21 祭りの準備
「ところで、白い石を光らせることができるのは私だけのような気がするのだけど大丈夫?」
「その点は問題ありません。四天山で同時に儀式をしていた時には、『白光石』を持参することで対応しておりました。この石は幻術の力を込めて保存できる希少な品で、色々と探してはみましたが一族に代々受け継がれてきた八つほどしか存在を確認されていません。込めた力は使い切りですので、必要になるたびにそれを族長にお渡しして、力を封じていただいておりました」
「なら私がそれに力を入れ込めて皆に渡しておけば良いのね」
心配事の解決策も、ちゃんと一族に伝わっていた。
翁がすぐに家の奥から石を持ってきてくれる。
掌くらいの大きさの、丸みを帯びた石である。
「かつては族長のお屋敷に保管されておりました。公主さまの御手に無事戻せましたこと、嬉しく思います」
「そうなのね。守り抜いてくれて、ありがとう」
私は『白光石』をじっと見てみる。
それは一見すると白っぽい色をしているけれど、角度によって虹色に輝きを変える不思議な石だった。
どうすれば力を込められるかなど、私は知らない。知る由もない。
そのはずなのに、まるで本能に導かれるようにして私はその石を両手で握りしめ、額に当てた。
目をつぶり、意識を一点に――石に集中させる。
「ラカーポ・タルム」
唱えた瞬間石が淡く光り、私は試みが無事に成功したことを直感的に理解した。
「ああ、誰に教えられずともどうすべきかお分かりになるのですね……。今の御姿は、在りし日の族長そっくりでいらっしゃいました」
翁がまた涙目になって、そんなことを呟いていた。
私はそのままの勢いで、残りの石にも力を封じていった。
王宮での儀式は殿下が取り仕切り、そこに私も同席する。よって石は必要ない。
石は二つずつが、四天山で儀式を行う各隊に配布されることになった。
一つあれば事足りるはずだが、何があるかわからないのでもう一つ予備に置いておける形だ。
「よろしくお願いするわね」と渡すと、一族の皆は「全力で任務を遂行します!」と引くほどの圧で応じてくれた。
……非常に頼もしい。
儀式の実施は、準備や移動などの日数となるべく早くやらなければという事情を突き合わせて、十日後と定められた。
しかしそれでは現在里に迫る嵐には対応できないので、その応急処置と石を使う予行練習を兼ねて、前に王宮でやったように石版を使って五色の光を天に伸ばしてみることにした。
里には王宮にあったような五色の石の嵌め込まれた石版が確かにあって、それを翁とその娘が二人で持って天に掲げる。
翁とその娘で光以外の四属性をまかなえるらしく、四色の光が石から放たれた。
そして、片手で石版を持つ翁がもう片方の手で『白光石』を持つ。
すると、白い光も発されて、五色の光がまっすぐ天に伸びた。
光があたってしばらくすると重く垂れ込めた雲に切れ目が見えて、さらに時間を追うごとに雲は薄くなっていった。
「……大丈夫そうだな」
「はい。問題ないと思います」
「では今使った石にリラがもう一度力を込めたら、我らは王宮へ戻ることにしよう」
「承知いたしました。もし何かあれば風に乗せてヴィルに伝えます。良いな?」
「お任せください〜」というヴィルの気の抜けるような返答に、翁が「こんな態度で……」などと殿下に申し訳無さそうにしている。
殿下はいつものことだと苦笑し、そして皆との再会を誓って私たちは里を離れたのだった。




