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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
戦わなきゃ、みんなのために。
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第五十八話 - 揺らせ現実、奇跡を振り下ろせ

草原に聳え立つ、巨大で透明な固まり。

ズムムと体を揺らし、変形させ始める。


「来る!」


その柱から、6本、7本…

巨大で透明な触手が生えて、重力で振り下ろされる。


「ブレイズバーン!」


私はロープをしっかり抱え、ソルティさんが魔法を放つ。


外側から内側に収束するように降りてくる触手達を

タイミングを見計らい近付きながら外側に躱した。


その間に内側の触手に当たったはずの魔法は、瞬く間に消火された。



【ギルドから連絡だ。

危険すぎる、戻れと。】


分かってる。でも放置したらギルドまで来る!


「ソルティさんも危険だし、長期戦はしない!

あれを…あれを一発放たせて!」


私は目を閉じ、イメージを伝える。


+飛行!+


【分かった、これでダメなら逃げるんだ。】


私は昇る、触手も上る。

雲の近くに足を付けると、寒くて震えが止まらない。


一直線に、私に向かう本体と触手が見えた。


「ひぃ、こんなとこまで!」


「ソルティさん!私の体に捕まって!」

高度を合わせ、ソルティさんにしっかり体を掴ませ、

魂に根付いた大槍を、ポロトンさんの中の熱を

全て使わんとする勢いで、巨大化させる。


+

重量は気にするな、私が何とかする!

+

マーレンさんがそう言うと、私の槍から自由が立ち昇る。


大きい…まるで家のように大きい半月のようになった大槍の刃の先が沸騰し

泥から焼成された、茶色の刃を纏った。

月明かりで照らされた青白い槍に、少し黒い刃。

それが槍に寄り添うように不思議な力で浮いている。


フラリスさんなしでは本当の技の形にはならない。

それでも、これを放つ!!


「ル マルトー ドゥ リュミエール!」


固く焼成した、土の刃が大槍を離れて天から降りていく。

私は刃が当たるのを見計らい急降下すると

徐々に近づいて大きく見えるスライムがきれいに2等分されて蠢いていた。


これじゃダメだ、まだ…


「私を回転させて!マーレンさん!」


生暖かい水しぶきが飛び、水球が落ちる空中で

大きく膨張した大槍を振り回す。


斬撃と風の力が、ばらばらの肉片を

更にばらばらにし空中に散らす。


土の刃が轟音を立て地に刺さると、私は軌道を逸らし

飛びのいた。


+全てを巻き上げる!大竜巻!+


空中で、透明な固まりが月の光を乱反射し

まるで噴水の様にあふれ出していた。


とっても、幻想的だ…

氷が付かんばかりに冷え切った鎧に震えながら

ただ無言でその様子を見守った。


ふと川を見ると、からからに乾ききった道のようだ。

ゴロゴロした岩が、鈍く浮かび上がっていた。


そこに若干端の方が砕けていた、けれどいまだにがっしりとした刃が

地面に突き刺さる。


+油断しない。こいつらを遠くに飛ばす。+


横なぎの竜巻がまた長い透明の筒を作り出す。

そしてそれが、遠くの山に落ちて行った。

良く見えないけど、まるで白い雨が降っているようだった。


【あれだけの衝撃があれば、容易に再生は出来ないはずだ。

ある意味勇者教の力であるとはいえ、正しいことに使えて良かった。】


確かにそうだ、フラリスさんのズルい力の"偶像化"。

勇者向日葵をフラリスさんへの祈りって事にして

エネルギーとして使っているから、これはある意味勇者教の祈り…

皮肉だけど、これで良かったんだ。


「生きた心地、しねぇ…さみいし、ションベンしてえ…」


「ふふ、そうだね。戻ろっか、あったかいギルド。」


…


私が暗闇を飛ぶ中、こちらに気づいたように

魔導士たちが上を見上げる。

でもモンスターとの戦いに忙しくて、それどころではなかったみたいで…

お咎めも追跡もなく、ギルドの窓までたどり着いた。


空いた窓枠を掴んで、よっと内側に掴みなおして

ジャンプで中に入った。

思いっきり抱き付いていた、ソルティさんも力が抜けたみたい。

床にへたり込んで、上を向いて息をしていた。


…真っ暗、月明かりを頼りに

窓を閉め、カギをかけた。


「勇者向日葵って、こんなに過酷だったのかよ…」


「ソルティさん、無理して魔法を維持させちゃったね。」

暗くてほとんど何も見えないなか、沢山の足音が

上ってくるのが聞こえた。


大きく息を吸って、ただいまの準備をして

光の線が広がるのに向かって元気に声を上げた。


「ただいま!」


「おかえり…!」

アリッサちゃんたちが駆け寄ってきて

うるんだ目で握手、鎧を脱ぐのを手伝ってくれた。


ベラーゼ君はソルティさんを運ぶ。


スノル君は私を少し、ぼーっと眺めてたけど

「お湯沸かしてきます。」

って階段を急いで降りてった。


「よく頑張ったね、ゆっくり休んでね?」

フレアンさんから、どこか懐かしい声の響きを聞いて

私はふと閃いて…勇者向日葵に祈る。

柔らかに力が抜けて…祈りが通じた。


確かこれで、癒しの力を返してくれるんだよね。

ズルで魔法使わせて、ごめんねフラリスさん。

でもこれだけ居たら、誰が誰かなんて分かんないからいいよね。


「私もお手洗い行きたい、連れてってくれますか?」


寝支度をして、今日はそのまま眠りについた。

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