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死ネタ不可避の推しを生き延びさせるために、転生モブは全力を尽くします!  作者: ちまはは


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2-はじまりの村(2)


 「レイン」


 声をかけられて、顔を上げる。


 そこにいたのは、叔母のマリナ。

 カイの母親だ。


 「また難しい顔してるわね」

 「してません」

 「してるわよ」


 即答された。


 この人は、つい先日まで寝込んでいた。


 普段、隣町の冒険者ギルドから指名依頼がかかるほどの凄腕で、姉御肌で、村の男衆を蹴散らす元気さを誇る人だったのに。


 急な高熱。

 全身の痛み。

 倦怠感。


 周囲の判断は、ほぼ一致していた。


 ――魔力暴走。


 魔力暴走というのは、この世界では“貴族特有の病”とされている。魔力の強さは、貴族の格を左右するからだ。

 魔力量の多い者ほど発症しやすく、制御できなければ命に関わる。

 だからこそ、専門の医者は貴族の多い王都に集中している。


 普通に村娘なら、流感やほかの病を真っ先に疑って、普通に隣町の医者に見せただろう。 


 だが、ここは“訳ありの村”。しかもマリナは元貴族の村長の孫娘。

 大きな怪我や病気をしたこともない。

 だから、普通なら思いつきもしないだろう病、すなわち魔力暴走だと思われ、それを誰も疑わなかった。


 とんでもない逆転現象である。  


 流感の高熱なら、魔力が含まれているポーションで対処できるが、魔力暴走患者に魔力を含むポーションは使えない。火に油を注ぐようなものだ。

 つまり、この村でまともに対処できるものではない。手の施しようがない、と皆が思った。


(いや違うかもしれないじゃん、って話なんだけど) 


 そう思ったので。

 ちょっと調べてみた。


 自作の魔力観測機(試作品)で、魔力量が多い事がわかっているじいさま達の何人かと、少なそうな脳筋…じゃない、おっちゃん達や他所の村から行商に来てたお兄ちゃんに協力してもらって、マリナさんの状態と比較して見せて。


 結果、普通に感染症、流感だった。


 以上。


 ポーションで熱を下げて、汗をかいて、よく眠り、目覚めてからよく食べ、マリナさんはこうして元気に立っている。


「レインのおかげで助かったわ。あぶなくクソじじいどもに見殺しにされちゃうところだったわ。」


 豪快に笑ってさらっと身内を『ディスる』。

 病み上がりの段階で経緯を知ったマリナさんが、それは凶悪な笑みを浮かべたと聞いて、じいさま達は震え上がったらしい。美人だから余計に、迫力あったんだろうな。見たいわけじゃないけど。


「たまたまですって。」


 事実だ。

 知識と試作機の出来上がるタイミングが噛み合っただけ。


「たまたまで人は治らないわよ」


 にこっと笑われる。

 レインは視線を逸らした。


 そういえば。


 ――眩暈。


 マリナの高熱が下がって峠を超えた、その瞬間に。


 ぐらりと揺れて回って。視界がずれ。

 周りの人の気配が消え。


 一瞬だけ。


 世界から切り離されたような。

 恐ろしいほどの、静寂――


(あれは、いったい何だったんだろう)


 本当に、一瞬だけの感覚。


 誰かに話しかけて、自分だけだったかどうか確かめようとも思ったけど。

 直後に、カイが起こした大騒ぎのせいで、結局誰にも話せていない。

 カイの奴。マリナに食べさせたい、元気になってほしいが為に、大人でもてこずる魔獣を仕留めて村まで引きずってきたのだ。5歳児のくせに。

 そして、病み上がりでもすぐ肉を食える非常識…タフな親子…まあ、いい。結局、いま、マリナもカイも元気だ。


「ねえレイン」

「なんですか」

「この前の、魔力観測機ってどうなった?」


 興味深そうに、マリナが覗き込む。


「じいさま達に持っていかれました。」

「はあ?」


 マリナの片眉が上がる。


「精度が微妙なんで改良したい、って言ったら、任せろ、って。」

「…。」

「一人だと、なかなかうまくいかないことが多くて、助かるっちゃ助かるんで、しばらく預けることにしました。」


 それは確かだ。正直に言う。

 大事なのは「誰が改良するか」じゃなくて、「より精度の高いものが完成する」ことだからね。


(でも、良いおもちゃ見つけた!みたいな顔してたのは、黙っておこう。じいさま達も作業場にこもってりゃ、マリナさんも突撃しないだろうし。俺やさしい)


 マリナは、ふうん、と感心したように頷いた。 


「ほんと、あなたは不思議な子ね」


 ぽつりと、そんなことを言う。

 悪意はない。

 むしろ好意的な口調だ。 


 レインは、軽く肩をすくめた。


「普通ですよ」


 そう答えると。

 カイが横から口を挟んだ。 


「レイ兄は普通じゃないぞ!」

「失礼な。お前は黙ってろ」

「なんでだよ!」


 マリナが、こらえきれずに笑いだす。


「カイ、その言い方じゃ、レインに伝わらないわよ。もっと素直に、レインは頭がよくてかっこいいって言わないと」

「レイ兄はかっこいい!」 

「レインは、本当に賢いわ」

「…そりゃ、どーも」

 

 身内に褒められた。

 お世辞でも、まあまあ嬉しいよね。マリナさん、一応美人だし。

 カイの頭をグリグリ撫でて置く。


(でもなぁ。俺、『モブ』も『モブ』、「はじまりの村の村人、そのイチ」なんだよね。)


 この、『ヴェルナリアの封印~ambivalence~』の世界だと。


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