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カードゲームは卒業したのにTCG学園に放り込まれたんだが ~イカサマ王と呼ばれた俺はカードゲームなんかしたくない~  作者: ゼ二平


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第31話 嘘を嘘だと見破る程度の能力

 奈津は嘘を嘘だと見破ることができる。

 その力と自慢のポーカーフェイスで今までの対戦を勝ち抜いてきたのだ。

 俺からすればほとんど超能力だと思うのだが、本人曰くそうではないらしい。


 「嘘かどうかはわかる。でもそれだけ」


 あくまでポーカーで鍛えた術で、元々は相手のちょっとした仕草や表情から、相手の手の強さを判断するための力だ。

 間違っても読心術が使えるというわけではないし、必ず真実がわかるわけでもない。

 そもそもの問題として、質問に答えてくれないと意味がないらしく、真っ向から無視されたりすると嘘の判定すらできない。

 その場合はせいぜい『何かを隠している』という事がわかる程度らしい。

 でもそれでも。


 「……十分だよ」


 今のにっちもさっちも行かない状況からすれば、何よりの手がかりだ。

 さっそく行動を開始した。


 「……君、イベント戦で2人チームだったよね?」


 まず声をかけたのは、俺たちとはマッチしなかったが2人組チームを組んでいた男子生徒。話しかけたら、露骨に嫌な顔をされてしまった。


 「うっ。だ、だからなんだ」


 「ひょっとして……君も誰かにチームを組むように言われたんじゃない?」


 「え、ち、違う!」


 「嘘」


 奈津がきっぱりと言う。


 「本当に違うって!! 俺はただ友達がいなかったから組む相手がいなかっただけで!!」


 「それは本当」


 彼女の言葉に、がくっと膝を折ってしまった。


 「……かわいそうだからやめてあげて」


 俺も前までそうだったからその気持ちはとてもよくわかる。だからこそこれ以上彼の心にダメージを与えるのはしのびない。


 「……頼むよ。何でもいいから、知っている事を教えてくれないかい?」


 できるだけ優しくそう問いかけたのだが、彼は何かに怯えているかのようにぶるぶると体を震わせて悲痛に叫んだ。


 「言えないんだって! 本当に! 言ったらあいつらみたいに退学にさせられちまうんだって!!」


 「……なんだって?」


 彼はしまった、という顔になって慌てて両手で口を塞いでいる。

 思わず奈津の方を見る。彼女は淡々と頷く。


 「本当」


 じゃあ、あの3人は見せしめのために退学にさせられたっていうのか?


 「なんであの3人が……俺たちに負けたから、か?」


 そう尋ねたが、勘弁してくれ、と言いたげに涙目になっていた。

 思わず舌打ちしそうになるのを我慢して唇を噛む。奈津がそれに目ざとく気づいた。


 「怒ってる?」


 「……ちょっとね」


 自分の都合で他人の人生を無茶苦茶にする奴。一体何様だというのだ。


 「……でも退学にするって言ったって、どうやって?」


 退学になる、つまりはゴールドが0未満になるには所持ゴールド以上に賭けて、勝負して負ける必要がある。

 賭けるゴールドは普通ならばその月の最低ゴールド(入学時は50だったが、今では90だ)だが、相手との合意があれば引き上げることができる。

 逆に言えば、『自分の意志で引き上げる必要がある』ということだ。

 もっと言えば、かつての俺のように対戦自体を拒否することだってできる。

 『レイズチケット』を除けば、ゴールドが枯渇している状況で月に一度はランクバトルをしないといけないというノルマ達成のために対戦して敗北するという状況ぐらいでしか、通常はゴールドがマイナスになるなんてありえないはずなのだが。


 「……そういえば君、対戦数が昨日より増えているよね」


 「は?」


 電子掲示板に表示されるランキングは、スマホでも見る事ができる。

 画面の中のデータと、記憶の中にある彼の昨日のデータを比較する。


 「昨日の時点では1勝5敗だったと思うけど……今は2勝5敗になってる。ゴールドも昨日は120だったのが310に増えてる」


 「え? ちょ、な」


 「勝った分のゴールドはパックに変えたのかな……? あれ、よく見るといつもより勝数と負け数が増えている人が多い気がする」


 「そ、そりゃ、普通に対戦してたんじゃないか?」


 「いや、だって昨日の放課後はみんな全然対戦していなかったし……それはおかしいんじゃない?」


 昨日のあの様子からすると、こんなに対戦が行われているとは思えない。

 そう指摘すると、がっくりと肩を落としてしまった。


 「ありえねぇ……。なんでそんな記憶力いいんだよ」


 「いや、まぁ……」


 カードリストを一瞬で覚えたり、誰がどのカード、どのデッキを使っているかを覚えたりとか。

 昔からちょっと物覚えがいいだけだ。奈津たちの持つ人間離れした能力には到底及ばない。


 「私のことは覚えていなかったのに」


 「……だからごめんって」


 奈津が不服そうに呟いて思わず謝る。意外と根に持つタイプだったようだ。

 去年初めて会った時の奈津は帽子で顔も良く見えなかったし、特徴的な銀色の髪もほとんど隠れていた。あの暖かい笑顔は覚えていたけど……学園で会った奈津はずっと無表情だったし。

 会った時の印象が違うとうまく記憶と一致しなくなるし、さらに言えばカードゲーム関連のことはできるだけ思い出さないようにしていたのだから許して欲しい。

 それはともかく。


 「この謎に増えた対戦数は……きっと放課後遅い時間……何も知らない生徒達が帰った後、夜になって対戦したんだ」


 データに間違いがないのならば、そうとしか考えられない。

 それも1人や2人じゃない。だいたい10人ぐらいはいるはずだ。


 「でも。19時以降は教室に入れない」


 「うーん……確かに。カギでも盗んで来たのかな……?」


 ちらっと顔を見たが、相手は慌てた様子で言った。


 「お、俺は知らねぇ」


 「本当」


 奈津がそういうが、この慌て方。


 「……でも、教室に入ったことは認めるんだ?」


 「うっ」


 どっちにしろ、それだけの人数が夜に教室に集まってただ対戦するだけなんてありえないだろう。


 「ひょっとして……退学になった3人からゴールドを奪って……その受け渡しをしたってこと?」


 3人から奪ったゴールド、それを仲間内で賭けてすぐに降参すれば実質譲渡できる。

 この受け渡し方法自体はちょっと前から教室内でも話題になったことがあるが、基本的にT組は全員が競争相手なのであまり実用性は無い、とも言われていた。


 「う……」


 相手は言葉に詰まった。チラッと奈津を見る。


 「何か隠している」


 十分な答えだ。


 「だって……しょうがないだろ。そうでもしないと、いつかゴールドが無くなっちまうだろ」


 戦績が残ってしまうがパック化せずにゴールドで受け渡すのは、ゴールドの方が大事だからだろう。

 それも頷ける。この男は1勝5敗。つまり負け越している。

 この男が対戦している姿はあまり見たことがないので断言はできないが、たぶん持っているカードも強くないのだろう。だとしたら、カードよりもゴールドを欲しがっても不思議ではない。

 問題はどうやって無理やり賭けるゴールドを上げさせたのか、だが……。

 目の前の男からそれを聞き出そうとしたのだが、


 「これ以上は頼む。勘弁してくれよ……呉屋みたいに、お前たちに喋りすぎると俺まで退学させられちまう」


 「……何だって?」


 思わず聞き返す。


 「彼が退学させられたのは……俺に色々事情を話したからだっていうのか?」


 「そうだよ! だから頼む! これ以上は本当に勘弁してくれ!」


 そう言ってキョロキョロ辺りを見て誰もいないのを確認しながら逃げるように去っていった。


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