帰り道
「じゃあな、エル。元気でな。」
「うん。お兄ちゃんも、元気でね。ありがとう!」
俺が手を振ると、エルが跳ねながら両手を振って来た。
村を出て【ウルフの森】に向かった。
村に戻ると、何故かお礼をと、迎えに来てくれた剣士さん達が言ってきた。
魔法使いさんの落とした素材や、お金、ユニークモンスターの素材も手に入っているし、宿も貸してくれたし、食事も用意してくれたし、皆の笑顔も見れたし…。
こんなに貰っておいて、さらにお礼をなんて…。
この村の人達は、なんて良い人達なんだろう。
お礼は要らないと首を横に振って断っておいた。
「くそっ!素早すぎるだろ!」
短い茶色い髪と青い瞳の剣士の男性が、文句を言いながらウルフを相手にしている。
「一匹抜けたわ!気を付けて!」
長い紅い髪と赤い瞳の魔法使いの女性が、剣士の脇を通り抜けたウルフを見て言った。
「ファイア!」
魔法使いの女性が、通り抜けて来たウルフに魔法をぶつけた。
一匹のウルフが倒れ、その後ろからもう一匹ウルフが跳びだして来た。
「うわわっ!」
魔法使いの女性が慌てて避けた。
「え、あ!きゃぁっ」
一番後ろに居た、長い青い髪と青い瞳の僧侶の女性は、ウルフが飛びだして来た事に驚いて悲鳴を上げて、尻餅をついた。
『カピス!避けろ!逃げろ!』
剣士と魔法使いが、カピスに向かって叫んだ。
ウルフが地面を蹴って、カピスに向かって跳んだ。
【ウルフの森】に入ると、オオカミさんが口を開けて跳んで来ていた。
「うわっ」
驚いて声を出しながら、オオカミさんの鼻っ柱を殴った。
オオカミさんは、茂みの方に吹き飛んで行った。
「あ、あれ…?と、といれっとぺーぱーさん?!」
名前を呼ばれたので振り返ると、尻餅をついている僧侶さんが居た。
…ああ。街で剣士二人に絡まれていた僧侶さん、カピスさんか。
「お久しぶりです。カピスさん。」
会釈をしながら挨拶をして、手を差し出した。
「あ、すみません。」
カピスさんが手を掴み、立ち上がりながら言った。
オオカミさんの唸り声や、バシュッと斬れる音や、爆発音が聞こえ振り返った。
カピスさんの仲間の、剣士のオルクさんと魔法使いのマゼンダさんが戦っていた。
…あ、さっきのオオカミさん、横取りになったかな…悪い事をしてしまった。
「すみません。さっきのオオカミさん、横取りしてしまって…。」
「え?!いえ、助けてくれて、有難う御座います。」
カピスさんは、首を横に振ってから、ペコッと会釈した。
「誰と話してるんだ?!」
オルクさんがウルフの相手をしながら、聞いてきた。
「といれっとぺーぱーさんです!といれっとぺーぱーさんが、急に目の前に現れました!」
カピスさんが大声で伝えた。
「え!?といれっとぺーぱって、あの時のか?!」
オルクさんが驚いて聞いてきた。
「お久しぶりです。えっと、レベル上げの邪魔をしたらいけないので、俺はこれで…。」
「待て!」「待って!」「待って下さい!」
去ろうとしたら、三人に止められた。
二人はウルフの相手をしているので、カピスさんを見た。
「ウルフ達に追われてるんです。思った以上に、素早くて強いし、困ってるんです。助けてくれませんか!?」
カピスさんが、こっちに近づいてきながら言ってきた。
「いいですよ。えっと、パーティー申請を送ってくれますか?」
「はい!有難う御座います!」
カピスさん達のパーティーに入った。
「じゃあ、倒しますね。」
取りあえず、マゼンダさんに跳びかかろうとしてしていた、オオカミさんの首を撥ねた。
「え?」
マゼンダさんが驚いているが、先にオルクさんを助けよう。
オルクさんの周りに集まっている、オオカミさん達の首を撥ねていった。
辺りにオオカミさんが居ないか、確認してから振り返った。
オルクさんは剣を構えた状態で固まっていて、マゼンダさんとカピスさんは口をポカンと開けている。
「どうしました?」
俺が首を傾げながら聞くと、三人はハッとして首を横に振った。
「相変わらず、凄いな。」
オルクさんが溜息を吐きながら、剣を鞘に納めた。
「本当にね。カピス、回復頼める?」
マゼンダさんが頷きながら言い、カピスさんが頷いて、二人の回復をしている。
「といれっとぺーぱーさんは…、回復要らないみたいだな…。」
オルクさんが、俺を見ながら言った。
「そうですね。怪我してないので。」
俺は頷きながら答えた。
「帰り道、覚えてるか?」
「逃げるので、精一杯だったわよ。」
「ごめんさない。」
オルクさんは二人に聞いてから、俺を見てきた。
「帰り道なら、解りますよ。」
俺が言うと、三人の表情が笑顔に変わった。
俺が先頭を歩き、三人が付いてきている。
「へえ、こんな所に道があったのか。」
オルクさんが感心して呟いた。
「はい。近道なんです。街に早く着いた方がいいでしょう?」
「へえ、近道か。」
「…あのさ、近道って、何か出るんじゃないの?」
オルクさんが頷きながら言い、マゼンダさんが辺りを警戒しながら言った。
「犬っころが出ますけど、問題無いですよ。」
『犬っころ?』
俺が言うと、三人が声を揃えていって首を傾げた。
ガサガサッと茂みが揺れて、頭が二つある犬っころが出て来た。
「ほら、犬っころです。」
俺が出て来たのを指差しながら言った。
「ええ?!いやいや、犬っころのレベルじゃないよね?!」
マゼンダさんが首を横に振りながら叫んだ。
「おいおい、こんなの相手に出来ないぞ?!」
オルクさんが言いながら、剣を抜いた。
犬っころが、俺達を見て唸り、こっちに走って来た。
俺も犬っころに向かって走りながら刀を抜き、二つの頭を切り落とした。
…火の玉より遅いから、楽に避ける事が出来た。
「…え?一撃?」
「いや、それより、倒せるのね。」
「つ、強すぎます。」
「おいおい、本当に、彼は何者なんだよ。」
「知らないわよ。あ、でも同じ名前の人なら、掲示板に乗ってたわ。」
「え?あ、あの、僧侶さんですね。」
「…恐るべし、といれっとぺーぱー。」
「ちょっと、オルク!噴きだすから、止めてよ。」
「あの、そろそろ、行きましょう。待ってくれてますよ。」
三人が何か話し合いをしていたので、終わるのを待っていた。
「すみません。お待たせしました。」
カピスさんがペコッと会釈しながら言ってきた。
「あ、いえ、ええと、帰っていいんですよね?」
「はい。」
カピスさんが答え、二人が頷いた。
道中、オオカミさん達が襲い掛かって来たが、撃退しながら帰った。
「じゃあ、俺はこれで失礼しますね。」
【ガネリア】に着いたので、三人に会釈をしながら言った。
「あ、ああ。」
「有難う御座いました。」
「ありがとう、助かったわ。」
三人に手を振って別れた。
「…レベルが、結構上がったな。」
「うん、ユニーク倒してくれたしね。」
「倒してくれたウルフの数も、凄かったです。」
「本当に、彼と知り合いになれて良かった。」
「そうね。」「そうですね。」
三人は顔を見合わせて微笑し、買い物をする為に歩き始めた。




