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ゆるキャラであることを有効に活用してちょっと儲けようと思った策略は、俺が調子に乗ってしまったことでエミリアの怒りを買い失敗に終わってしまったわけだ。
ゆるキャラのキャラクターショーを思いつき、新しく覚えたスキル「創造」で法被やサイリュウムを作り、さらにマオ君グッズも販売することで収入は鰻登りだった。
法被を作るには布が必要な為、平原より先にある森林にまで足をのばし巨大な芋虫のような魔物から吐きだされる糸を入手したり、サイリュウムの材料となる機械部品をエリアボスであるブルデュエルからいただいたりとそれなりに大変だった。
尚、エリアボスは倒すと一定期間が過ぎた後、またどこからか現れるみたいだ。
ゆるキャラ特有の魔性の魅惑とでも言えばいいのか、同じ種族のゆるキャラに対する魔物、魔族たちの愛情度というか何というか、とにかく饒舌に尽くしがたい何かが彼女たちを駆り立てた。
迫る女魔族たちの誘惑に抗えなくなってしまった俺が悪いのだ。後でエミリアにはしっかり謝って許してもらうしかないな。
というよりあれだな、最後男衆が戻って来ていたな。戻ってくる前でに結構時間がかかったみたいだ。
まあ、俺みたいにひとっ飛びという訳にはいかないだろうし、ずっと歩きっぱなしって訳でにはいかないだろうし、野営や食料だって必要になるはずだ。そりゃ戻ってくるまでにそれなりの時間はかかるよな。
そう結論付けたところで俺は立ちあがる。
全身に感じていた鈍い痛みも消え去り四肢の動きも問題ない。これならばシャーニッド村に帰るのにも支障ないだろう。
時刻は太陽が傾き地平線に沈みかけている。つまり夕刻だ。夜は魔物の活動が活発になるしどこか洞穴でも見つけて一夜を明かしてから村へ帰ろう。
荒野には所々に大きな穴が開いていて人一人が通れる位のそれなりに大きな穴から土竜一匹入れるかどうかという位の小さな穴が開いていて、それは大なり小なり傾斜がついていて地下へと伸びいた。
何のためにそんなものがあるのかは知らないが、村人はよく休憩所として使っているようだった。
俺は知っている中で一番大きい穴目指して移動を開始した。
大きい穴ならばゆっくり寝る事が出来るし、村人が野宿しやすいようにと色んな道具が放置されているからだ。
穴は魔物達が入ってこれないように魔除けの石が置いてある。
ぶっちゃけて言うと、これの材料はこの辺を仕切っているエリアボスであるブルデュエルの身体のパーツから作られている。
なのでアイツより弱い魔物は寄ってこない・・・らしい。
だからといってブルデュエル本人が来る事も無い、便利アイテムみたいだ。
目印を頼りに地面に空いた穴を見つけ入る。
中は当然暗く、見通しも悪い・・・はずだ。
だが今日に限っては奥の方に明りが灯っている。
あの光はランタンの光で間違いないだろう。先客がいたとは驚きだ。狩りに出かけるのは最近では俺だけだったし、女性陣は今日、マオ君のショーがある為、外出はしていないはずだ。
戻ってきた男衆の後発隊か?
この穴は村人なら誰しも知っているし戻ってくる途中で野営するのに寄ったのか。
挨拶くらいはしないとな。
そう思った俺は奥へと進んだ。
「こんばんわ。御一緒しても?」
俺が話しかけると木箱に腰かけていた人物が振り返る。
見た目はそう、豚だった。
目つきの悪い目に、天を衝くように2本の牙を伸ばした金髪のリーゼントヘアの豚さんだった。
格好もこの世界にもあるのだろうか、学ランみたいなものを着ている。
「お、ここの持ち主か?ちょっとお邪魔してるぜ?」
タイショーくんみたいな声しやがって、カッコいいじゃねえか。
なんだ、他所モンか。俺と同じじゃないか。
「いえいえ、ここは村共同の休憩所みたいなものですから。お構いなく」
「そうか、そいつァありがてえ。ここらに来たのは初めてでな。勝手に邪魔するのは悪いかと思ったんだが、来て正解だったぜ」
「そうだったんですか。観光・・・ではないですよね?こんな田舎まで何をしに?」
「ん?ちょいと探し物を・・・な」
なんか含みのある言い方だな。まあ気にしたら負けか。格好の割には意外と良いヤツっぽいな。
「探しものですか。大変ですね。俺はこの先にあるシャーニッド村でお世話になってる幸雅って言います」
「コーガか。オーケーオーケー。俺はボアってんだ。よろしくな」
そう言いながら手を差し出してくるボアと握手を交わす。
「そりゃそうとおめえ、その顔はどうしたんだ?誰かと殴り合いでもしたのか?」
久々だな、顔の事で突っ込まれるのも。村の人は完全に耐性付いちゃっていたからな。
「いえいえ、元々こういう顔の魔物なんですよ俺」
「マジか!?お前みたいな魔物・・・いや、魔族か。見た事ねえな」
「世界は広いですからね。探せば見つかりますよきっと」
「これでも色んな世界を回ったつもりだったんだがな。俺もまだまだってことか・・・」
遠い眼をしだしたボアに俺はポーチに入れておいた保存食を取り出すと差し出した。
「良かったらどうです?お腹減ってませんか?」
豚だけに、という言葉を飲み込んで差し出したビーフジャーキーをボアは嬉々として受け取った。
お互いにビーフジャーキーを咀嚼する音以外、無音の世界に耐えかねたのか、ボアが徐に話し始めた。
「なあ、少し前にこの辺で強えぇ奴見かけなかったか?」
「強い奴ですか?」
「ああ、今日ここに来るまでに強力な魔力を感じとってな。あの魔力量、久々に身体が震えたぜぇ」
震えた言っても武者震いの方ですか。目がバトルジャンキーっぽい目してますもん。
強いヤツねえ・・・。エリアボス位しか思いつかんのよね。
今日感じた魔力はきっとエミリアのことだろう。俺をぶん殴った時の威圧感と魔力量ハンパなかったもん。
でもそれを会ったばかりのコイツに喋っていいものだろうか。ちょっと悩むな。
「探しているものってその強い人のことですか?何か特徴とか無いんですか?」
「そうだ。特徴か・・・とんでもなく強くて三つ目らしい。」
認めやがったか。三つ目ってことはエミリアの事じゃないのか。
「見つけて、どうするつもりなんですか?」
「そうだな。戦ってみてえ。強え奴と戦ってぶん殴る。んで強くなる!それが俺の種族本能だからな。こればっかりは抑えが利かねえんだ」
種族本能?初めて聞いたな。何となく意味は理解できるが、もし探している人が見付からなくて近くにいたエミリアの魔力に引き寄せられてそのままバトル!
なんて風にはさせられない。エミリアには会わせる訳にはいかないな。
「この近くにブルデュエルっていう強い魔物が出現するんです。そいつのことでは?」
俺がそう言うとボアは首を横に振った。
「違え。あんな三下と一緒にするんじゃねえ。俺の探してるやつはもっと強え奴だ」
目をギラギラさせながらビーフジャーキーを噛み千切り低い声で呟くボア。エリアボスを三下扱いとはね。ボンタンを着た猪八戒にしか見えないが強い魔族なのか?それほど魔力は感じられないんだが・・・。
俺の知り合いに三つ目のやつなんかいないが、もしかするとシャーニッド村へ帰り着いた男共の中にいるのかもしれない。
何にせよもし俺の知り合いの誰かのことをいっているのであれば止めに入るしかないな。
そう心に誓いながら俺はボアと共に一夜を過ごした。




