アマツキの回復
「アマツキ、ヒイロ着替えたよ」
「う〜ん」
「ほら」
「う〜ん」
「どうしたの」
「う〜ん」
「寝てたら、起こしてって言ってたのに」
「う〜ん」
「アマツキ、寝相わるいね」
シスターが、もう一枚かけるものを持ってくる。
「はい」
「ありがとう、シスター」
ヒイロは、ベットのアマツキの寝ている隣に、座る。
「どうする? ヒイロ」
「しばらくここにいるわ」
洗いたての髪をまだタオルでふきながら、ヒイロは、アマツキの寝顔をみる。
「てか、起きないね」
「いいよ」
そっと、手をにぎる。
「うーん、ひいろ」
「はーい」
そのあとが、こないため、寝言かもしれない。
「はぁ。アマツキやっぱり緊張してたんだね」
「あまり、食欲ないみたいだし、もう少し様子見ないとね」
「そうね」
「ここは、ベットひとつだし、となりの施設みにいってくるよ」
「あ、わたしも」
メディとミレイ、シスターは、教会の中央まで、話しながら歩く。
「あ、ヒイロはそこね」
「うん。アマツキ、起きるの待つよ」
「ちゃんと乾かしてね」
「なんか、ヒイロが急に姉悪魔だね」
「からかわないで」
「はーい」
ネネも安心したのか、アヤネと話しながら、ヒイロに手をふる。
ヒイロは、寝ているアマツキの頭をなでてみる。
「よく寝てるなぁ。でも、起こしてって言ったらしいし。どうしよ」
アマツキの寝息が、聴こえるなか、ヒイロはバックから、自分の悪魔ノートをひらいて、ここで書くことにした。
「アマツキと、会うでしょ」
「天使の世界」
「教会」
悪魔ノートに、描いているとヒイロは、
ルルファイスとの出来ごとを思い出す。
ルルファイスは、わたしが美悪魔で、ナンパしたくなったみたいに、いっていた。
でも、ホントは違うのだろう。
図書館で司書をしていると、きっといろんな悪魔がいるだろう。
その一悪魔たち、それぞれの要件をどんどんこなしていくのだから、頭の回転もはやい。
わたしを"ナンパ"したのでも、"ひろった"のでもなくて、ルルファイスだって、なにか理由があったはずだ。
わたしだって、アマツキに逢ったことは、偶然だろう。
でも、アマツキを見つめたとき、
わたしとは違うのに、同じ感情があったような気がする。
「聴いてみようかな」
アマツキが、少し寝相を変えると、わたしの腰の位置まで、顔が近づく。
「友だちなのかな。でも、恋じゃないよね」
「そもそも、わたしに、愛があるのかな」
悪魔ノートに、自然といくつかの出来ごとを描いていくと、そういえば、と思い出すことがあった。
中央図書館で、悪魔と、天使の戦いやそのあとの立ち位置を記した歴史作品があった。
相当前から、悪魔と天使は、エネルギー体の回収で、トラブルに遭うらしい。
特に天使は、回収して異界に連れていくのに、悪魔とは違い、説得回収とそれに、呪縛されたり、エネルギー体として形がなくなる小さな者まで、できるだけ回収するらしい。
「悪魔は、もっと回収の効率や自然体なのに、天使たちは、エネルギー体そのものをヒトの世界やほかの地域に、残してはいけない、て言われるみたい」
すると、
「あ、ヒイロぉ」
「起きたの」
「起こしてって言ったのに」
「よく、寝てたよ」
「そっかぁ。なんかホント久しぶりに、なにも、考えずに、寝ていた気がする」
「いつもは、どうしてたの?」
「いつもは、寒くないところだけ、探してあとは、丸くなるだけ。ほとんど寝てなかった、かもね」
「そういうもの?」
「食べることも、ほとんどする気になれなかったからね」
「いまはどう?」
「うん。少しは、元気だよ」
「よかった」
「ねぇ、ヒイロ」
「なに?」
「ヒイロは、一悪魔のとき、寂しいとか、なにか考えてたの、覚えてる?」
アマツキが、まだ起きあがらずに、寝たままの姿勢で聴いてくる。
「うーん。そうね」
アマツキの髪をすいて、手で遊ぶと、アマツキが、払うものだから、その手をさらに、除けて遊ぶ。
「覚えてない?」
「ううん。図書館で、自分だけのときにも、周りの書物を読んで、スキルを高めて、遠くでルルファイスたちのことをみてると、自分という者が、少しずつわかってくるの」
「どうやって」
「ヒイロは、こうしたいとか、ヒイロは、これがニガテとか、内にある空間で衝動がおこるの。わたしは、それに名前をつけたくて、書物をいくつも手にしてたわ」
「名前」
「アマツキも、"アマツキ"っていう内にある空間に、名前がこれからたくさんつけられると想うの」
「でも、それが、寂しいだったり、虚しいだったりするわけでしょ。ぼくは、それをあの場所で、ずっと感じてきていたから」
ヒイロは、遊んでいた手をやめて、
アマツキの頭を、ひざまくらする。
それは、いつかレミリアがしてくれたものだ。
ギャルな悪魔なのに、そういうところで、なぜか、姉悪魔の役割をしてくれていたのかも。
姉がどういうものかは、まだわからないけど。
「えっ、なにするの??」
「ひざ枕だって」
「ふーん。なんか、頭くすぐったいけど」
「それが、いいんじゃん」
「ふーん」
そういうアマツキは、顔が少しニヤついている気がする。
「もう。なに考えてるの!?」
「なにって」
「なんか、だって、アマツキ顔が、変」
「そういうヒイロだって、なんか変じゃない」
「どこが」
「なんか、やけに姿勢いいし」
「こうしないと、アマツキ落ちちゃうでしょ」
そういうもんかな、とアマツキは納得できていない様子。
「と、とにかく、あまり動かないでね」
少し黙ってしまうと、今度は、静かな空間になり、教会の中央からの少しの話し声と、黒鉄だろうか、鳴き声が聴こえてくる。
「ありがとう」
「え、なに」
「ううん。なんでも」
「そう」
ヒイロは、こういうとき、なにを考えれば、いいのだろう、と想いながら、アマツキの額や目鼻立ちを観察していた。
「ヒイロ」
扉のほうから、声がして、少し慌ててしまう。
さっと、足を動かしてしまい、アマツキの頭が、ベットにボフっとなる。
「アマツキ起きた?」
シスターが、聴いてくる。
「え、うん」
「アマツキ、少しは寝たの?」
「ヒイロ、急に足動かさないでよ」
「足、なんのこと?」
「あ、起きたよ」
「どうかな、少しここで休んで、もらって、ネネたちもここに泊まるって」
「わかった」
「そう、わかった。あ、ヒイロは、ここにいるわよね」
「うん」
「そしたら、ベット狭いけど、一緒でいい?」
「え」
アマツキを見ると、
「いんじゃん。気にしないよ」
「そうね」
「わかったわ」
悪魔ノートをしまい、少しするとシスターが説明してくれた。
ネネとミレイ、メディ、アヤネはとなりの建ものにある、宿泊施設で休むようだ。
シスターが、わたしの寝具も少しそろえてくれる。
「あ、シスター」
「はい」
「シスターは、いつもはどこにいるの?」
「ふふっ、ひみつ」
「え」
「安心して。わたし、ロリではないから、ヒイロは、ぶじよ。襲わないわ」
「えと」
それは、他の好みだったら、この天使は襲ってしまうのだろうか。
そんなで、シスターて、いいのかな。
笑い声が聴こえて、扉のほうをみると、メディが話しを聴いていたらしく、笑っている。
「よかったね。ヒイロとアマツキは、安心して寝られる」
「メディ気をつけて」
「いや、そんな」
「気をつけて!」
「あ、うん」
「それから、ミレイにもね」
「ミレイは、ニガテなの?」
「ニガテというより、ベタベタしてくる」
「それは、ヒイロがかわいいからなんじゃ」
「ネネやアヤネのほうがかわいいよ」
「うーん」
シスターがクスクス笑っている。
「メディって、ニブいよね」
「あ、うん。よく言われる」
「そんなんだから、ミレイがすぐ甘えるんだわ」
「ミレイは、少し特殊だよ」
「そうかな」
「未来視のスキルは、たぶんメンタルでけっこう負担になる」
未来視、ミレイのスキルは、けっこう特別らしい。
たしかに、先の出来ごとが、自分でわかっているという感覚は、どんなだろう。
それとも、未来を代えるために、ミレイは、いつもああいう態度をとるのだろうか。
そう考えると、ミレイは案外真面目なのかな。
そのあと、ミレイとネネがくると、部屋にくると、ミレイがヒイロにベタベタして、腕をくんだりするため、またヒイロは、あっちいって、となる。
アマツキは、自身のノートを見返しているようだ。
でも、なんだか、騒がしいのは、
ヒイロとしては、キライじゃない。
少し安心するのと、うっとうしいのと、あと、少しだけ、なぜか懐かしい。
「ねぇ、ヒイロ、一緒に寝ましょうよ」
「アマツキと寝て」
「わたしは、ヒイロとがいいわ」
「なんで、女の子同士なのよ」
「あら、メディは男の子よ」
ヒイロは、そういうことではない、と抗議したくなった。




