勇者の実力、そして…
炎天の騎士ランスロット。見た目は赤い鎧を身にまとった大きな騎士。レア度はURの上位。ここからさらにもう一段階進化でき、ARモンスターになることも可能だ。これなら…
「行け!ランスロット!」
「ーーーーー!!」
「止めろ!メタルダークドラゴン!」
「グオオォォーー!!」
手に持つ巨大な剣を振り下ろすランスロット。対するメタルダークドラゴンは自身の黒銀の硬い鱗でランスロットの斬撃をガード。先ほどと同じ攻撃と防御だが規模が違う。たった一撃を受け止めただけで周りに強い衝撃波のようなものが発生し、建物や地面が崩か…ちょっと待て。
「おいおい!こんな規模の戦い、町中ですんな!!」
「あっ、ごめん。じゃあ移動だ!ランスロット!」
「ーーーーー!」
「なっ!」
俺の言葉を聞いたサトルは素早く移動を宣言。それと同時に、ランスロットはメタルダークドラゴンを剣で吹き飛ばした。
「いや、だから町が…」
「大丈夫!町の外の方へ飛ばしたから!さあ、外でやるよ。ドーマ」
「ちっ、まあいいだろう。サモン!ウルフ!」
そのまま二人は王都の門前の方へと行ってしまった。それにしても、ドーマって奴、本当に魔力は多いんだな。URモンスターを召喚した後なのに、まだモンスターを召喚できるなんて…とりあえず門前に向かうか。
ーーーーーーーーーー
門前まで来てみると、すでに激しい戦いの真っ最中だった。何やら、見物人も増えている。
「やれ!メタルダークドラゴン!」
「回避だ、ランスロット!そのまま、攻撃!」
「くそっ!」
やはり、同じURモンスターでも中位と上位。性能に差が出て来るな。この差を埋めるのがプレイヤーの指示スキルなんだが、ドーマの指示はやれだの避けろだの簡易なものばかりでサトルとの実力を埋められそうにない。これ以上強力なモンスターも出せるとは限らないし、決着かな?
「これでも勝てねえのか…仕方ねえな。ここはいったん引いてやる!覚えてろ!」
「なっ!?今更逃げるのか!この臆病者!」
「がはは!違うな。戦略的撤退というやつだ!次はもっと強力なモンスターを連れてきてやる!」
「待て!っく!?」
サトルが追おうとするが、メタルダークドラゴンのブレスで身動きが取れないでいる。その隙に、ドーマは森の方へと消えていった。
「結局なんだったんだあいつは…」
サトルとは前にも戦ったことがあるようだが、今回はまるでモンスターを使って何かを試しているような感じだった。
「へっ、今回も勇者様の勝ちだ!」
「ざまぁみろ!ドーマ!」
「よくやった!勇者サトル!」
おっ、冒険者達が賑わい始めたな。今回はある意味、俺のせいで起きた事件だ。俺が中心とも言える。となると、目立ってしまうのは確かだしさっさとずらかるか。
「では、お疲れさまでーす…ぐぇ」
「おい、ちょっと待て」
「なっ、ザルテ!なんでお前が!」
「そんなの当たり前だろ。あんなに激しい戦闘音が聞こえて来ない理由がないだろ?」
「た、たしかに…」
「さあ、詳しい状況を教えてくれ。あっ、あと事情聞いたら、そのまま訓練だからな」
「そ、そんなぁ…馬鹿な…」
なんでこうなるの…俺にはもう平穏な日々は来ないのだろうか…
ーーーーーーーーーー
「はあ、はあ、はあ…がははっ、なんとかなったぜ…はあ、はあ」
あのクソ勇者に勝てないとふんだ俺は、一度撤退を計り、ある場所へと来ていた。
「おう!いるんだろ!出てこい!」
「んぁ?…ああ、戻ってきたかよ…よっこらせっ!」
俺が叫ぶと、上の方から声。そして、目の前に黒髪の男が降りてきた。
「ふあ~あ…で、どうだった?」
「相変わらず、木の上で寝てやがったか…それより話が違うぜ!前よりあの野郎、強くなってやがった!」
「へえ…それでおめおめと戻ってきたと?」
「当たり前だ!もっと強力なモンスターじゃあねえと…」
「ふーん、その勇者は何使ってた?」
「ああ?…たしか、ランスロットだったか」
「なるほど、他には?」
「知るか!他にはいなさそうだったよ!それより、もっと強力なモンスターを寄越せ!このモンスターじゃあまだ足りねえんだよ!これより強力なモン―――――」
サンッッ!!
「えっ?」
「ああ、お前もういいよ。十分に情報は集まったしな。お疲れさん」
「な、なにが…」
身体の感覚がおかしい…下半身に力が入らないというか下半身そのものが…なっ!
「下半身がなくなっ―――――」
「あっはは、ちょっとしたプレゼントだよ」
「なんだと。なんでこんな状態で死んでないんだ俺は!」
「だからプレゼントだって言っただろ?せっかく情報を集めてくれたんだ。報酬くらいはやらないと」
「ほ、報酬?」
「そっ、痛みを感じることなく安らかに死ねるっていう報酬」
「そんなもんいるか!今すぐ元に……かはっ!?」
なんだ?痛くねぇのに、血が…
「無理はしないほうがいいぜ?今お前は、すぐにでも死んでもおかしくない状態なんだから」
「ふ、ふざけ…るな…」
なんか意識が…くそっ…
「そろそろお休みの時間だ。さて、勇者の情報も集まったし、次は何をするか……」
「た、助け…」
「よし!次は、『太古の大森林』へ行こうか。あの森には伝説のドラゴンがいるみたいだし、もしかしたら例のモンスターかもしれない」
「だ…誰…か」
「ん?まだ生きてたのか。よし、そろそろいいよ。ロキ、解除だ」
「かはっ!?」
な、なんだ?急に痛みが…いや、痛みなのか?体の感覚がわからねぇ…だめだ、意識が……
「それじゃ、ばいばーい!」
俺が最後に見たのは、黒髪の男が霧がかった何かと飛んでいく姿だった。その後は……




