第一話 死神の贈り物
「明日の見出しは決まりね」
ディエラは淡々とした様子で小さく呟いた。
それはまるで他人事のようで、息絶えた従者達など目にも留めず平然とした装いで階段を下る。
コツコツと迷いの無い足音だけが屋敷内に木霊する。
ディエラは大広間の扉の前に着くと、ピタリと足を止めた。扉には金属の削れた跡が残り、足元には大広間から漏れた血溜まりが扉の開閉を示すように掠れている。
誰かが“わざわざ”扉を閉めた。
そう理解するのにさほど時間はかからなかった。ディエラは、伏せていた瞳を起こすとパチンと指を鳴らした。
炎はあっという間に扉全体を包み込み、数秒もしないうちに金属から液体へと変貌させた。まるで頭を下げるが如く溶けていく扉を横目に、ディエラは大広間へと足を踏み入れた。
*
大広間は焼け落ちたカーテンの隙間から月明かりが差し込み、無情な惨劇を照らしている。鼻腔を刺激する“何か”が焼けた臭いが大広間に充満する中、ディエラは導かれるように中央へと足を進めた。
血溜まりが出来てからあまり時間は経っておらず、踏むとピチャリと水音が響く。中央に近付くにつれ、その足音は微かに大きくなっていた。何かを踏みつけるように、憤怒の感情が薄らと滲む。
「………レックス…ロイ……エリノア…」
月の影となる中央のテーブルには、椅子に拘束された状態で息絶える弟妹達の姿があった。二人の義弟と義妹の変わり果てた姿に、ディエラの端正な顔立ちが僅かに歪んだ。
三人に抵抗の跡は無く、“それら”は置物のように飾られているようにさえ感じた。
あの“ヴァルディア”が、だ。
そこでディエラはハッとした。
凄惨たる現場にあまりに不釣り合いな弟妹達の遺体、不自然に傾いた空席の椅子、そしてわざわざ閉められた扉。
これは───────
「どう?気に入ってくれた?」




