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忘却の彼方への旅  作者: JunJohnjean
第13章 帰国
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日本列島




 恒星ベガに向かっていた女帝マザーの宇宙船、ブラックスペース・デヴィルは目的の惑星を特定し、その周回軌道にあった。高分解能レーダーでの撮像では当惑星の地表には山があり海があり、住居も散見される。地中には地上と同じく河川があり湖があり、その上、大規模な居住区が見られる。女帝マザーは黒い影に先ず、偵察するように命じた。


「偵察致しまして、只今、戻って参りました。」と黒い影。

「申してみよ。」と女帝。

「惑星名でございますが、ベーダ星と称し、三種の住民がおります。」

「三種とな?」

「数千の当惑星住民、他惑星からの移住民が数百。天女というものが数人。」

「天女?」

「他の天体から来た模様でございます。これら天女に近づけば遠ざかり、映像に残さんとするもスルリと抜け落ちてしまうのでございます。」

「左様か。移住民とは?」

「他の恒星系からの移民で、科学的にも教育的にもベーダ星が優れているということで、移民を志願してやってきたエルク星人でございます。」

「して、ベーダ星の統率者は?」

「天帝という者がおりまして、側近に数十名、臣下を侍らし、絶対君主制の形態。軍隊、兵器は皆無。教育に傾注しているようでございます。」

「制圧はたやすいの。科学技術の水準は?」

「生命科学、遺伝子工学、バイオテクノロジーが発達しているのが特徴的でございます。」

「教育に力を入れているようじゃが、無用の長物。洗脳に限る。二足す二は五と教えるのじゃ。異議を唱える者あらば抹殺するのみ。黒い影よ、貢ぎ物を天帝に差し出すように申し付け、日の入りまでに返答なくば、殲滅あるのみと伝えよ。」


 使いの者として送られた黒い影は天帝に謁見する。

「我が主人、女帝マザーは宇宙で最強の軍事力を有する。服従とあらば貢ぎ物を差し出されよ。逆らわば、壊滅は必定、貴公の惑星は焦土と化す。」

「暫くの猶予を与えられよ。」と天帝。

「ならば、日の入りまでに返答されたし。」と言い残して黒い影は消え去る。


「天女よ、そのほうたちは織姫を伴うてすぐさま、白鳥座のデネブに退避せよ。」と天帝。

「父上君のお傍を離れとうございませぬ。」と織姫が哀願する。

「それは罷りならぬ。我が帝国領が灰燼に帰しても千年、万年後には草木も生えよう。我が命は我が民と共にあり。」


 日の入りも近づいた頃、天帝は服従を拒否し賜う。

「不憫な者よ。」と女帝は呟いて、「オゾン層を破壊し気候変動を生ぜしめ地表を焼き尽くそうぞ。地下に居を構える者、生き長らえられまい。灼熱と極寒に見舞われるがよかろう。」


 宇宙船からの発射物が大気圏に突入し暫くして閃光が走る。そこかしこに鉄塊が飛散し落下するにつれて火の玉となり炸裂する。ベーダ星の上空はやがて不気味な色を呈する。

「黒い影よ、地球に転生せし信太の監視を怠るではないぞ。」と女帝は付言する。

「御意にござります。」


 ベーダ星を従えている恒星ベガから二十五光年離れた地球の一角、日本列島に目を遣ると日を追って桜前線が北上するのがわかる。信太は京都の下宿を引き払って大阪の実家に戻り、南回り世界半周の旅の計画に余念がない。桜が開花し始める三月末、同期生は社会へと希望を胸に抱いて大学を巣立って行った。


挿絵(By みてみん)

桜の開花


 この度の「忘却の彼方への旅」は最終のシーンを迎えるに至りました。十万字余りで完成に十分だと思っていたのが、場面に場面を付け加えて行くとかなりの枚数に達してしまい、本ストーリーを終えるのにはまだ倍の紙数が必要。しかし、ここで一旦、区切って1、2年後の「続・忘却の彼方への旅」の投稿に取り組みたい。その間、戯曲や短編小説を執筆して参りますので、何卒、ご支援の程を宜しくお願い致します。

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