ドーマの実力
「がははっ、さあ、やろうか」
「前と同じように、返り討ちだ!」
冒険者ギルドの表で、暴れん坊ドーマと勇者サトルが対峙していた。折角の絡まれイベントだし、見届けてあげるのも俺の役目だ。おっ、どうやら勇者の方から動き出すようだ。
「サモン!ウォータードラゴン+5!」
魔法陣と共に出てきたのは、半年前と同じウォータードラゴン。いや、限界突破を4回ほどして+5になっているな。半年もすればそれぐらいは強化されるか。対するドーマは…
「がは、さあ行くぜ!サモン!ダークドラゴン!」
「…なに?ダークドラゴンだって?」
ん?何やらサトルが驚いてるな。まぁ、ダークドラゴンって言えば、サトルのウォータードラゴンと同格のモンスターだからな。でも、サトルのドラゴンの方が限界突破をしている分、分があるはずだ。そこまで驚くことなのか?
「どうして、君がそれほどのモンスターを持っているんだい?」
「実力だ!実力!この俺にかかればこれぐらいのモンスターの捕獲くらいわけねぇ!」
「本当に?確かに初めて対峙した時もそれなりの実力はあったけど、いきなりAランクモンスターなんて…」
「もともと魔力はあったんだ。捕獲さえできればこっちのもんよ!」
「その捕獲が…いや、今はいい。とにかく今は君を倒そう!」
「言ってくれるじゃねえか!行くぜ!」
「来い!」
どうやら、始まるようだ。それにしてもAランクモンスターかぁ…ダークドラゴンのレア度はSR。つまり、SRモンスターはAランクのモンスターに位置づけられてるということだな。しかし、これだとサトルがプレイヤーなのかはっきりしないな。せめて、SRモンスターと言ってくれれば100パーセントプレイヤーと言いきれたんだが…っと、それより戦闘だ。
「やれ!ダークドラゴン!」
「ガードだ!ウォータードラゴン!」
ドーマの指示によって、攻撃を開始するダークドラゴン。しかし、ウォータードラゴンによってすべて防がれてしまう。
「ちっ!ならこれでどうだ!」
「無駄だよ!」
あの構えは、ウォータードラゴンと同系統のスキル、『闇龍の息吹き』だろう。でも…
「いけ!ウォータードラゴン!『水龍の息吹き』だ!」
「グオオォォ!!」
「うぉっ!?」
ダークドラゴンが放つと同時に、ウォータードラゴンもスキルを発動。二匹の攻撃は、一瞬拮抗したが、すぐにウォータードラゴンのスキルが押しはじめ、ダークドラゴンのスキルをのみこみ始めた。
「くそっ!さすがクソ勇者だな!いったん離脱だ、ダークドラゴン!」
「グォ!」
ダークドラゴンはスキルを解除し、素早く避け、なんとか回避した。やっぱりサトルの方が有利だな。
「こんなもんかい?ドーマ」
「へっ!まだまだぁ!!」
こうして二人はまたも衝突するのだった。
ーーーーーーーーーー
「はあ、はあ…」
「行くよ!これでとどめだ!」
「しまっ!」
あれからなんとか追いすがっていたドーマだったが、やはり限界突破の差があだとなり、今まさにとどめを刺されるまでに至っていた。
「『水龍の息吹き』!」
「グオオオォォォ!!」
ドガアァァン!!
体力が尽き、動けなくなっているダークドラゴンへスキルが直撃。そしてそのまま消滅。勝負ありだな。
「さあ、今回も君の負けだ。ドーマ!」
「…」
「潔く、アキに謝ってこの町から出ていくんだ!」
「…がははっ、あめぇな。これは作戦だ。お前の龍の体力を減らすために今までわざと攻撃を受けていた」
「なんだって?」
「今から見せてやる。…サモン!メタルダークドラゴン!」
「まさか!!」
ドーマの不穏な言葉と共に召喚されたのは、メタルダークドラゴン。黒銀色の鱗を持つドラゴンで、レア度は URの中位。コストは普通のURと変わらないけど、ある意味俺のメタスラと同系統のモンスターだ。
なんであんなのが、あのモンスターを持ってるんだ?
「さすがにそれは、捕獲したとは言えないね…」
「さぁな、どうだろうな?」
「くそっ!行け!ウォータードラ―――――」
ボンッッ!!
「えっ?」
「あめぇって言っただろう。このクソ勇者!」
サトルがウォータードラゴンに指示を出そうとしたがその前に、メタルダークドラゴンの一撃が、直撃。まだ、やられてはいないようだけど、今ので大分ダメージを負ったように感じる。さすがにURモンスターだな…
「ウォータードラゴン!」
「へっ、形勢逆転だな!」
「まだだ!『水龍の息吹き』だ!」
「グオォ」
「跳ね返せ!メタルダークドラゴン!」
決死の力でウォータードラゴンはスキルを放つ。しかし、体力にも限界が来ているためか、威力に欠ける。それ以前に…
「グガァァァァァ!!」
「なっ!」
メタルダークドラゴンはウォータードラゴンの放ったスキルを、片腕を振り下ろすだけでかき消してしまった。元々体力の限界が来ているうえに相手はURモンスター。まずいな、このままじゃあ…
「そのまま、ぶっ潰せ!」
「ああっ!!」
「グオオォォォォ!!」
スキルをかき消したメタルダークドラゴンは、そのままウォータードラゴンへ突撃。なすすべもなく、ウォータードラゴンはやられてしまった。
「ガアァ…」
「負けた…」
「がっはっは!勝負ありだ!さあ、俺にたてついたこと後悔させてやる!」
まさか…サトルの負け?予想外だこれは。ただの噛ませ冒険者だと思ってたのに、まさかここまで強いとは…これじゃあ、色々まず…あれ?
「負けた…ウォータードラゴンが負けるなんて…」
「がはは、よほどドラゴンが負けたことがショックだったらしいな!まあ、俺の方が実力が上だったんだよ!」
「確かに、ウォータードラゴンが負けたのは予想外だったよ」
「なら、潔く俺に―――――」
「でも、まだ負けてはないよ」
「ッ!?」
おおっと?なんか、サトルの雰囲気が…
「本当予想外だったよ。まさか、こいつを召喚することになるなんて」
「こいつだとぉ?」
「そう。今現在の俺の切り札だ。」
どうやらサトルはまだ、本気ではなかったらしい。焦らせんなよ…まぁ、SRモンスターしかいないのはさすがにおかしいとは思ってたけどね。
「は、はったりだぁ!」
「俺だってあの時の戦いから成長はしてるんだ。じゃあ行くよ。サモン!炎天の騎士ランスロット!」
勇者の本気の戦いが始まる。




