店長のお勧め品
俺とリリアさんは机を挟んで、向かい合って座っている。
「それで、といれっとぺーぱーさんは、どんな物が必要なの?」
「武器と防具と魔法書ですね。」
リリアさんに聞かれたので答えると、リリアさんが何故か目を丸くした。
「魔法書が要るの?剣使ってたって聞いたけど?」
斬れ味が無くなった凄い剣は、使えないからとマルスさんが破棄してくれるそうだ。
「はい、使ってましたけど…。僧侶なので回復魔法を覚えようかと。」
「……成程ね。あのマルスが念を押してきた意味が解ったわ。」
俺が答えると、リリアさんが納得したように小声で何か言った。
「回復魔法ね。幾つかあるけど、貴方のレベルは幾つなの?」
俺が首を傾げていると、リリアさんが片手を軽く振りながら聞いてきた。
そういえば、レベルの確認とかしてないな…。
「ちょっと、確認してみます。」
リリアさんが頷くのを見て、俺は軽く手を振ってメニューを開いた。
Nane:といれっとぺーぱー
LV:24
Job:僧侶
HP 530/530
MP 710/710
STR 75
VIT 53
DEF 80
AGI 43
INT 71
LUC 61
…ちょっと見ないうちに、ステータス上がり過ぎじゃないかな。
「レベル24です。」
俺がレベルを言うと、リリアさんは目をぱちぱちさせた。
「は?24って言ったの?本当に?ちょっと、ステータス見せて。」
リリアさんが席を立って、俺の隣に座ってきた。
ステータス表を、他人に見えるように設定してリリアさんに見せた。
「……本当に、レベル24なのね。攻略組より高いじゃない。貴方、何者なの?」
リリアさんがステータスを見て驚き、俺の顔をじっと見てくる。
「何者って……言われても…。」
俺は返答に困り、しょんぼりとした。
すると、リリアさんがぷっと噴きだした。
「気にしないで。魔法書だけど、【ヒール】【エリアヒール】【シールド】があるわ。」
「ええと、幾らになります?」
「【ヒール】は1000G、【エリアヒール】は10000G、【シールド】は4000Gよ。」
「………えと、すみません。先に防具と武器を見させて貰っていいでしょうか?
その、魔法書が思ったより高くて、お財布と相談しないといけないので…。」
「解ったわ。防具と言っても、ボーナスが付いてる物はほとんど無いの。
だから、見た目重視で買えばいいわ。ローブもあるけど……。」
リリアさんは俺をじっと見て、首を横に振り、一着の服を取り出した。
「私のお勧めはコレ!早速、試着して来て!」
取り出した服を俺に押し付け、試着室を指差した。
「え、あの…」
「大丈夫、絶対に似合うから!試着した姿が見たいの!」
「は、はあ、解りました。」
試着室に移動して、受け取った服に着替え始める。
白いブラウス、黒い長ズボン、黒いブレザー、黒い編み上げブーツに着替える。
黒いブレザーには、金色のボタンと控え目な刺繍が付いている。
…見た目は完全に騎士だな。
「着替えましたよ。」
言いながら試着室を出た。
「やっぱり、似合ってる!私の目に狂いは無かった!」
リリアさんが、親指を立てながら言った。
「でもこれ、騎士みたいじゃないですか?」
「その上に、この黒いコートを着ればばっちりね!」
リリアさんは嬉しそうに、黒いコートを手に持って言った。
「あの…」
「うん。説明するから、こっちに座って。」
再び聞こうとしたら、リリアさんが手招きしながら言ってきた。
リリアさんと向かい合うように座った。
「見た目を騎士っぽくしたのは、訳があるんだけど。薬の、ポーションの値段とか知らないでしょ?」
「はい、知りませんね。」
「ポーション一本が、200Gなの。デスゲームになってから、回復アイテムと僧侶の魔法書の値段が高くなっていたの。僧侶職の人を仲間に入れようとして、争奪戦があちこちで起きてね。やっぱり、回復出来る人がいると、安心できるしね。今でも僧侶職の人を、強引に仲間にしようとする人達は大勢いるわ。貴方は一人だし、変な勧誘とか騒動に巻き込まれたくないでしょ?その恰好なら、勝手に剣士職だと勘違いしてくれるわ。後、自分が僧侶職って言わない方がいいわ。まあ、直ぐにばれそうだけど一応ね。」
リリアさんが言い終わってから、俺の顔を見て微笑んだ。
今日会ったばかりの俺の為に、こんなに良くしてくれるなんて。何て良い人なんだ!
「有難う御座います!」
俺は嬉しくて笑顔でお礼を言った。
「いいのよ。後は剣を腰に装備すれば、ばっちりだけど…。杖の方がいいの?」
「いえ、杖よりも剣の方がいいんですけど。」
「解ったわ。ええと、何がいいかしら?鋼のロングソードはどう?」
リリアさんは言いながら、剣をテーブルの上に置いた。
「あの、先にこの服の代金を…。」
黒い騎士服を指しながら、リリアさんに聞いた。
リリアさんは少し何かを考える素振りをして、俺を見てにこっと笑った。
ステータスはサイコロ転がして出た数字です。




