第四十八話 -それでも恨みたくない!
夕日も落ちるころ、
ギルドの前で、背中で手を組んで壁にもたれた。
バドレさんも同じように、
こんな時間、続くと良いな。
「もうそろそろ落ちるな。
思い出すぜ、あの夜を。」
「ええ。」
「寂しくないのか?日葵だろ?
怖くないのか?」
「もう、忘れちゃった!」
ふぅ…また見え透いた嘘ついちゃった。
ナイフを持ったお母さんみたいな人、
剣で切りつけてきたあの子、
まだ、モヤモヤする。
そうだ、その後をまたいい感じの時に
バドレさんか、ミレーさんかから聞いてみよう。
まだ何人か町を歩いてて、ふとフラフラとした
老人を見かけたが、驚くような発言をしてきた。
「…すまねぇ!?
金を集めれなくてよ~
勇者教失格だおれぁ!?
組織から盗ませた、金もまた盗まれちまったんだ!
折角の名案を
無駄にしてすまねぇ…」
ニヤついた顔で、私の腕を掴んで私の体を支えにしてきた。
気配に横を向くと、長身の浅黒い巨人の影。
もう一度逆を向くと、表情の良く見えないバドレさん。
そして老人の裏には、顔のよく見えない男が
ペンを持っている。
…え?
なに?これ?
え、もしかして、嫌が
「おい…」
バドレの腕をつかんだのは、その浅黒い巨人。
モデインさんだった。
「おい兄ちゃん、ここで暴力振るっちゃアカンだろ。」
怯える老人と、腕を振り上げ、堪えるバドレ。
モデインさんは軽く止めているだけだ。
匂う、鼻に…この人。
そっか、もしかして。
「あの、これ…要りますか?」
布財布から、数百クラン出す。
すると老人はそれを奪い取り数え始めた。
捕まれていた胸と左腕が痛むけれど…!
私は妖気に足をのせてジャンプ。
記者の男の前に降り立った。
「…なんだよ。」
男は帽子を深くかぶり直す。
全身茶色で姿もよくわからない。
「いい特ダネは取れましたか?
でもそれを出したら、私もあなたを暴露できるんですよ?
手打ちにしませんか?」
「は、暴露だ?
俺が誰かも分からんだろ!
それにどれだけわざとらしくても、読む奴は一定数居る。
俺に手を出したら仲間に記事にしてもらうだけさ。」
もっともらしく、早口で捲し立てるけど
それは、あくまで名前が分からないからだよね。
なら、これでどうかな。
「それでも、恨みたくないですから。
あなたの名前、その魂まで。
私の慧眼でお見通し。」
「…つっ!?」
男が後ずさる。
うそだよ、ムテュスさん居ないし。
でも知ってたんだね。
真実を見抜き偽りを固める慧眼の能力を。
ならそれっぽく見せてあげる。
「お、おい、何だおめえ、
あ、あ」
私の肩から妖気を人より大きな両手の形に顕現させる。
そして空から握るように手のひらを見せた。
「恨みたくないから、引いて。」
「うわぁぁあぁぁぁ!!!」
男は逃げて行った。
複雑な気持ちを胸の中に押し込める。
モデインさんが後ろから駆けて行った。
きっと記者を追いかけに行ったんだ。
ふう。バドレさん達は…
「300、400、500…うへへへ…」
しまった、出しすぎた。
金を数える老人に拳を掲げるバドレさん。
バドレさんは、病院の件で私のお金のなさを知ってる。
不味い!
我慢の限界を迎え振り下ろされる拳に…
私は妖気を使って地面を叩き、飛び込んでいた。
直前で、魂に根付いた大槍を両手に持ち、目を瞑る。
あ、視界が真っ白。
間に合ったんだ。
大丈夫、大槍で防いだ。
ちょとふらつくだけ…。
グラグラする、グラグラ、
ダメだ、まだやること…が。
地面に突っ伏して、目を瞑る。
「先輩!」
スノル君…
「人間、報酬があると何でもしちゃうんです。
だいじょぶ…それより心配。」
おじいさんはきっと、路上のひとで
お金を渡されただけで…
大丈夫、バドレさんにはもう一日ある。
だい…




