしてんの」
「買いもの」
「荷物まとめて持ってきたんじゃ」
「うん」
「スズネは」
「みかけなかったよ」
このメディナナタリアという悪魔は、ときどきだけど、心配になるくらいに、気まぐれだ。
仕事中は、そんなこともないらしいとミレイによく聴いてるけれど、
プライベートでは、よく姿がみえなくなる。
大抵の場合は、だれかのお世話をしていたり、落としアイテムをひろってどうしようか迷っていたり、なにか発見しては、そこで立ちとまっていたりする。
それでも、スズネと一緒ではなかったことに、安堵して少し安堵したことに、罪悪感を覚える。
ミレイにだけでなくて最近ではスズネに対しても、わたしは嫉妬しているのだとおもう。
「それは」
「フルーツアイスクリーム。部屋暑くない」
「いや、アイスて」
「冷たいのキライ?」
このメディナナタリアという悪魔は、ときどきだけど、こうしてボケてるのか、アザといのか、聡いのか、もうよくわからないくらいに、気まぐれすぎる。
「好きだけど! 好きだけど、そうじゃなくて、急に消えたりしないでよ」
「なぜ、ときどきネネは、きびしくなるのかな?」
「そんなの、メディが悪いんじゃん」
そう、みんな彼のせい。
「いや、理不尽じゃん」
「リフジン嫌いなの!?」
「いや、それ好きなやついるの!?」
理不尽な想いをして、困った顔をして少し哀しむあなたのその表情が、また好きだなんて、言えない。
「好きって言っておけばいいのよ」
「さらなるリフジン」
どうしてだろう。
ときどき、あなたを困らせたくなるのは。
きっと悪魔だからなのだろう。
そう、わたしは悪魔。
悪魔だから、どんな理不尽だって、言いたい放題。
「アイス、溶けないうちにいこ」
「あ、うん、そうだね」
「溶けてたら、あなたのせいだわ」
「追い打ちをかける、その言葉。買ってきたのに」
「理不尽プラス」
「せめてマイナスを」
「やさしさマイナス」
「そっちは、マイナスは困る」
「ふふふ」
あぁ、もう。
なぜか、またいじわるをしたくなる。
「悪魔だね」
「きらいなの」
「悪魔だから好きだけど」
「そうでしょ」
「でもネネの場合は、悪魔的ではないから、小悪魔だね」
「それって、なにか違うの」
少しの間だけ、メディは立ちとまると、
ネネが一歩だけ前にでる。
振り返ると、アイスの入った袋がゆれた。
「かわいいってことなんじゃ」
袋の持っていないほうの手で、
髪をあげて、彼の眼をみつめる。
微笑する。
「そう。ありがとう」
そのあと、顔を向きなおしたときには、
思わずニヤけていて、それを意識するといけないから、手で口元を押さえた。
「いこ」
「ええ」
メディの一歩めの足音を聴いて、また歩きだした。




