新しいゲート
パラサイトモフは想像以上の鉱石であった。
エネルギー伝導率や摩擦抵抗が予想の数値をうわまった。
何より宇宙空間でも稼働できるという実験が成功した、宇宙船にワープシステムを付けることも可能になる。
まだ理論上の話だが、近い将来の夢として研究されている。
パラサイトモフによる最初のワープゲートは実験施設を兼ねてイーシャンとケックスに設置された。
「お姉ちゃん。」
混血のユージンがゲートから飛び出してきた。
近くて遠い姉弟、リーライは仕事の為に来れないが、ユージンには警護と教育係がついている。
倫太郎も仕事だが、二条が孫二人と遊ぼうとついてきている。
沙羅は祖父と遊ぶ年ではないが、ユージンは遊んでくれる年ごろである、可愛くてしかたない。
今日も重役会議があったはずなのだが、仮病を使ってきた、どこの小学生だ。
その代わりに倫太郎が引っ張り出されたのだ。
「ユージンお弁当作ってきたの、食べよう。」
沙羅が二条とゲームをしているユージンに声をかける。
「じいじも手伝ったんだぞ。」
「お祖父様は味見を手伝っただけじゃないですか。」
調子いいんだから、と沙羅が笑う。
妻を早くに亡くした二条にとって、美鈴が行方不明になった時は絶望しかなかった。
こんな未来が来るとは思いもしなかった事である。
日本企業の経営者にとって、家庭に重きを置く者は多くない、それほど過酷な仕事なのだ。
24時間世界経済は動いている。
そろそろ引退して、孫遊びをしたいが後継者はまだまだ勉強が必要なようである。
ケックステクノロジーという巨大企業の後継者として英才教育を受けてきた倫太郎だが、金融は違う分野である。
ただし、20代で創業家とはいえ社長を継ぐ能力であり、MBAも取得している倫太郎である、金融分野でも経験を積めば二条金融グループを任すことができるだろう。
倫太郎自身もケックスの社長として忙しい身の上なのである、早急に補助のできる人材を育てなければならない。
あれを移動させて持ってくるか、と心当たりの人物を想定する。
「じいじ。」
ユージンの呼ぶ声がする。
引退を考える二条に対し、これからイーシャングループと言う超巨大企業グループを背負っていくユージン。
今の経験がユージンの基礎となっていく事をリーライも二条も知っている。
「ユージン、留学するってきいたけど。」
沙羅の問いかけに、ユージンがジュースを継ぎ足しながら答える。
「パパの出身校に行くよ。これからの人脈形成に必要だからね。」
「凄いこと言うのね。」
「当たり前だよ、パパの後を継ぎたいから頑張る。」
おいしいね、とチキンサンドをほおばっている。
子供の手なのに、この手はすでに何万人、何十万人という社員と繋がっている。
「お姉ちゃん、僕はママとパパの子供であることに恥ずかしいことなんてないよ。」
この子は、父と母のことを理解しているんだ。
両親が結婚していない事は珍しくないが、ユージンはさらに特殊である。
「ユージンも私も望まれて生まれてきたわ。」
ママはリーライ・イーシャンを愛していた、でも鷹司宏尚を愛していた時もあったのだ。
二条聡は父親の違う孫二人の会話をじっと聞いていた。
「お姉ちゃん、またね。」
バイバイとユージンが帰って行く。
「沙羅もユージンも大事な孫だ。」
二条聡が、言葉をつなぐ。
「大事に1番も2番もない、比べようがない程大事だからね。」
「ありがとうお祖父様。」
ママは私のパパも愛していたと思いたい。
「バカだな、沙羅。」
ちょっと考えてごらん、と倫太郎が沙羅に言う。
「時系列だよ、リーライ・イーシャン、鷹司宏尚、リーライ・イーシャン、ダブってないだろう、寂しがりの女性だっただけさ。」
ちゃんと愛されて生まれてきたのだよ、と囁く。
「私には、倫太郎さんだけだからね。」
「浮気したら、許さないからな、籠に閉じ込めるから。」
「それって私のセリフでしょ。」
顔を見合わせ笑い合う。
「生まれてきてありがとう。生きていてくれてありがとう。」
「倫太郎さん。」
沙羅が倫太郎にしがみついて泣いている。
甘い恋人達には、全てが恋のスパイスだ。
大人の倫太郎には沙羅を我慢する気はない。
沙羅の涙を舐めとり、指を絡める。
新しいゲートは空港建設と共に発表された。
イーシャンとケックスによる運営、資金は二条とイーシャン、物流は鷹司とイーシャン。
従来の空港機能の追加という形で各国の空港にワープゲートが建設される予定である。
滑走路の数だけゲートが追加されるが、巨大な機械建設と巨額の資金が必要になるため、イーシャン、二条どちらかの傘下に空港が入るか、自国の財政投与となる。
飛行機のエネルギー源とワープのエネルギー源は違うため、それの補充保管も問題になる。
だが、そのゲートは宇宙にも繋がるようになるのだ。増設を拒否する空港はない。




