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デッドデッドデウス・エクス・マキナ・インダストリー  作者: 竜蔵寺 佑


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最終話 新たな神と

『ライブラリ:受理:ルナ起動開始・成功』



 聞き慣れたような言葉が脳内で聞こえた。私は一体。


「ルナ!」


 飛び起きた。


「ここは!? どこ?」


 周囲を見ると、どこかの部屋のようだ。誰かの気配はないようだ。


「あれ……私の記録……」


 そうだ。愛国者と戦闘して全身が深い損傷を受けて、それからどのくらい経過したんだろう。


「ルナ! 聞こえるか? 俺だッぜッ!」


「イフ?」


「そうだッぜッ! ようやく目覚めたようだな」


「私、今回どのくらい眠っていた?」


「2カ月半ってところだぜ。だが、この短期間で修復出来て良かった。これも全て……」


「今回はたった2カ月って、あんなに酷い損傷だったのに、どうして?!」


 私は感情のままにイフへ詰め寄る。


「まぁ、ルナ。起きてそうそう混乱するのは、よーく分かる。これまでも、そうだった。簡単に言うと、愛国者を龍帝とにょにょが倒した。その倒した素体をルナの修繕に利用させてもらった。そうして、ルナが短期間で修復と完全な状態へ戻ったということさ」


「あの、愛国者を?!! 龍帝とにょにょが、やっぱり凄いや」


「いや、そのきっかけを作ったのはルナだと二人は言っていたよ」


「私が?!」


 身に覚えがない。そんなことをしただろうか。全力で戦闘したデータの記録は確かに残っているが、二人の助けになるようなことはしていないと思う。その時、扉が開く音がした。


「あ、ルナさん、おはようございます!」


「キキ! 私、壊れると長く眠ってしまうの。迷惑をかけたよね」


「いいえ、ルナさん。貴女は良く戦いました」


 キキは私に近寄り、両手で私の左手を握った。


「私は、愛国者たちに何も出来なかった」


「いいえ、充分に戦いました。そして、《《本番はこれから》》です」


「どういう意味? それにここはどこかの部屋だと思うけれど敵への心配とかは」


「ルナさん、貴女が索敵した範囲の通り、敵の影はどこにも存在しません。この場所は、精神圏・オムニ・パトリアという都市国家になります」


 私のライブラリにはそういう都市国家は該当しない。


「知らない都市国家だ。どの地域の都市国家なの?」


「ええ、慌てずよく落ち着いて聞いてください。この場所はまず安全です。そして、この地域いえ、新世界と呼ぶべきでしょうか。ここは愛国者たちが統治する世界線です」


 キキが冷静に言葉を選ぶように落ち着いて話す。真剣な眼で私の眼を見る。大切なことは、まず安全であるということ。愛国者たちが統治する世界である新世界と呼ばれる世界であるということだ。私には理解が出来ない。つまり、敵血のど真ん中にいるということだ。


「本当に安全なの?」


「ええ、既にこの都市で私たちは生活をしていますから」


 ますます意味がわからない。


「愛国者たちは何故、襲って来ないの?」


 キキへ、ストレートに聞いた。


「そうですよね。信じられませんよね。安心してください。この都市国家には愛国者たちはせめて来ません。正確には来られないというべきでしょうか。現在の状況は愛国者たちが完全統治している世界に我々はいます。これまでルナさんが経験されてきたどの地域とも異なります。ここには階層も無ければフロアや区画等もありません。ルナさんの言葉を借りるのであれば、基底世界の上にある世界でしょうか。ここでは、大地が広がっており多種多様な生命体がいます」


「どういうこと? 基底世界の上って?」


「ここはこれまで私たちがいた世界よりも高次元な新世界線にいるということです」


「イフ、それは本当なの?」


「そうだぜ、この新世界と呼ばれる世界は愛国者たちが完全に統治している世界で間違い無いぜ。俺たちがこれまで長い旅での基底世界の常識は、ここでは通用しないのと、ここには人間種に近い生命体がおり、独自の文明を築いているってことさ。まさか、世界を融合し拡張した愛国者たちが自分たちの世界を創るための存在ってことに俺たちは驚いたぜ」


「なんで? どうして、愛国者が完全に統治しているってことは襲って来ないの?」


「それは私から説明しましょう。この世界は愛国者たち完全に統治していますが、現時点で私たちへの敵対行動は表だって示していません。これは龍帝やにょにょさん、イフとも協議しましたが、この新世界において私たちの存在は脅威では無いと認識されたのではないか、または、何かしらの実験に利用されているのではと推察します」


「ということは、完全に敵視を解いたって訳じゃ無さそうね」


「そうです。ですが、その愛国者が今、どこにおり、どうしているかという情報はルナさん、貴女が握っています」


「私が?」


「そうです。貴女の中には愛国者たちの力と情報というデータで構成されています。イフがより詳細にそのことについては理解が深いと思いますが、私たちにもその状態と状況、そして、今後を左右する情報として共有されています。ルナさん、貴女自身が愛国者と同質化しているんです」


「嘘でしょ?」


「キキの言う通りだ。修復には過去、愛国者の死体を利用。そして、直近での新鮮な愛国者の素体をルナの修復に全てつぎ込んでいる。ということは、全壊したルナを元に戻した素材は愛国者が材料ってことさ。敵さんが攻めて来られない理由として、もっとも重要なことは、ルナが愛国者たちと同じになり、力が大幅に上昇しているということへの警戒の表れだと俺は考えているぜ」


「ルナさん、ここの屋外で出ると敵だった天使や愛国者たちの反応がありますが、それらは敵では無くこの世界においての生きた民だということは信じてください」


 私の中で何かが整理されていく。情報という整理は既に終わって、ライブラリにアクセスしてもキキやイフと同様の結論を示してくる。


「わかった。自分で確かめる!」


「ええ、それでいいと思います」


「キキ、龍帝とにょにょは?」


「ああ、二人ともこの都市について調査中です」


 色々、聞きたいことを聞いた。この都市にどうやって戦闘後、入国出来たのかとか。生活してきたのだとか。キキからの回答は単純なものだった。怪我人がいるから安静に出来る場所がないかを、都市国家の人たちに聞いたら快く案内してくれて、現在に至るそうだ。


「本当に安全なの?」


「ええ、本当に安全です。こうして、私が穏やかに話をしているというのも証拠です。問題は《《これからのこと》》です」


 キキの声と表情は真剣になって、私を見つめた。


「これからのこと?」


「この新世界では、私たちが知る常識、知識、法則、技術、文明等も一切通用しません。ただ、確かなことがあります。愛国者たちが敵であることです。ですが、それは今を急ぐことではありません。重要なことは情報です。この新世界には、数え切れないほどの世界が融合し拡張され、数多くの他の世界を侵攻した際に生じた失敗と滅亡の上に成り立って完全に融合された世界であるということです」


「融合された完全な世界……」


「そうです。本当に完全な世界です。この新世界がどこまで続いているのか。陸地はあるのか、海などはあるのか。文明レベルはどの程度か。それも現時点で一切わかりません。ただ、言えることは、どこかで見たことがある、または私や龍帝、にょにょもどこか自分の世界だった景色と似ている、力の流れも似ているという点です」


「それは、世界が拡張されて融合した結果という認識でいい?」


「そうです。その認識でいいです。同時に脅威もいます」


「脅威って?」


「神を名乗る存在のことです」


「それはキキの知り合いとかでは無くて?」


 キキは残念そうに首を振る。


「いいえ、残念ながら全くの別モノです。それらが世界の運営と管理しているというのが私たちの認識です」


「愛国者たちは何をしているの?」


「私たちの現時点での情報では、役目を終えているのでは? と認識しています」


「愛国者たちは存在しないってこと?」


「厳密には、そうではありません。愛国者たちは私たちの脅威として確かにいます。ですが、神と称される存在を私たちも認識しています。しかし、直接な接触は脅威なのか、無害なのか、正体不明のため動くことが出来ません」


「この世界が何のために存在しているの?」


「わかりません。ただ、何かの目的のために愛国者たちは動いていたようです。それに、愛国者たちには上がいるそうです」


「上?」


「御方《おんかた》たちと呼ばれる存在です。それが、この新世界での神らを指すのかまで確証は得られていません。それらも含めて、龍帝とにょにょさんは動いて調査している状況となります」


 ベッドから降り、窓に向かって歩き窓を開けてみた。私の眼に映ったのは、それまで見たこともない、吸ったこともない。ライブラリだけに記録として残っていた。景色が広がっていた。どこまでも高い透き通った真っ青な空、そして、白くそびえ立つ立派な積乱雲。眼下には人々で行き交う活気に満ちていた。私の眼には人間と表記されている。


 ただ、種族は様々で動物の見た目をした者や、龍帝のようなドラゴンと似た姿の人とかもいた。文明レベルは高い。かつての人間が繁栄を謳歌した基底世界以前の世界を、ライブラリのアーカイブレジストリ(過去の記録)と重ね合わせる。


「風の薫りがする。汚染されていない大気……私は夢をまだ見ているわけではないのね、キキ」


「ええ、そうです。これが今の世界です。この世界は一体どれ程の世界線と融合した景色なんでしょうか。私たちにある記録や事実は、私や龍帝、にょにょさんも含めて確かに、かつて自分たちがいた世界は滅ぼされたという経験は存在しています。しかし、愛国者たちや御方という存在がこのような世界を創りだしたまでの回答は即座に生み出すことは不可能でしょう」


「そうだね。まるで、《《平和そのもの》》だ」


「そうです。今、ルナが見ている景色はホログラムや仮想世界ではありません。数多の世界の構成物質で成り立った何かです。私たちはこれ程の世界を創ることは神であれ、何であれ、生み出すことは困難です。ある種の神懸かりな世界であると思います」


「キキでも難しいの?」


「これ程の複雑かつ強度が高い世界を生み出す存在は私の知る限り、愛国者たち以外は存在しません。そして、私たちの中で一つの結論があります」


「それは、何?」


「この世界には絶対的な存在がおり、それらは私たちが知る既存の神ではない、新世界においての神がいて、それが全てを解決し『神』というシステムを愛国者たちが創造し、新しい世界にとっての都合の良い結末(プロパガンダ)を大量生産するための歯車として使役している世界ということです」


「壮大な皮肉ね」


「全く持って、そうです。さて、出掛けませんか?」


「ええ、もちろん。この新世界について私は知る必要があるから」


 キキの手を掴み、私は見知らぬ未知と過去が交差する新世界へと出た。


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