6.妖艶な美女ですね
よろしくお願いいたします。
クリスティーナ:エリーの目は、空色でとっても綺麗なのですわ!
あの実技試験から、3週間ほどたったある日、父から、『呪いを受けたクリストファー様は、女性になってしまったよ。今は療養という名の淑女教育を頑張っているんだけど…。週末にでも見に行って、クリス君にいろいろと指南してあげてね?』と言われました。
もちろん、わたくしは、急いで先触れを出し、その週末に、お見舞いへ行きました。
アボット侯爵家の応接間に通され、出されたお茶を飲んでいたら、ドアをノックする音がした…。
入ってきたのは、イリサ侯爵夫人と、夫人にそっくりなご令嬢だった…。
ぼぉっと、見入ってしまっているのに気づき、わたくしは慌てて立ち上がり礼をしました。
「お待たせしてしまって、ごめんなさいね?エリーちゃん、元気だったかしら?学園に行っている間に、とても綺麗になり、見違えたわ!」
「ご無沙汰しておりますわ。なかなか、お目にかかれず、申し訳ありません。イリサおば様も、お元気そうで、お変わりなくて…。」
わたくしは、イリサおば様に挨拶を返し、ご令嬢にも挨拶をしようと、顔をあげ、相手の目を見た時…
「クリス…ですわよね?」
「ふふっ。エリー?そんなに、目を見開いたら、宝石のような綺麗な目が落っこちてしまいましてよ?」
「なっ…!」
クリスから出た女性の声に違和感がありましたが、それ以上に、口に手をあて、可愛らしく笑う仕草や、イタズラが成功したという感じに話す様は、本当に女性で…。3週間前は男だったのに…!
驚きすぎて、わたくしは、絶句してしまいました。
昔から、女に見られがちだったので、男らしい、豪快さを意識しいたクリストファー様…。
アーサー様から、『しっかりといい筋肉が付いてて、ゴツい男の体つきになってきたぞ。あと、ちゃんと付いてるぞ!』と、ついこの間、変な情報を聞かされたばかりだったのを思い出しました。
なのに。なのに…っ!
「あらあら…。エリー。わたくしに会えて、感極まってしまったかしら?」
「ばかっ…!茶化さないでくださいませ!」
わたくしの目から涙が出てしまったのを見て、クリスは、困った顔をしながら言いました。その仕草は女の子そのもので…。
「あなたはっ!!クリストファー、なのでしょう!?女扱いする奴を打ち負かして、周りに認めてもらう努力をする、男のクリストファーじゃないですかっ!!」
小さい頃から、人一倍の努力家で、アーサー様に振り回されて、困った顔をよくしてた…。
言葉が続かなくて、思わず、下を向いて泣いていたわたくしに抱きついてきて、クリスは言いました。
「ふふ。エリーはいつも、僕たちを心配してくれてたね。まぁ、アーサーは、ほっとくと何をしだすかわからなかったけど…。うん、エリー。ありがと。」
そう言って、わたしくしから離れたクリスは、泣きそうな、嬉しそうな顔をしていました。
「さぁ?女同士、いろいろ話して、お互いにスッキリしなさい?あ、エリーちゃん。寮には伝えておくから、今夜は、泊まっててね♪では、またね。」
「イリサおば様、お心遣い、ありがとうございます。」
イリサおば様は、わたくしの言葉を聞いた後、部屋から出ていきました。
「じゃ、僕の部屋でしゃべろう?」
クリスの部屋へ移動して、ソファーに隣同士で座って、出されたお茶を飲んで、一息ついたあと、クリスは話し出しました。
「ん~?何から、話そうか?あ、僕ね、クリストファーじゃなくて、クリスティーナだよ。まぁ、愛称はクリスのままだから、変わんないかな?」
「やっぱり、近くで見ると、女の子の体ですね。クリスは、イリサおば様と瓜二つだから…二人で並ぶと双子みたいでした。」
「僕も、鏡見てそう思ったよ!お風呂にある鏡でね、本当に女の子なのか…。変な話し、自分の体をペタペタ触ってしまったよ。」
「まぁ、当然じゃないかしら?わたくしもきっとやりますわ。でも不思議なのは、クリスの仕草に違和感がないことです。ただ、真似て出来るものじゃないのですよ…。というか、板についてる、ように見えますわ…?」
そんな事を言ったわたくしに、驚いた顔をしました。そのあと、黙って考えていたクリスは、困った顔をして、口に人差し指をあて、話し出しました。
「エリー。内緒話、しようか?誰にも、教えないで。」
「クリス…。とっても妖艶な美女の仕草ですね?大丈夫ですよ。わたしくしは口が固いって、知ってますでしょ?」
ありがとうございました。
次で、エリザベス嬢は終わりかな~?