三〇〇年目の出会い
はじめまして。
これは、
一言で言うと、食欲で世界を変える物語です。
最終兵器AI少女とジャンクフード好きな少年が、
終末世界でテリヤキバーガーを焼こうとします。
その結果、何が起こるのか。
ロボも出ます。バトルもします。
でも、一番書きたいのは少女と少年の関係です。
そして、それを取り囲む人々。
ゆるく、強火で、お付き合いいただければ嬉しいです。
この世界では、
「美味い」と感じた時点で――異常者扱いだ。
だが俺は知っている。
テリヤキバーガーの味を。
甘くて、しょっぱくて、脂っこくて。
脳の奥が焼けるみたいに、どうしようもなく“幸せ”になる味だ。
だから――俺は今、追われている。
下水道を全力で駆ける。
跳ねる汚水。滑る足場。腐臭と油の混ざった空気が肺にまとわりつく。
背後から、機械音。
『警告。個体識別SG-774。情動スコアE判定』
「チッ……!」
『規定値を逸脱。“異常者”として再分類します』
金属の羽音。サーチライトが闇を裂く。
『――排除対象に指定』
「やっぱそうなるよな!!」
瓦礫を蹴り飛ばし、速度を上げる。
止まれない。
止まった瞬間、終わる。
だがそれでも――
「……絶対に、食う」
視線の先。
地上にそびえる装甲施設。
第一配給センター。
今日、そこに運び込まれる。
この世界で最も禁じられたもの。
そして最も人間を狂わせるもの。
――テリヤキバーガー。
三年前。
『お兄ちゃん、お腹空いちゃった』
頭にこびりついた声。
『甘くて、あったかいもの、食べたいな』
瓦礫の影で、少女は笑っていた。
『テリヤキバーガーとかあったら、嬉しいな』
――間に合わなかった。
「……だからだよ」
鈍い銀色の義手を握りしめる。
三年前、食糧倉庫に忍び込んだ代償。
そして、取り戻せなかった命の証。
「今度は、絶対に逃さねえ」
その瞬間。
カチカチ、と義手が震えた。
「……あ?」
勝手に動く。
引っ張られるように、視線が逸れる。
マンホール。
古びた蓋が、わずかに軋んでいた。
ギギギ、と。
「おい待て……!」
嫌な予感。
だが止まらない。
義手が勝手に力を込める。
――ドン!!
マンホールの蓋が吹き飛んだ。
光。
一斉に、サーチライトが降り注ぐ。
『対象を“廃棄物”として再定義。強制排除を開始します』
「チッ、最悪だ……!」
逃げ場は一つ。
シオンは、そのまま穴へ飛び込んだ。
落下。
衝撃。
腐臭。
そして――
ガガガガッ、と目の前の壁が開く。
現れたのは。
白銀の巨人。
十メートル級。翼を備えた、異形の機体。
『絶望しました』
「……は?」
頭の中に、声。
『結論から言います。あなたは人類の失敗作です』
「初対面でそれかよ!?」
白銀の胸部。
そこから、銀髪の少女のホログラムが浮かび上がる。
透き通る碧眼。
感情を感じさせない視線。
『私の名はセラ。自律思考型管理AIです』
一拍。
『脳内優先順位――第一位、ジャンクフード。第二位、現状維持』
『……ゴミですね』
「言い方ァ!!」
『三〇〇年ぶりの起動キーが』
セラはわずかに目を細める。
『よりにもよって“前頭葉がテリヤキソースで侵食された野生児”とは』
「だからその言い方やめろって!!」
その時だった。
――ドォォォォン!!
天井が、赤熱した円を描いて崩れ落ちた。
焼き切られた鋼鉄が降り注ぐ。
その向こうから、降下してくる影。
四本のアーム。
蜘蛛のような脚。
中央で光る単眼。
全自動処刑機。
『重要隠匿資産への不正アクセスを確認』
無機質な声が響く。
『対象を廃棄物として処理します』
赤い照準が、シオンを捉えた。
逃げ場はない。
背後は壁。
上は敵。
前には――正体不明の巨人。
「なあ、セラ」
息を吐く。
「これに乗れば、あいつ止められるんだな?」
『論理的には可能です』
一拍。
『ただし、あなたの脳は出力に耐えられず焼き切れる可能性が高い』
沈黙。
「……上等だ」
シオンは笑った。
「どうせ死ぬならさ」
一歩、踏み出す。
「うまいもんのために死んだ方がマシだろ」
セラの瞳が、わずかに揺れる。
『……理解不能です』
だが。
『合理的ではありますね。“あなたにしては”』
白銀の巨体が光を帯びる。
『神経接続を開始』
赤い照準が胸に固定される。
『――ようこそ、マスター』
一拍。
『“最も贅沢な部品”へ』
閃光。
すべてが白に染まる。
その瞬間。
都市全域の食料管理AIが、異常を検知した。
『警告。“味覚”の逸脱を確認』
『……概念汚染レベル、上昇中』
ここまで読んでくださってありがとうございます。
少しでも「この二人どうなるんだ」と思っていただけたら、
ブックマークや評価で応援してもらえると、とても励みになります。
次回も強火でいきます。




