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センテンススプリング砲作戦

 翌日は何もなかったかのように登校した。


 クラスメイトたちが俺を見て驚く。あれだけの目に遭って学校に来るとは思ってもみなかったのだろう。あいにく、俺は復讐心と闘争心に満ちている。


 岡莉奈が視界に入る。どこか申し訳無さそうに、かすかな目礼をした。俺は目だけで返事をする。やはり彼女は好きでカースト上位にいるんじゃない。それだけは確信した。


 教室で授業の開始を待つと、騒がしい鮫島一味がやって来た。


 俺を一瞥。薄笑いを浮かべる。俺は目を逸らす。闘争心を出してはいけない。なるべく彼らに恐れている風を装って、奴らの嗜虐心を育ててあげないといけない。


 今日はケンカをしにきたんじゃない。奴らの犯した罪の証拠を収めるためだ。俺のやり返している箇所があれば、あいつら一味はここぞとばかりに正当防衛を主張するだろう。スクショの捏造だってやる奴らなんだ。絶対に動かぬ証拠を手に入れないといけない。


 そういったわけで、俺はいつもの陰キャを演じた。というか、素で過ごすことにした。


 すでに小型カメラを撮影モードにして設置してある。録音用のレコーダーも予備で用意してある。いつこの学校でイジメが起こったとしても、動かぬ証拠が出てくることになる。


 まあ、プロが見たらバレバレの隠し方なんだろうけど、少なくとも鮫島たちはそういった潜入捜査のプロではない。絶えず他者からの承認を渇望していて、それを得るためには他の人々をどれだけ傷付けても気にかけない。そういった手合いだ。


 それならば、俺のやることは正義の盗撮になる。盗撮が正義かって訊かれると微妙なところだが、それによって救われる人が他にもいるのであれば悪の限りではない。少なくとも俺はそう信じている。


 さあ、来いよ、鮫島。昨日俺にディスられてはらわたが煮えくり返っているんだろう?


 そうやって冷静さを失ったお前は、必ずミスを犯す。それだけは確信している。


 多少は痛い目に遭うだろうが、それが逆転に繋がると思えばいくらだって耐えられる。昨日みたいに腹を蹴り上げてくれたら涙を流して喜ぶだろうよ。いつもよりもマシマシに痛がってやるよ。その方がネットの民は怒るだろうからな。


 独り密かに復讐に燃えていたが、いつまで経っても鮫島一味はからんでこなかった。



 休み時間も、昼休みも、わざわざ図書室へ行かずに襲撃を待っているのに奴らは来ない。仲間同士でバカ話に花を咲かせているだけだ。


 クソ、こんな時に限って使えない奴らめ。


 イジメられないことに不満を持つのもおかしな気もするが、俺には報復のチャンスが懸かっているのだ。その瞬間を掴むためには、それなりに神経を使う。


 いつも通りにするとは思ったものの、実際にはいつも通りではない。緊張した状態を緊張していない風に装わないといけないので、余計にエネルギーを使う。


 時間だけが空しく過ぎていく。集中力を使い果たした俺は、すっかり疲れていた。


 結局そのまま一日が終わる。まさかの不発。盛り上げようとでもしているのか、神も味なことをする。……いいや、皮肉だ。正直なところ、奴らがからんでこなかったことでイライラしている。


 下校時に鮫島と目が合った。嫌な笑いを浮かべている気がした。その後を付いていく真田も、明智もどこか俺を小バカにするような顔をしていた。実際にバカにしているんだろうが。


「今日はボウズか」


 誰もいなくなった教室で一人呟く。


 気は張っていたものの、奴らの決定的な証拠を掴むことは出来なかった。


 まあいい。時間はまだある。数日以内には奴らもボロを出すだろう。隠しカメラとレコーダーを取り出すと、周囲を見渡してから教室を後にする。


 明日はもっと上手くやらないと。


 だが、俺は気付いていなかった。


 今夜にでも悲鳴を上げるのは、むしろ俺の方だったということに。

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