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塩対応のクラスメイトが、実は好き避けだった件  作者: 黒宮 シズク


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第1話 嫌われていると思っていた

はじめまして。本作を読んでいただきありがとうございます。


この物語は、「嫌われていると思っていた美少女が、実は好き避けしていただけだった」という、じれったくて甘い青春ラブコメです。


主人公は「絶対に嫌われている」と勘違いし、ヒロインは「好きすぎてまともに話せない」という、両片思いならではのすれ違いをたっぷり描いていきます。


焦れったい距離感や、少しずつ縮まっていく二人の関係を楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、第1話をお楽しみください。


四月。


新学期が始まって一週間。


俺――神崎悠斗は、今日もひとつの事実に傷ついていた。


「おはよう」


朝、教室に入った俺は、窓際の席に座る少女へ声をかけた。


クラスの誰もが認める美少女。


朝倉紗雪。


黒く艶やかな長髪。


透き通るような白い肌。


整った顔立ち。


入学してからずっと男子たちの話題の中心だった。


そんな彼女は俺の声を聞くと、一瞬だけこちらを見た。


しかし。


「……お、おはよう」


小さな声で返事をした直後、すぐに視線を逸らした。


そのまま教科書を開き、会話終了。


たった二秒。


以上。


俺は苦笑いした。


「やっぱ嫌われてるなぁ……」


隣の席の友人、山田健太が吹き出した。


「まだ気にしてんのか」


「いや、気にするだろ」


「美少女に嫌われるのも才能だぞ」


「嬉しくねぇよ」


俺は机に突っ伏した。


朝倉紗雪。


同じ中学出身。


一年生の頃は普通に話していた。


それなのに。


高校に入ってから急に態度がおかしくなった。


目が合うと逸らされる。


話しかけると慌てる。


近付くと離れていく。


最初は気のせいだと思った。


でも。


何度も続けば分かる。


嫌われているのだ。


俺が何かしたのかもしれない。


覚えていないだけで。


「神崎」


突然名前を呼ばれた。


顔を上げる。


担任だった。


「職員室にプリント持っていってくれ」


「はい」


俺は席を立つ。


すると。


ガタッ。


なぜか朝倉が大きく肩を震わせた。


「?」


俺が見ると。


彼女は慌ててノートへ視線を落とした。


やっぱり変だ。


俺は首を傾げながら教室を出た。



---


昼休み。


購買へ向かう途中だった。


曲がり角を曲がった瞬間。


ドンッ。


誰かとぶつかった。


「あっ」


小さな悲鳴。


顔を上げる。


朝倉紗雪だった。


「ご、ごめん!」


俺が謝る。


しかし。


紗雪は顔を真っ赤にした。


そして。


「ひゃっ!?」


なぜか飛び退いた。


「え?」


俺が固まる。


紗雪はさらに慌てた。


「あ、あの、その……」


言葉が続かない。


数秒後。


「ご、ごめんなさいっ!」


そう言って逃げた。


全力で。


廊下の向こうへ。


「……」


俺は立ち尽くした。


周囲の生徒たちも見ていた。


気まずい。


非常に気まずい。


健太だったらこう言うだろう。


『完全に嫌われてるな』


と。


俺もそう思う。


普通、好きでもない相手から逃げたりしない。


ましてや全力疾走なんて。


「はぁ……」


ため息が漏れた。


俺は購買へ向かった。



---


放課後。


部活のない俺は帰り支度をしていた。


ふと窓の外を見る。


校門へ向かう生徒たち。


その中に朝倉紗雪の姿があった。


女子たちに囲まれながら歩いている。


楽しそうだ。


笑顔だ。


俺に見せる顔とは全然違う。


やっぱりそうなんだろう。


俺だけだ。


避けられているのは。


嫌われているのは。


少し胸が痛んだ。


中学の頃は普通に話せたのにな。


何が変わったんだろう。


俺は答えの出ない疑問を抱えたまま席を立つ。


その時だった。


窓の外の紗雪が不意にこちらを見た。


目が合う。


一瞬だけ。


本当に一瞬だけ。


すると。


紗雪は驚いたように顔を赤くして。


慌てて前を向いた。


そしてそのまま校門の外へ消えていった。


「……なんなんだよ」


思わず呟く。


もちろん答える人はいない。


この時の俺はまだ知らなかった。


朝倉紗雪が俺を嫌っているどころか――


誰よりも俺のことが好きだということを。


そしてその事実が、もうすぐ俺の日常を大きく変えることになるのを。


――続く。

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