不穏な動き
暇だ…。なんでこう暇なのかな?僕は一刻も早く『ボルク』を落としたいのに…
ここ、闇の帝国『アベルクス』の王城内で現在僕たちは、会議を行っている。
「それでは次に光の国『セべステル』についてですが―――――」
「『セべステル』の侵攻は―――――」
いちいち関係ない話ばかりで、暇でしょうがない…それもこれも、いきなり現れたあの勇者のせいだ。あいつが現れなければ、今頃『ボルク』は僕のものだったのに…
「では、『ボルグ』についてですが―――――」
「ねぇ…その『ボルク』なんだけどさ」
「はい、何でございましょうか?」
「いつになったら休戦協定が解けるわけ?」
「はっ!今はあの勇者どもによってこちらの戦力が少しばかり足りませぬ。休戦をとくにはもう少し、戦力の増強が必要かと…」
「はあ、それじゃあ仕方がないのか…あーあ、早くしてよね。僕にも我慢の限界はあるからさ」
「ッ!!わ、わかりました。では、続いて『ウィンベル』ですが―――――」
まったく。あの忌々しい勇者のおかげで、退屈な日々が続いてしょうがない。なにか、面白そうなことはないのかなぁ…
「そういえば最近『アーセウス』で龍の出産が起きるって噂が流れてたな」
「なんだって!サタナス!その話詳しく!」
何やら、サタナスのやつが面白そうなことを言い始めた。良い暇潰しになるかも!
「おう!えー、なんでも『アーセウス』の『太古の大森林』にいると噂されているスピリチュアルドラゴンが、千年に一度の出産をするらしい。」
「それはすごい!ぜひ、そのドラゴンを僕の物にしたいね!今すぐにでも部隊を整えて…」
「いけません!ただでさえこの前、ルシフの部隊が大幅にやられて戦力が低下しているのに、軍を使うなど…」
「もー、デウスは相変わらずうるさいなー。なら、僕が直接取りに行けば…」
「それもなりません!この国の主であるあなたが直接など…」
「それじゃあどうするの?その龍、何が何でも欲しいし」
「ちょいといいか?」
「ん?なんだい、サタナス?」
「この話はそもそも俺がしたことだ。俺が取りに行くのが筋ってもんじゃねぇか?」
「なっ!何を言い出すのです。サタナス!あなたも大事な戦力の一人、七天魔将の一人なんですよ!?」
「おいおい、デウスよぉ、俺がそう簡単にやられると思ってんのか?ルシフだってこの前本気で戦ってなかったんだろう?」
「当然だ。この俺様があんな勇者ごときに、本気を出すとでも?あの時は、持ってきたモンスターよりやつが上回っていただけ。俺様が本気を出せばチリも残らなかっただろう」
「なっ、こいつもこう言ってるし」
「なっ、ではありません!そもそもルシフ!あなたがあの時油断さえしなければ『ボルク』は落ちていたのです!」
「確かに、勇者が思っていたより強かったのは事実。だが、俺様は負けておらん!」
「まったくあなたは!」
「はいはい、二人とも落ち着きなさーい!まず、デウス。私もサタナスが出るのはいい考えと思ってるわ」
「なっ!あなたもですか!レヴィア!」
「待ちなさい待ちなさーい!ちゃんと理由もあるわ。まず、サタナスがやられるとは私も思わないわ。それに、今この軍に戦力の増強が必要なのも事実。なら、そのスピリチュアルドラゴンを手に入れればいいのよ」
「しかし、それだと敵にばれてしまう。今は一様休戦状態なのです。下手な動きは…」
「おいおい、何も大部隊で攻めようなんて考えてるわけじゃないんだ。俺の最も信頼する数人の部下を連れていくくらいだ」
「ねっ、これなら大丈夫でしょ」
「むう…」
「おいらも賛成だぞぉ」
「ベルゼまで…まあいいでしょう。スピリチュアルドラゴンが手に入れば、戦力の増強になるのも事実です。ただし、スピリチュアルドラゴンの他にもモンスターは手に入れてくるのです。戦力が欲しいのも事実なんですから。それと、『アーセウス』の奴らにも感づかれないように!」
「わかってらぁ、俺だってそれぐらい考えてる」
「うんうん、デウスも納得したみたいだし、サタナス頼んだよ!」
「まかせとけぇ!」
「はあ…他の方々も今は戦力の増強に力を入れてください。とくに、ルシフ。あなたの部隊は壊滅的だったのですから」
「わかっている」
「それでは、会議に戻りましょう。続いて、今出た『アーセウス』についてですが―――――」
いいね!いいね!面白くなってきた!退屈で仕方がないと思っていたけど、こんなことになるなんて!
スピリチュアルドラゴンが待ちどおしくてたまらないよ。他にも、面白そうなモンスターがいたら、手に入れて戦力増強させて、他には…
「これでしばらくの間は退屈しのぎにはなるね」
「何かおっしゃいましたか?」
「ううん、なんでもないよ!続けて」
「はい、では―――――」
絶対にスピリチュアルドラゴンを手に入れてきてね、サタナス。他にも戦力を集めたら、今度こそ『ボルク』を落とす。




