【十六章】RIght KIng 2
【削除のお知らせ】
クロス・ガーディアンを読んで下さっている皆様にお知らせです。
この度、読みづらいということと、ラストがグダグダしているという理由で、クロスを削除することにしました。
8月10日より、毎日一話ずつ削除をしていく予定です。
リメイク版のアップ予定は今のところ未定ですが、なるべく努力はしたいと思います。
ではでは、いつかまた会いましょう(´艸`)
有澤透真
蔦の絡まった玄関を押し開くと、廃れた外観とは見違えるほど潤ったホールが現れる。
大理石で覆い尽くされ、床に光沢を反射させていたはずの戦場は、今はあちこちに落ちた血痕で薄汚れていた。
無造作に転がるのは、銃弾を受けて欠けた石の残骸や、粉々にされ花を投げ出した花瓶。
ホールの中心には、力と祐也の二人のうちどちらかが撃ち落としたのであろうシャンデリアが、無惨に砕け、しかしながら変わり果てた破片が、殊の外美しく月明かりに輝いている。
二人は屋敷の迷路に血の足跡を刻みながら戦闘を続けていた。
追う側と追われる側がどちらなどとは決まっていない。
何故なら、二人の体力の消耗や怪我の程度によって、不安定に攻守が入れ替わっているからだ。
今は、狼が優勢。
と言っても、彼もまた相当の深手を負っている。
壁に身を隠した狼は、息を切らしながら獅子を潜めた部屋を見張っていた。
顔、そしてその邪悪な心にも、落ち着きなど微塵も無い。
(おかしい……。奴は戦い始めた時に比べて銃撃能力も反応も桁外れに上がっている。何が起こってるんだ……)
黒い服装をしていなければ、その衣類は紅く染め上げられていることだろう。
「……つっ!」
四十五口径に撃ち抜かれた右肩の激痛に身を竦め、神の名を語る獣は屈辱感を味わっていた。
背を預けた壁に、血の掠れた縦縞が上から下へと描かれる。
ずり落ちるようにへたり込んだ彼は、間に合わない止血に世界をぐらつかせながら、それでも力への殺意を緩ませなかった。
「……返せ! 俺のミオを……!!」
――
その頃、
狼の目線の先にある部屋では、力がドアに寄り添うように血の海を作り、横たわっていた。
手も足も、飛んできたガラス片で切った顔も、紅く染まっていない箇所を探す方が早い程に、全身を血染めにして。
瞳を閉ざし、逆に開きかけた手には、残弾の尽きた銃を握ったまま。
――死んじゃうみたいだ……俺。
緑の絨毯が紅い血を吸い上げ、どんどん黒に飲まれていく。
――せめて……、せめて『祐也』を取り戻したかった。
眼の裏に浮かぶ過去は、ネガを巻き返すように鮮明に連なる。
初めて会ったあの日に、姫に手を出そうとして蹴られたことや、要と戦った時に自分を庇ってくれたこと、見夜都と出会った日に部屋で掴み合いの喧嘩をしたこと……――
その全部を思い起こしたらキリがない。
――ごめんな、祐也。それから……、
力は、絨毯のかかっていないフローリングに、動かない指を必死に動かして、自分の血で真っ赤な想いを綴る。
眼も開けずに、ちゃんと字の形をしているか分かりもしない、感覚の麻痺した指で。
今まで飽きるくらいに繰り返したのに、何度告げても、例え一生の時間を全て費やして告げたとしても、飽き足りない、その言葉を。
――みお
――あいして…
最後の文字は、『る』にも見えて、『ろ』にも似ている。
これは、終わりまで書けなかったのではなく、両方を含める言葉を姫に伝える為に、力が図ってしたことだった。
――『愛してる。だからお前も、どうか俺のことを、……忘れないで』
と、伝える為に。
「……」
死んでしまったかのように、動かなくなってしまった彼。
しかし、
――姫を、守らなきゃいけない……。
――死ねない……、まだ。
――死にたく……、ない。
――こんなとこで……死んで、死んでたまるか……!!
意識を失い、それでも彼女を守りたいという力の強い残留思念が、
彼ではない誰かを、
――姫……
力の中で、呼び起こしていた。
――愛してる
突然開かれた金色の瞳は、主の枷である鎖を引きちぎって目覚める。
――愛してる
……わけない。
――俺は愛なんて、
……いらない。




