メディとルルファイス
ルルファイスが起きてから、ようやく妖精の伝えてくれた水と花の妖精に関して話しを聴くことができた。
絵の妖精は、ルルファイスと少しだけ話すと、もういかなくちゃ、と言った。
「もっと話し聴きたかった」
「ええ、また逢える。これらの絵を返し終えたら、また次の地点に向かうから」
中央図書館で、回収したほとんどの絵を抱えて、それをまた器用に台車に固定すると、ライリアとレミリアにあいさつにいってくると話し、妖精はせかせかと、一階のカウンターに向かう。
ルルファイスが、覚えている限りの
"水" と "花" の在り処を説明してくれたあと、
少しだけメディを呼びだして、少し暗くなりかけている屋上庭園にでた。
「どうした」
「うん。ちょっと」
そのまま、少しルルファイスは話しをしようとしないで、
屋上のフェンスに手をかける。
カシャンとキレイな音が鳴る。
メディは羽を少しだけ拡げると、
考えこむルルファイスの隣で、壁によりかかる。
メディの悪魔の羽根がひらりと床に落ちる。
少しずつ夜景となっていくのを眺めながら、ルルファイスは静かに話しをする。
「ヒイロとアマツキは、もうすっかりと仲良しだよね」
「そうだね」
「まるで転生者と悪魔みたい」
「そうかも」
「ね、メディ」
ルルファイスは、メディに顔を近づけながら、その手をメディの首にやり、さらに顔をなぞる。
「どうした」
「ネネとミレイ、どちらを選ぶつもりなの?」
「なにを言ってるの」
ルルファイスは、メディの口もとに手を持っていくと、ぷにっと頬をつまむ。
「とぼけないでよ。ネネに好意を持たれてる自覚あるんでしょ。ヒイロやアマツキはまだもう少し後でもいいけれど、少なくともネネは、気を持たせ過ぎなのよ」
はぁ、とメディはため息をつく。
「なんだ、そのことを言いにきたの」
「まだあるわよ」
「なに」
壁にルルファイスは手をつくと、メディはちょうど壁に背をあずけて、
壁とルルファイスに挟まれる形となった。
「スズネのこと、少しだけみててあげてくれない」
「スズネ?」
「そう。あの娘いま不安定だし、それにクイーンになにか頼まれているみたいなのよ」
ルルファイスが、クイーンの城に呼びだされたのは、そのこともあったらしいとメディは気づく。
「わかった。ほかには」
「それから、これ」
ルルファイスは、片手を壁についたまま、ポケットから、魔力宝石の欠片を取り出した。
屋上にある魔力灯に照らされて、
それは、キラリとひかる。
「もらっていいの」
「ええ」
受け取る。
「あと」
「あとはなに」
ルルファイスは、メディの耳もとすぐに口を近づけて、そのあと二つ三つほど伝えたあと、そして、そのあと首もとにキスをした。
「これは、お礼」
「ルルファイスは、異性には興味なかったんじゃないのかな」
メディは、至近距離にあるルルファイスの眼をみながら苦笑いする。
「貴方は別かも」
「ふ〜ん。そう」
「なによ。わたしじゃ不満なのね」
ルルファイスも至近距離にいるメディの眼をみつめながら苦笑いする。
「不満じゃないよ」
「じゃなによ」
「言っていいものかな」
「言いなさい」
「ふぅ」
「ほら」
まだ離れようとしないルルファイスに、
仕方なしにメディは応える。
「ルルファイスは繊細だから、正直なところ、例えばでも手をだして、キズつけたくないんだよね」
ルルファイスは、壁に手をついたまま、驚いた表情になり、そのあと赤くなる。
「は、え、なんで」
「なにが」
「わたし、もうそんな少女じゃないわ。キスしたり抱きしめられたからって、そんな」
「無自覚なんかな」
「だから、なんでよ」
「ルルファイスは、オトナなフリしてるけど、まだ少女っぽいところ充分にあるよね」
ルルファイスは、バッと離れると、
顔を隠して、うつむいてしまう。
「わたしわかったわ。貴方ニガテかも」
「そう。それは嬉しいな」
「うわぁ、イヤミな悪魔ね。だから気にいったのかしら」
「そんなに、ニガテなら来なきゃいいのに」
「バカね。そういう異性だから、気になったのかもしれないじゃない」
「そういうもん?」
「さぁ、そういうじゃない恋なんて」
まだうつむいているルルファイスは、
傍からみていても、やはり少女な姿だ。
ルルファイスと一緒に屋上から戻ると、すぐにミレイが来て、ルルファイスとは反対側にあるメディの腕をとる。
わざと身体を近づける。
そのまま、ルルファイスを軽くにらみつける。
メディは笑うしかない。
ネネはその姿をみて、あきれているようだ。
「ルルファイスって、わたしのこと好きなんじゃないの?」
「ネネは特別よ。あとヒイロもね」
「じゃ、メディから離れたら」
「いやよ。それに、先にアピールしかけてるのはミレイじゃない」
「ミレイはいつものことなのよ」
「たしかに」
「みんな同意ね」
ミレイがさらに身体をメディによせるためヒイロがかけていき間に邪魔にはいると、アマツキは、ネネと同じ表情になる。
「ねぇ、アマツキ」
「なに」
「そろそろミレイには、なにかしら災いが起こるのではないかと心配になるんだけど」
「奇遇だね。ぼくもそんな気がする」
「でも、ダメね。未来視があるから、たぶん避けてしまうわ」
アマツキとネネが眼あうと、アマツキは、一言つけたす。
「あれって、メディも少しわるい気がしてきた」
「賛成ね」
カウンターにいるレミリアに話しかけると、ライリアが預かっていた荷物を渡してくれる。
絵画の販売妖精は、片付けが終わるといつの間にか、もういなくなっていた。
そのことについて、レミリアに聴くと、
「妖精は、気まぐれよ。でもまた逢えるって顔してたわよ」
と言うため、それを信じることにしよう。
すっかり名前を聴きわすれてしまった。
「それで、水の洞窟と花の洞窟、どちらに向かうの」
「風の洞窟も予備で教えてもらったわ」
「そっか。風ね」
レミリアが、少し不思議そうな顔をする。
「まずは、水の妖精に会いにいってみるよ」
「そっか。わかった。気をつけてね」
まだざわつく図書館内で、それでも少しはカウンター業務があいたようだ。
みんなで手分けした甲斐はあったようだ。
「あ、そうだわ」
「うん」
「妖精はとても気まぐれで、親切だけど、機嫌がわるいと、なかなか話してくれないの」
「そうなんだ」
「水には水の礼儀、花には花の手続きが必要だわ」
「妖精はいま話したかぎり、とても悪魔たちよりも話しやすいわ」
「役にたつか、わからないけれど」
レミリアが、エプロンのポケットから、
不思議な色をした水の入った小瓶と、花を一本渡してくれる。
「これは」
「前に澄んだ水場をみつけたときに、もらってきたの。水は水を惹きつけるわ。花は、ルルファイスが持ってきてくれたのよ」
「ありがとう」
「もう、いくの」
「ええ、先に転移できるところまで進んだあと、聴いてまわってみるわ」
「そっか。気をつけてね」
ライリアはカウンターで、レミリアはその場で、手をふってくれる。
それぞれ荷物を抱えて、中央図書館の玄関からでるときに、もう一度なかをみると、
また悪魔たちで、混んできていた。
外は、もう薄暗くなっている。
ヒイロとアマツキは、しばらく室内での作業だったため、でてすぐに深呼吸をする。
「なんだか、久しぶりに空を眺めた気がするよ」
「もう暗くなってきてるけどね」
「これから、夜になっていくかとおもうと、ワクワクするね」
ヒイロとアマツキが、荷物をもったままその場でくるくると回っている。
元気だわ。
元気すぎる。
もうひと仕事おえた気分のネネたちは、子どもの元気に押しまけそうだ。
「まずは隣街」
「もうひとつ先でもいいのかな」
外の図書館公園になっている部分で、
ネネとミレイが転移を調節して、どちらにいこうか、と相談している。
教わった水の妖精の住む場所には、はじめて向かう場所のため、転移が設定できない。
「近くのだと、泊まる場所はあった気がする」
「もうひとつの街は、少し規模が小さいのだったかな」
「泊まる場所はあったけれど、DJRが不便じゃなかったかしら」
「え、なにそれ?」
「あ、ヒイロとアマツキは乗ったことないか」
「魔力列車だよ」
途端に、ヒイロとアマツキは、眼がきらきらしだす。
「れ、列車ってレッシャだよね」
「本でみたよ」
「ホントにはしってるの?」
そうか、と思う。
翼で移動ばかりしていたから、
そういった乗り物は、利用していなかった。
「魔力列車は、乗客の魔力を原動力にしてはしるから、どんどん体力がなくなるのよね」
「長距離のるときには、食べもの食べたり、魔力の補充しながらじゃないと、疲れちゃうの」
「ふ〜ん」
「ま、生きてるから仕方ないか」
「生きてるの、列車が?」
「うん。そうよ」
アマツキが「わぁ」というのと、
ヒイロが「キャー」というのが重なる。
この様子だと、観にいくことになるのかも。
「でも、水の目的地の近くまでいければいいけど、そうでないと、遠回りになっちゃうかも」
「調べてみようよ」
「あの駅タンサクは、癖があるのよね」
「クセ?」
メディもスズネも、クイーンの城からの観光でしか、つかったことがなく、そのほかの用では、転移を利用するため、実際に乗ったことは少ない。
ネネとミレイは、休みの旅行時にけっこうつかっていたらしく、詳しいみたいだ。
「あ、ほら」
「やっぱり」
「どうしたの?」
デビルスマホで、検索していたミレイが、当惑している。
「ここ途中寄り道したり、天候不順で機嫌がわるくなったり」
「寄り道? 機嫌?」
「あ、ほら、ここダイアに遅れがでてるため、おおめに魔力が必要ですって」
「ひどくない?」
「のってる分だけ、魔力が吸われるのよね」
「ひどくない?」
「二回めだね」
「はぁ、ま、自分たちで長距離飛んでいくより、それでもいいのかな」
「う〜ん」
ミレイとネネが話していると、
アマツキとヒイロは、もう乗れる気で、うずうずしている。
スズネが聴いてみる。
「アマツキとヒイロは長距離飛ぶのと魔列車と、転移と歩きで探していくのだとどれが」
「「魔列車」」
「かぶせてきたね」
ミレイとネネは、それでも魔列車の抵抗があるようだけれど、スズネとアマツキ、ヒイロはすっかり「それで、いこう」と決めてしまっているため、結果は魔列車の駅まで移動して、泊まったあとで、乗り込もうという話しが決まった。
「ネネは、どうしてそんなに乗る気ないの」
「えと、メディは魔力修行のとき、魔力切れダウンて起こしたよね」
「あぁ、まぁね」
「そのときの、症状って覚えてない」
「たしか、目眩と立ちくらみと頭痛とダルさと」
「熱とぐるぐると、軽く夢みたりとか」
「あったかな」
「そんな感じ」
「そんな感じ?」
「そんな感じなの」
「ええ、そうなのか」
「そうなのよ」
「やめておこうかな」
「もう、決まったみたいよ」
そういえば、とメディは想いだす。
まだ、スズネの相談を聴けてないな。
長距離移動だし、どこかで少し時間とったほうがいいのかも。
ミレイが、もう仕方ないという感じで、転移の先を隣街のショップ前に決めたようだ。
「ネネ、準備いい」
「てか、なんでショップ前なのよ」
「わたしは、仕事でいった場所か、あとはプライベートでよった先だから、音楽ショップの前なのよ」
「あぁ、ミレイはたしかにそうなのね」
メディは、どういった場所を転移先に指定しているのだろうか。
けれど、改めて転移の指定の仕方など、メディにたずねるのは、なんだか恥ずかしい。
公園のすべり台と鉄棒の間の空間に、
転移陣が出現し、それぞれで荷物を抱えて待っている。
「いこっか」
「さぁ、次の街だね」
「荷物忘れないようにね」
「転移酔いに気をつけて」
みんながジャンプしていくなか、
ミレイが残っているため、ネネが中央図書館のほうを向くと、まだ中央図書館には灯りがつき、なかでは忙しなく、司書たちが仕事をしているだろう。
「どうしたの」
「なんだか、可笑しいの」
「どうして」
「図書館にこれほど、入り浸ることなかったから、ルルファイスの気持ちがよくわかるわ」
「そうね」
「いきましょ」




