表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

押し付け

「そういや今日、印税の振り込みじゃなかったっけ」

 早速パソコンをネットにつなぎ、銀行の自分の口座ページを開いてみる。

 『TERA』編集部より振り込み、二万五千円也。私の印税は最初からこの額。

 雑誌によって違うけど、記事やコラム約五百字で印税は約一万円が相場。だから倍以上の印税が発生するのは、あり得ないし絶対おかしい。


「ユウ、やっちゃってくれてるな」

 大体見当は付いている。印税を上乗せさせているのはユウ君、中山裕介しかいない。

 そういや彼、私が五年以上も乗った車を二十五万円で買い取っていったっけ。しかも初めは三十万から五十万で売ってくれと言っていた。


「これで恩返しのつもり? あっさいなあ」

 ユウ君は私に放送作家に成りたいと相談してきた時、企画書一枚書いてこなかった。

 「これじゃだめだ」と思った時、私は自分が勤務していた風俗店の店長に頼み込み、個室待機室を一部屋貸してもらい、そこに彼を「監禁」。「作家に成りたかったらここで企画書を書け」と命じた。


 ユウ君は改心し企画書を書きまくった――わけでもなかったが、一定の努力は認め、友人の放送作家、陣内美貴を紹介した。

 その後、美貴が<レッドマウンテン>の前社長に彼を紹介し、ユウ君は念願の放送作家に成ることができたのだ。

 律儀な彼は作家として生活が安定している今、私に「お金」で恩返しをしている最中、大体こんなとこだろう。


「それはそれで嬉しいんだけど……」

 もっと違った形でお礼をしてもらおう。

 瞬時に妙案を思い付き、傍らの携帯電話に手を伸ばして電話。

『はいもしもし。どうしたんですか?』

 相手はユウ君の友人の多部亮ディレクター。制作プロダクション<ワークベース>の社員。

「あのさ、「例の件」なんだけど、ユウ君を推薦しようと思うの。どう?」

『あいつですか。ユースケはまだドラマのホン(台本)しか書いたことなくて、「その手の仕事」はしたことないと思うんですけど、それでも良いんですか?』


「良いの良いの。彼とは十年以上の旧交だし、私のしもべみたいなものだから、何度でも書かせちゃう」

『なるほどね。でもあいつ、また狼狽すると思いますよ』

 多部君はそう言って笑った。

「だろうね。ハハハハハッ!」

 少しかわいそうだけど、ユウ君が狼狽している姿が目に浮かんで私も笑いが止まらない。


「じゃあ決まりね」

『分かりました。オレからユースケに伝えときますよ。今回は夕起さんからの命令だってね』

「お願いね」

 さあ楽しみだな。電話を切ってもにやついたまま。


 今の話は私の処女作『デパーチャー』の話。ありがたいことに五万部を売り上げ、映画化されることが決まった。

 監督は直ぐに決まったものの、脚本を誰が書くかは人選に難航している。

 今回の映画は<ワークベース>も制作に携わるため、多部ディレクターにユウ君に脚本を書いてもらうという推薦をしたのだ。


 まだ何も知らないユウ君。今回の仕事をどんなウイットで乗り越えてくれるのかな?――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ