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想い出を追って
今回はとても短いです。
お気軽にお読みください♪
逸る気持ちのままに私は駆けます。
桜の木は五年前と変わらず、きらめく花びらを降らしながらそこにありました。
まるで桜が大粒の涙を零しているようです。
彼は中庭が好きでした。
五年前も、暇さえあれば桜の木に寄りかかり、目を瞑っていました。
時折吹く風に髪を靡かせながら、眠るように目を閉じるのです。
そんな彼を見ることが、私は大好きでした。
風が止まり、花びらが地面に落ちます。
私は速度を緩めながら、一歩一歩と桜の木に近づいていきました。
そして、足を止めます。
静寂が訪れました。
世界の全てが止まった、そう錯覚しそうな程に重苦しい静寂でした。
ここにいる。
視えるはずのない相手。
それでも理屈ではなく、感じました。
終盤になりました。
次回で最終となります。