3 ホームタウンはじまる世界
──……フィオオオオオン。
おかえりなさい、アリー様。
心中パラメーター正常、脳波コントロール異常なし。VRインターフェースを起動します。
ようこそスマートデバイス『メモリア』へ。
青色のグリッドだけが広がる無の空間へ接続される、ここは私が今装着している最新VRゴーグル機器『スマートデバイス・メモリア』が構築しているフルダイブ空間の中である。
指先をスワイプし、仮想空間に整列してあるバーチャルゲームソフトの中から昨日買ったばかりの大人気大作と噂の最新VRMMO『tera・gaia・online』通称、TGOのダウンロードが丁度正常に行われインストールが完了した所であった。
──……ピコン。
指先でそれをタップする。直ぐ様『TGO』へのフルダイブが開始され、キラキラとした光の粒子に包まれる。数秒もしない内に暗転していた視界が神々しい神々が住まい様な神殿へと移り変わる。
私の身長よりも何倍もある玉座、それと同じくらい大きな扉何もかもが大きくて比較なんてすれば、私なんてミニュチュアの人形くらいのサイズであろう。それくらいスケールが違う次元へと誘われた。私は胸の高鳴りが隠せなくなった。
そんな心持ちの中、どこからともなく女性の声が聞こえてくる。
「目覚めたる、新しき命よ。さあ選ぶのです己の運命を──……。」
──フォン。
そう、告げられ目の前に現れる半透明のコンフィング画面。そこには自分の名前、種族、初期パラメーターの割り振りなど。これからの冒険に必要な情報を考えながら入力していく。
「うーむ。種族かぁ……どしよ。エルフとかも憧れるけど……ここはっと……!! 種族ドラグノイド !! やっぱりゲームではカッコイイ系女子でやってきたいよね、うんうん。」
「初期パラメーター……個人的に近接戦は外せないなぁ……」
──ギュイイン。
とりあえず、パラメーターは脳死でATKに全振り。
「衣装……衣装。うーん、どれも地味だな……。ま、ぱっぱと進めて好きな服買えってことねっと、よし。こんなもんかな。」
初期に用意されているそれぞれテイストの違う3タイプの中から、カッコイイめのものを選ぶ。フリフリとした風になびくマフラー、動きやすそうなホットパンツ、極めつけに肩出しのインナーにブカブカのパーカー。ギャップ萌えと言った所か。上半身のコーデが完璧だったのでこれにした。
「さて、これで行くか。『完了』っと。」
──フィオオン。
……──ふわわん。
ダイブした時に着用したままだった学生服がみるみる内に設定した姿へと変わっていく。
選んだ種族、ドラグノイドである竜人の特徴であろう角が生え、両方の頬に硬質の牙のようなアクセサリーが装備される。
髪型は平凡な黒髪から、艶やかなロングの青髪へと姿が変わっていく。
装い、ヘアスタイル何もかもがこちらの世界の姿に調整され、これで私もすっかりファンタジー世界の住人である。
「うん!! 着てみると、結構可愛いかな? よっし。冒険、スタート!!」
──ピ、ピコン。
設定に使っていた、複数のウィンドウをスワイプしてどけるとホームタウンへ移動するボタンがあり、準備が完了した私はそれをタップする、すると先程天から聴こえてきた女性の声が再びその口を開く。
『世界を救う戦士よ、今その目でこの広い世界を知りなさい』
「はいはい。りょーかい。世界でもモンスターでも何でもかかってきなさいって。私を誰だと思ってるの?……はぁ、誰ってただのゲーム好きの引きこもりか……。」自分で言ってて悲しくなったのでNPCへの切ない返答はやめることにした。そんなやり取りをしている間に自分の種族『ドラグノイド』のホームタウン『エンパイア竜人帝国』へと転送が開始される。
──……フオォン。
ストン!
「いでっ!! なんじゃこの雑なスポーンは……。幾らアクティブユーザーが多いからってちょっと雑なんじゃないの? はぁ、まあいいや……。」
「わっ!!! ここが……!! 私のホームタウン」
こちらの世界へフルダイブして初めて見た景色の美しさに息を飲む。先程ついた自分の小さな悪態がどうでも良くなるくらいであった。
私がスポーンした地点は、竜の渓谷。人によっては私の様に目を輝かす場所でも無いかもしれない。
だが、ゲームを楽しむ上で何よりも戦闘が好きな私はこのモンスターがうじゃうじゃと潜めき採取アイテムだけでサバイバルが出来る。
──……『間違いない、この狩場は最高だ……。』
「よーし!! やるぞっ!!!」
──……ズオン!!
私は渓谷の崖からふわっと飛び降りる。
魔物の持つアイテム、経験値を求めて。『DGO』世界での私の冒険が今始まるのであった──……。




