ウルフの森
なんとかコロモ村に戻らずに済んだ俺は今、エルバと共にウルフの森を歩いていた。
「いいか、アキト。ここのモンスター達はなかなかやっかいだから俺のそばを離れるなよ」
「うん、しっかり付いていくよ」
「よし…アキトはゲルガ村に届けたいものがあるんだったな?」
「うん、そうだけど?」
「それって、いったい何なんだ?」
「あっ、と、その…」
早速エルバから面倒なことを聞かれてきた。まだ、考え中なのに…
なんて答えるべきか。
「えーと…あっ、ゲルガ村に届けたいのは薬なんだ」
「薬?」
「そう、薬。あの村には俺の知り合いがいて、結構ひどい病気にかかったらしいんだ。それで、いてもたってもいられなくてここまで来たんだ」
「そうだったのか…病気、治るといいな」
「ありがとう…」
俺は涙ぐみながら、エルバに感謝の言葉を言う。
我ながら、ここまでの嘘をよく言えるもんだと思う。
「絶対にお前をゲルガ村に届けてやるからな。っと、出てきたか…」
エルバの向く方に目を向ければ、数匹のモンスターがいた。
「あれが、ウルフ…」
「そうだ、気を付けろよ」
言われなくても分かっている。モンスターを召喚すれば簡単に倒せるが、ウルフのステータスは今の俺より断然上だ。強さを隠している俺からすれば、エルバが頼みの綱ということになる。お手並み拝見といこう。
「サモン!グリフォン!」
エルバの声と共に魔法陣が出現。そこから出てきたのは、鳥の上半身と獣の下半身を持つグリフォン。
「へぇ…」
グリフォンはモンサモでSRの中位に位置するモンスターだ。さすがに、エルバの隊長が認めてるだけはある。となると、あの隊長さんは少なくともSRの上位以上のモンスターが出せる可能性がある。まだ、モンスターのレベルや、人の基本ステータスがわからないが、なんとなくこの世界のモンスターの基準は分かってきた。とりあえず、グリフォンの戦闘を見てどれくらいのレベルか予想してみるか。
グリフォン(SR)
LV??
コスト17
体力???
魔力???
功力???
防力???
スキル 獣魔の風
「いけ!グリフォン!奴らを倒せ!」
「グウ」
エルバが指示を出すと、グリフォンはウルフたちの元へ猛スピードで近づき自分の大きな爪でどんどんと引き裂いていく。
「キャイン!」
あっという間に、最後の一匹を倒したグリフォンはエルバの元へ戻ってきた。早すぎだろ。これじゃあ、レベルの予想が立てずらい。それより今は、エルバを褒めておくか。
「すごい!やっぱりエルバ兄ちゃんは強いんだね!」
「ははっ、アキトだって頑張ればこのくらいの強さになれるさ」
「本当!?」
「ああ、俺が保証しよう!」
「やった!俺頑張って最強のモンスター使いになるよ!」
「その時は、俺達『アーセウス軍』が歓迎するぜ」
「考えておくね!」
まぁ、もうすでに最強と言ってもいいんだけどね。だからって軍隊に入るわけでないんだけど。よし、この調子で戦闘をエルバに任せつつ、いろいろ話を聞いておくか。そういえば…
「なあ、エルバ兄ちゃん」
「どうした?」
「兄ちゃん達はどうやってモンスター召喚しているんだ?」
俺はエルバがモンスターを召喚するとき、当然ではあるが、スマホのような機械を使っているようには見えなかった。俺の場合は、モンサモのアプリを開いてモンスターの召喚を押せば、簡単に召喚できる。だが、エルバや、姫様を見ている限りでは何かを使っている形跡はなかった。となると、あの『サモン』という言葉がキーになるのだろうか?
「どうって…まあ、召喚の間や捕獲して手に入れたモンスターと契約をして『サモン』とモンスター名を言えば普通に召喚できるぞ。ただ、魔力がないと召喚できないが…」
「へえー、召喚の間って?」
「なんだお前、召喚の間を知らないのか?珍しいな…たいていの子供は親から教わっているはずだが…」
「うっ、たぶん言っていたんだろうけど真面目に聞いてなかったかも…」
「駄目だぞ、こりゃあ最強の道から遠のいたな」
「うう、そんなー!」
「まあまあ、落ち着け。俺が教えとくから。今度は真面目に聞くんだぞ」
「うん!ありがとう!」
「よし、召喚の間っていうのは、村や町など様々な場所に設置されている、いわゆるモンスターを召喚する場所のことだ。モンスターは有無を言わさず強制的に召喚者と契約される。そして、肝心の召喚方法は…」
「うんうん」
「自分の魔力とモンスターの魔石が必要になる。召喚の間には必ず魔法陣が敷かれていて、そこにモンスターの魔石を置き『サモン』と唱える。すると、魔力が消費されてランダムでモンスターが召喚されるんだ」
「へえー!」
エルバから怪しまれかけたのを誤魔化し、この世界の召喚方法を聞き出せたが、『召喚の間』とはいわゆるモンサモでいうガチャのことなのだろう。俺の場合はポイントを支払うだけでモンスターが召喚できるが、この世界では、自分の魔力とモンスターの魔石が必要ということだ。俺もその方法で召喚できるのかな?
「まあ、ささげるのは魔石だけでなくて、この世界に存在する宝玉と言われる石を使えばより強いモンスターが召喚されるらしい」
「その宝玉はどこで手に入るの?」
「それが、存在はしているらしいが、どうやって手に入れるかまではわかっていないんだ。噂では、ある程度の強さを持つモンスターを倒すとそのモンスターが落とすというらしいが…」
宝玉はモンサモにも存在していたものだ。ガチャには、ノーマルガチャとレアガチャの2つがありレアガチャをするために宝玉が必要だった。このことから召喚の間でも、宝玉を使えば強力なモンスターを召喚できるのは事実なのだろう。
「まぁ、普通の魔石を使って強力なモンスターが出たという事例もあるから、わざわざ宝玉を手に入れようなんて輩はそうそういない。現に、俺のグリフォンも召喚の間で召喚されたモンスターだしな」
「そうなんだ…ありがとう。いろいろわかって、助かったよ。」
「こうゆうことはしっかりと聞いておくんだぞ」
「うん!」
召喚の間について、知ることが出来たのは大きいな。いろんな場所にあるようだし、今度試してみるか。あと、召喚する際には『サモン』と唱える必要があるみたいだし、この方法で召喚できるかも試しておこう。召喚できなくても今度からは言葉だけでも言っておけばいい。さてさて、他にもいろいろ聞き出しますか。
「えーと、じゃあ次はねー」
「まだあるのかよ…」
そして俺達はいくつかの戦闘をこなして、ついにゲルガ村へたどり着いたのだった。




