押し付け
「そういや今日、印税の振り込みじゃなかったっけ」
早速パソコンをネットにつなぎ、銀行の自分の口座ページを開いてみる。
『TERA』編集部より振り込み、二万五千円也。私の印税は最初からこの額。
雑誌によって違うけど、記事やコラム約五百字で印税は約一万円が相場。だから倍以上の印税が発生するのは、あり得ないし絶対おかしい。
「ユウ、やっちゃってくれてるな」
大体見当は付いている。印税を上乗せさせているのはユウ君、中山裕介しかいない。
そういや彼、私が五年以上も乗った車を二十五万円で買い取っていったっけ。しかも初めは三十万から五十万で売ってくれと言っていた。
「これで恩返しのつもり? あっさいなあ」
ユウ君は私に放送作家に成りたいと相談してきた時、企画書一枚書いてこなかった。
「これじゃだめだ」と思った時、私は自分が勤務していた風俗店の店長に頼み込み、個室待機室を一部屋貸してもらい、そこに彼を「監禁」。「作家に成りたかったらここで企画書を書け」と命じた。
ユウ君は改心し企画書を書きまくった――わけでもなかったが、一定の努力は認め、友人の放送作家、陣内美貴を紹介した。
その後、美貴が<レッドマウンテン>の前社長に彼を紹介し、ユウ君は念願の放送作家に成ることができたのだ。
律儀な彼は作家として生活が安定している今、私に「お金」で恩返しをしている最中、大体こんなとこだろう。
「それはそれで嬉しいんだけど……」
もっと違った形でお礼をしてもらおう。
瞬時に妙案を思い付き、傍らの携帯電話に手を伸ばして電話。
『はいもしもし。どうしたんですか?』
相手はユウ君の友人の多部亮ディレクター。制作プロダクション<ワークベース>の社員。
「あのさ、「例の件」なんだけど、ユウ君を推薦しようと思うの。どう?」
『あいつですか。ユースケはまだドラマのホン(台本)しか書いたことなくて、「その手の仕事」はしたことないと思うんですけど、それでも良いんですか?』
「良いの良いの。彼とは十年以上の旧交だし、私のしもべみたいなものだから、何度でも書かせちゃう」
『なるほどね。でもあいつ、また狼狽すると思いますよ』
多部君はそう言って笑った。
「だろうね。ハハハハハッ!」
少しかわいそうだけど、ユウ君が狼狽している姿が目に浮かんで私も笑いが止まらない。
「じゃあ決まりね」
『分かりました。オレからユースケに伝えときますよ。今回は夕起さんからの命令だってね』
「お願いね」
さあ楽しみだな。電話を切ってもにやついたまま。
今の話は私の処女作『デパーチャー』の話。ありがたいことに五万部を売り上げ、映画化されることが決まった。
監督は直ぐに決まったものの、脚本を誰が書くかは人選に難航している。
今回の映画は<ワークベース>も制作に携わるため、多部ディレクターにユウ君に脚本を書いてもらうという推薦をしたのだ。
まだ何も知らないユウ君。今回の仕事をどんなウイットで乗り越えてくれるのかな?――




