第十二話 決断
サイレントの部屋までわざわざやってきたテオだが、そのサイレントの部屋は元々従業員用の部屋として作られていた部屋で、普通にベッドとテーブルがあるだけの部屋だ。鍵のついた窓が一つだけ付いているが、窓を開けると見晴らしが良い以外には目だった特徴もない。
まあ、この部屋自体はテオも知っているので目新しい所はないのだが、一応は女性の部屋である。テオは少しだけ緊張して床に座り込んだ。
「すいません、椅子もない部屋で」
「謝るのは良いけど、ここは僕の家だからそれは僕にも効くんだよね」
「それもそうですね」
軽く口撃を加えたところで、サイレントは本題に移った。
「現在、この土地には三つの勢力が出来つつあります。まず一つ目がこの町、つまりテオ様のいる街です」
「うん、まあそれはわかる」
「はい、ただ一つ注意しておいてほしいのが正確に言うと街の自警団が勢力の一つという事です。町全体ではない事が問題です」
「どういう事?」
「つまりは武力を持った存在が権力を持っているという事です。この中にはテオ様含めて普通の町人は含まれてません」
テオはサイレントの言っている意味がよくわからなかった。自分達が含まれていないと言う部分をだ。
「えーっとつまり……えーっと」
「わからないのならここは今度詳しく説明します。では次の勢力ですがこれは近隣の農村を中心にした連合です。最も数が多くて力もありますが、元々は一つの共同体ではない上に、場所もばらけていますので色々と難しい勢力です」
これは理解できた。町に住んでいる自分達ではなくて村に住んでいる人間達が手を取って固まったという事だ。
「でも、なんで急にこの人達は手を結んだの?」
「領主達がいなくなったからです」
「いなくなっただけでなんで?」
「いなくなったせいで、彼らを守る人間がいなくなったからです。正確に言うならば彼ら自身から守る人間がいなくなりました。なので、彼らは早々に手を結んで一つの共同体となる事で争いを回避することにしたのです」
またサイレントがよくわからない事を言って来た。彼ら自身から彼らを守る人間がいなくなったとはどういう意味なのか。これまたテオが理解できないのでうーんと唸り始める。
「これについても、時期が来たら詳しくお話します。そして最後の三つ目の勢力ですが、街と村から外れた血気盛んな若者達。現在この街でトラブルを起こしている輩達ですね」
これはテオにもよくわかった。つまりは反社である。
「それはわかる」
「理解できて何よりです」
つまりはその反社達のせいで街の治安が悪くなっているという事だ。テオはそう当たりを付けた。
「とまあ、色々と難しい状況です。しかしこれら全てをぱっと解決する方法があります、そうダンジョンマスターになってテオ様がこの土地を支配する事です」
「どう考えても状況が複雑になるだけだって僕でもわかるよ」
「気のせいです」
断固とした態度でサイレントはそう言うが、全くその通り僕の気のせいでしたなんてテオも答えるわけがない。お互いの言い分はここで分かれてしまった。
「ですが、私もテオ様がすんなりと私の言い分を聞くとは思っていません。なので折半案として、この地域の支配は置いとくとしてダンジョンだけでも作ってみませんか?」
「折半……じゃないねえ。九割くらいこっちが負けてるよね」
「そうですが何か?」
ここで反抗しても良かったのだが、テオも少し考える事があった。街の状況が悪くなっているのは間違いない。サイレントがこうして護衛に来たこともそれが理由だ。この状況で自分ができる事が何かと考えると、そう多くない。はっきり言えば自分はただの少年で宿屋の息子だからだ。それはテオも自覚していた。
「ダンジョンを作ることで今の状況がどう良くなるのか聞きたい」
「上手くすれば魔物達を支配下に置けます。これはいざとなればテオ様の戦力となります。次に有用なアイテムを手に入れれば強力な武器にもなります。そしてダンジョン制作を通じてテオ様は自身の魔力を扱えるようになります、それはテオ様が魔法を使う為に必要な事です」
悪魔の取引だ。テオはそう考えた。しかし、悪魔はいつだって人間に魅力的な取引を持ち掛けてくる。そしてこの悪魔は嘘を言わない類の悪魔だ。それもすべてサイレントが計算に入れているのもテオは分かっている。だがテオはそれでも抗う事が出来なかった。
「じゃあダンジョン制作だけでも本腰を入れて行うよ。支配者になるかは別として」
「はいわかりました。テオ様も乗り気になってくれてうれしいです」
サイレントがテオの手を握るとそう言って来た。たったそれだけで顔を赤くしてテオは顔を伏せるが、そこで顔を伏せるべきではなかった。その時のサイレントの表情をちゃんと見れなかったのだから。
「現在、この土地には三つの勢力が出来つつあります。まず一つ目がこの町、つまりテオ様のいる街です」
「うん、まあそれはわかる」
「はい、ただ一つ注意しておいてほしいのが正確に言うと街の自警団が勢力の一つという事です。町全体ではない事が問題です」
「どういう事?」
「つまりは武力を持った存在が権力を持っているという事です。この中にはテオ様含めて普通の町人は含まれてません」
テオはサイレントの言っている意味がよくわからなかった。自分達が含まれていないと言う部分をだ。
「えーっとつまり……えーっと」
「わからないのならここは今度詳しく説明します。では次の勢力ですがこれは近隣の農村を中心にした連合です。最も数が多くて力もありますが、元々は一つの共同体ではない上に、場所もばらけていますので色々と難しい勢力です」
これは理解できた。町に住んでいる自分達ではなくて村に住んでいる人間達が手を取って固まったという事だ。
「でも、なんで急にこの人達は手を結んだの?」
「領主達がいなくなったからです」
「いなくなっただけでなんで?」
「いなくなったせいで、彼らを守る人間がいなくなったからです。正確に言うならば彼ら自身から守る人間がいなくなりました。なので、彼らは早々に手を結んで一つの共同体となる事で争いを回避することにしたのです」
またサイレントがよくわからない事を言って来た。彼ら自身から彼らを守る人間がいなくなったとはどういう意味なのか。これまたテオが理解できないのでうーんと唸り始める。
「これについても、時期が来たら詳しくお話します。そして最後の三つ目の勢力ですが、街と村から外れた血気盛んな若者達。現在この街でトラブルを起こしている輩達ですね」
これはテオにもよくわかった。つまりは反社である。
「それはわかる」
「理解できて何よりです」
つまりはその反社達のせいで街の治安が悪くなっているという事だ。テオはそう当たりを付けた。
「とまあ、色々と難しい状況です。しかしこれら全てをぱっと解決する方法があります、そうダンジョンマスターになってテオ様がこの土地を支配する事です」
「どう考えても状況が複雑になるだけだって僕でもわかるよ」
「気のせいです」
断固とした態度でサイレントはそう言うが、全くその通り僕の気のせいでしたなんてテオも答えるわけがない。お互いの言い分はここで分かれてしまった。
「ですが、私もテオ様がすんなりと私の言い分を聞くとは思っていません。なので折半案として、この地域の支配は置いとくとしてダンジョンだけでも作ってみませんか?」
「折半……じゃないねえ。九割くらいこっちが負けてるよね」
「そうですが何か?」
ここで反抗しても良かったのだが、テオも少し考える事があった。街の状況が悪くなっているのは間違いない。サイレントがこうして護衛に来たこともそれが理由だ。この状況で自分ができる事が何かと考えると、そう多くない。はっきり言えば自分はただの少年で宿屋の息子だからだ。それはテオも自覚していた。
「ダンジョンを作ることで今の状況がどう良くなるのか聞きたい」
「上手くすれば魔物達を支配下に置けます。これはいざとなればテオ様の戦力となります。次に有用なアイテムを手に入れれば強力な武器にもなります。そしてダンジョン制作を通じてテオ様は自身の魔力を扱えるようになります、それはテオ様が魔法を使う為に必要な事です」
悪魔の取引だ。テオはそう考えた。しかし、悪魔はいつだって人間に魅力的な取引を持ち掛けてくる。そしてこの悪魔は嘘を言わない類の悪魔だ。それもすべてサイレントが計算に入れているのもテオは分かっている。だがテオはそれでも抗う事が出来なかった。
「じゃあダンジョン制作だけでも本腰を入れて行うよ。支配者になるかは別として」
「はいわかりました。テオ様も乗り気になってくれてうれしいです」
サイレントがテオの手を握るとそう言って来た。たったそれだけで顔を赤くしてテオは顔を伏せるが、そこで顔を伏せるべきではなかった。その時のサイレントの表情をちゃんと見れなかったのだから。




