48.ジャイアントファングアースワーム戦 その3
俺を越えて、彼女に真上から襲いかかる巨大ミミズ。
彼女に食いかかろうと、
上から落ちてきたその巨体に、俺は全力で体当たりをする。
勢い良くぶつかった俺達は、それぞれ弾かれるように離れる。
その衝撃でギリギリ彼女の奥の地面に衝突するミミズは、
そのまま黒い土に潜っていく。
ミミズの黒い大地への突入の衝撃で、
勢い良く盛り上がった土に
跳ね上げられるように彼女が宙を舞う。
体当たりの衝撃で地面に倒れていた俺は、
すぐに立ち上がり彼女の元へ走る。
まともに受け身を取れずに、
黒い泥状の地面に落ちる彼女。
モリを一旦手放し、その彼女を抱え上げすぐに走る。
地響きが大きくなりながら近付く。
ミミズが此方に向けて出るタイミングに合わせて、
大きく跳躍してミミズから距離を取る。
ミミズが上昇中に腕の中の彼女を確認する。
右手の武器は手放していない、意識は有るようだ。
四肢もしっかり有る。
キズはアザはかなり多いし、
表情もキツそうだが、激しい痛みを訴えてはいない。
武器を持たない左手で顔の泥を拭い、
必死に目を開けようとしているが、上手く開かないようだ。
あの匂う水が目に入ったのなら、かなり痛むだろう。
早めに流水で洗わないとマズそうだ。
上空から来る汚水のブレスを、
彼女を抱えながら全力で避けて走る。
彼女が必死で目を開けようとしているする顔の目の前で
彼女にハンドサインを出す。
"撤退"
なんとか確認できたのか、
悔しそうに顔を歪める彼女だが、うなずいてくれた。
ミミズの上空からの噛みつきを、
回避してすぐに、彼女を地に立たせ、
背中を押して走らせる。
足場はかなり悪いが、障害物は無いので、
少しでも目が開けば、
走ることはできるだろう。
彼女を離脱させたら、
すぐに両腕で思いっきり地面を叩きまくる。
目の無いミミズが俺達を襲うのは、多分だが音を目標にしてだ。
熱だとしたら、土の体の俺への位置特定を説明しずらい。
他の要因かもしれないが、
俺の存在を大袈裟にアピールできればそれで良い。
彼女か俺か、どちらかを狙うであろうミミズ。
その注意が此方に向くように必死で地を叩く。
地響きが大きく、明らかに俺へと近付く。
食い付いてくれた。
それをすんでで交わす。
相手もだろうが、此方も対処に慣れてきた。
地中からの攻撃を交わし、
相手のブレスがまた彼女を狙わぬように、
相手の胴に腕で攻撃を加えて、注意をまた俺に向けさせる。
ブレスのモーションを確認して、彼女と反対側、
モリを手放した方へと走りながらブレスを交わす。
モリを手にした所でミミズの噛みつきが来る。
ギリギリまで引き付けた大口を、跳ぶようにして交わす。
そろそろ終わりにしよう、、、。
エネルギーの石も消費し過ぎているし、
辺りもかなり暗くなってきている。
本気で幕引きしなければ、こちらがもたない。
ヤツの動きを止め、モリで急所を突き刺そうと思っていたが、
パワーもサイズも負けているし、
相手をぶつけて止めるような
障害物の無いここでは、到底不可能だ。
急所の位置も特定できていない。
モリでの攻撃は諦めて、
モリを右腕の中に埋めて行く。
斬撃、刺突、打撃、
ミミズの体は、そのどれをも受け付けない体のようだが、
それは奴が常に動いていて、攻撃が芯をとらえられないからだ。
動きが止められれば、結果は違うはずだ。
だが、相手の動きを止められない、、、。
ならば、、、
動きが止められないなら、、、
攻撃のインパクトの瞬間が、
やつのスピードと防御力を超えれば、
確実にダメージが通る筈だ、、、。
俺のこの体、ゴーレムの体、、、。
今、追い風の魔法がまだ効いているが、
ゴーレムのこの体では、その速度を出せる自信が無い。
だが、俺には、、、。
魔法が有る、、、。
彼女が扱うような、
火球や追い風のように、
目に見える形では、顕現しない俺の魔法だが、
彼女はそれを魔法と同じだと認識していた。
だが、この顕現しない俺の魔法にも、今は用は無い、、、。
彼女から、、、人からしたら失敗であろう、
魔法を圧縮した時の爆発。
その爆発を使えば、ヤツの体表を優に越える攻撃を繰り出せるはずだ。
俺はイメージする。
右腕に埋め込んだ漆黒のモリを。
そのモリを内部にゆるい螺旋の入った大筒に変える。
俺はイメージする。
胴体の中に残る、
彼女からもらった金属を
その形を、巨大な大砲の弾丸のように変える。
エネルギーの石は残り5個。
その一つを使い、腕の筒と弾丸の整形をする。
弾丸は2発にする。
本当なら一撃でしとめたいのだ、、、。
だが、今回の攻撃は速度と貫通力も重要だ。
弾丸は大きすぎては意味がない。
2発有る。
その心のゆとりは、思い切りの良さにも繋がる筈だ。
手首の辺りから、二の腕いっぱいにまで伸びた太い筒。
その周りを、土を更に硬質化させて補強する。
左手で腹から出した鋼色の弾丸の一つを右の肩口から挿入して、
漆黒のバレルに装填する。
その弾丸の真後ろに回路を密集させて構築する。
エネルギーの石を2つ使用して、
体内のエネルギーを満タンにしておく。
だいたいこれで準備は良いだろう。
俺の準備が整ったのを知らずに、地中からの地響きが近付く。
フェイントも何も無い地中からの攻撃を交わし、
すぐに地中から天へと昇るミミズの体に近付く。
ヤツの体の中心に、右腕の中の漆黒のバレルを向け左手を力強く添える。
鋼色の弾丸の真後ろ、肩の回路にエネルギーを極限まで溜める。
その溜まりに溜まったエネルギーを、
俺は一気に圧縮した!!!
「ドッダァーーーーーーーーーーーーーーン!!!」
「バッブシュ!!!」
最初の爆音と共に、俺の右肩が激しい光を放ちながら吹き飛び、
俺もその衝撃に左後方へと吹き飛ばされる。
俺の右腕の土が宙を舞いながら四散。
その中から漆黒の花を咲かせるように、
壊れたバレルが現れる。
すでに鋼色の弾丸は、俺の認識できる範疇に無く、
それが通過したであろうミミズの体は、
荒々しい断面で上下に別れ、
どす黒い血液を撒き散らしながら、
未だ天へと上っていく、、、。
「ジョギギギギギヤヤヤヤアアアーーーーーーー!!!!!」
その後、少し遅れて上空からミミズの絶大な音量の叫びが辺りに響きわたる。
ミミズの下方は上昇を止めて、
どす黒血液を辺りに振り撒きながら、
激しくのた打ち続けて、剛音と共に黒い大地に倒れる。
それよりもいっそう激しくのた打ちながら、
短くなったミミズの上部が、
今も激しい叫びを上げながら、
鋭い放物線を描いて大地に激突する。
ミミズの下部は、
切った蜥蜴の尾のように、
同じ周期でしばらくのたうちながら、
どす黒い血液と黒い土を辺りに撒き散らしていた。
俺は、ゆっくりと立ち上がり、
ミミズの上部の方へと歩んで行く。
俺の体の右側は右胸を一部抉るように吹き飛び、
それを支えていた左腕も吹き飛んでいる。
かなりの数のバクテリア達と繋がりが途絶えている。
それでも、今、巨大ミミズに止めを刺さなければ、、、。
、、、俺たちがやられる、、、。
その一心で、足を動かした。
ミミズの上部が落ちた所へと向かう。
辺りのどす黒い血液と黒い泥を巻き上げながら、
もがき苦しみ続ける短くなった巨大ミミズ。
大地と繋がっていた下部を失って力が入れられないのか、
土の中には戻れないようだ。
そのミミズの後方から近付く。
そして、弾丸でできた傷口を確認する。
ヤツのた打つタイミングを計り、
一気にその傷口へと切り込む。
そして、ヤツの傷口の中に、短くなった左腕を思いっきり突っ込む。
その痛みで激しい悲鳴を上げる大ミミズ。
突っ込んだ腕から奴を食うようにイメージを使う。
更に悲鳴を上げて、どす黒い血を吐血しながら汚水のブレスを
のた打ちと共に、辺りにばらまき始めるミミズ。
その暴れる体を、肩で抑え込みながら、
俺は、左腕を奥へ、更に奥へと突っ込み、食事のイメージを続けていった。
悲鳴が天上知らずにボリュームを上げて行き、
雨なのか、泥水なのか、ミミズの血液なのか、、、
それらが降りしきる中、俺はミミズを食い続けた、、、。
体の土の量が元に戻り、
キャパを越えた土をボロボロと辺りにこぼしながら、
俺は更にミミズを食い続けた、、、。
やがて、
激しく悲鳴を上げていた巨大ミミズも、、、。
のた打ち続けていたミミズの下部も、、、。
あんなに強く降りつけていた雨も、、、。
すべてが静まり返っていた、、、。
未だ晴れぬ厚く黒い雲と、その奥の暗い夜空の下、、、
草木の生えぬ黒い大地、、、
泥と返り血を浴びた真っ黒な土人形、、、
離れた所に、傷付いた漆黒の剣士、、、
そして艶やかな漆黒の金属の花が、そこにひっそりと咲いていた、、、。




