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私は、見たことのない『声』に出会いました。

 あの客の周りには小さな小さな『声』がまとわりついていた。

 『声』は大きい声であればあるほど大きなものになるし、小さければ小さいほど、小さなものになる。大きい『声』も不審だが、小さいのもそれはそれで不審だ。

 実際、彼らの『声』からは公爵をに爆弾を仕掛ける旨が聞き取れた。


 あのプレゼントのからくりはそこまで難しいものではないだろう。

 あれの大部分の機構は、最近市井で流行っているという『びっくり箱』だ。手に入りやすく単純な構造のそれに何か仕掛けをして爆弾として利用したのだろう。

 ——けれど、もしかしたら命までを奪うものではなかったのかもしれない。

 半ば肩透かしを食らったような気持ちで地面にへたり込む。自分で思っていたよりも緊張していたらしい。


 深くため息を吐き出していると、背後から足音が聞こえてきた。屋敷から庭園に繋がる道は大理石でできていて足音がよく響く。

 振り返ると息を切らしたヴァレンツァ公爵がいた。整えられていた髪が少し崩れてしまっている。


「——君は!」


 セチーリアは小さく目を見開く。

 『口無し公爵』が口を開いた!誰にともなく拍手をしたい気持ちになる。

 初めて聞いた公爵の声は、落ち着いていて、しかし芯のあるハスキーボイスだ。これは、なかなかいい声なのではなかろうか。


 公爵はそんなセチーリアの感嘆などお構いなしに言葉を続ける。


「君は宴会の途中で一体どこに行くんだ!早く戻るぞ!」


 公爵がそう言うと、見慣れた『声』が発生する——はずだった。


「——え」


 普段紙のように白く細い『声』が、まるで溶け焦げた飴のようにどろっとした塊のようになっている。『声』が羽をはためかせる度、飛び散った欠片がぼとりぼとりと芝生に落ちる。


 セチーリアが呆けているうちに、その『声』がこちらによってくる。


 え?


 どうしてだろう、手を招いてもいないのに。


 その時のセチーリアが最後に見たのは、眼前にまで近づいた異形の『声』と、青ざめた公爵の顔だった。


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