めんどくさい男
「おーい、聞こえてるかー?高橋ー?」
なんだよ。人が考えごとしてるのにうるさいな。
「おーい」
「なんだよ」
考えるのをやめて僕の名前を呼んできた彼、中川陽太に目をやった。
「そう怒んなって」っと僕の肩を叩いてくる。
「で、どうした?」
「ん?なにが?」
あほか
「用事があるから僕を呼んだんじゃないのか?」
「あーそうだ!これに名前書いて欲しくて」
そう言ってA4サイズの画用紙をクリアファイルから取り出してきた。
そこにはクラスメートの名前がずらっと並んでいる。
「なにこれ」
「もうすぐ音楽の林先生が産休になるだろ?林先生には1年の時からみんなお世話になってるし、みんなで何かプレゼントしようってなって」
「へー」
林先生、か。担任ではなかったけど音楽の授業でお世話になったな。
誰にでも優しくて、柔らかい雰囲気が人気だった。
林先生ならなんか知ってるかな?
「高橋も名前書いて」
「うん」
シャープペンを取り出し、さっさっさっさと書く。
『高橋隼斗』
「お前足速いよな」
「そう?」
「うん。名前からしてそう」
「よく言われる」
苦笑いしながらそう答えると一つ疑問に思った。
なんでこいつがこの紙を持っている?
学級委員でもないのに。でも男女関係なく人気者だからなのか?
でも休み時間は一番前の席で寝てるか、誰かと話しているしかないしな。
「隼斗くん……、もしよかったらなんだけど、」
「なんだよ。君付けで呼ぶなよ、キモいわ」
「数学の宿題の答え写させてくれませんか……?」
やっぱりこっちが本題か。
「僕以外に聞いてよ。誰でもいいだろ」
そう言って立ち上がろうとすると中川は俺の脚に抱きついてくる。
「は、はなせ!」
「嫌だぁー!高橋のがいいの!」
「は!?なんでだよ!」
教室のあちらこちらから「陽太可愛いー」「陽太くんが駄々こねてて萌える!」って声が聞こえるのだが。こっちは迷惑なのに。
「高橋見せてあげればいいのねー」「陽太可哀想」っていう声がめっちゃ聞こえてくるんだが。
相変わらず中川は「嫌だ嫌だ!」って駄々こねてるし。
……なんか俺が悪いってことになってないか?
「はぁ〜、めんどくさ」
僕は机からノートを取り出して中川に渡した。
「今日だけだからな。次からはないから」
「うぅ〜……高橋ありがとう!」
それと同時に「きゃー!」「陽太可愛すぎ〜!」「高橋くんいいなー!」っていう謎の言葉が聞こえるんだが。
女子って謎だな。こいつのどこが可愛いんだか。
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