ライの正体
純血日本人にとって、海外だろうが宇宙だろうがワープゲートを使えば通勤通学ができる。
沙羅も日本の二条の屋敷からスイスのお嬢様学校に通学している。
まったく新しいワープシステムが公開されたが、不安定で成功率は低い、それは誰でも使用可能で改良されるのが期待されている。
開発したのは中国のイーシャングループの電機メーカーである。
ケックステクノロジーでも純血日本人でなくともワープできるように開発は100年続いている。10%台の低い成功率なら開発されているが、実用化には遠い。
イーシャンエレクトロンのワープシステムの成功率は公表されていないが、100%でないと実用はできないものである。
イーシャングループは総帥が代替わりしてから、ワープシステム開発に力を入れているようだ。
巨額の開発費が投資されていると聞く。
通常、何の制限もかけない方が開発しやすいはずなのだ、ワープシステムだけが違う。
純血日本人は何かを誘因しているはずなのだ、それがワープを可能にしている。
「どうした、寂しくなったか。」
倫太郎が訪ねてきた沙羅を抱きしめ、キスをする。
沙羅はどこから見ても美貌の少女に育った、13歳だ。
「ライを見つけた。」
沙羅が壁面モニターの電源を入れ、情報をひきだす。
それは先程まで倫太郎が見ていたイーシャンエレクトロンのワープシステムの開発記事だった。
沙羅がさしたのは、新しいイーシャン総帥リーライ・イーシャンだ。
間違っても南米で純血日本人を攫って集める必要のない人間だ。
「お祖父さまが、リーライとママは留学先で付き合っていて、結婚したいって話もあったけど日本人でないから許可しなかったって。」
それだ。
その後、沙羅の母親は鷹司と知り合い結婚したのか。
リーライの方はそうはいかなかった。
沙羅の母親に固執したんだな。
純血日本人という意識がなかったら、沙羅の母親は結婚を許されたのかもしれない。
相手はイーシャングループだ、鷹司など目じゃない。
ワープシステムが憎いだろうな。
100年経った今でも、この機械以上のものは作れない。
うちの先祖はどれだけの頭脳をしていたのだろう、他のものに比べ、このワープシステムだけが突出している。
「倫太郎さん、何か食べれる?作るね。」
沙羅は私の腕から抜け出すとキッチンに向かった。
沙羅は弟を探しているが、リーライ・イーシャンの元にいるなら安全なのではないか。
キッチンからいい匂いが漂ってきた。
一般家庭でも、家事は機械がすることが多い為、調理をするのは趣味のカテゴリーだ。
機械では直ぐにできるので、この待つ楽しみというのは手作りだからこそと知った。
ワインを用意していると、沙羅が料理を運んできた。
「手伝おうか。」
「大丈夫、時間も遅いから簡単なものだけだから。」
「帰るの?」
「お祖父さまに帰って来るように言われてる。」
「じゃ後で送って行くよ。」
この3年で私は沙羅に溺れた。
沙羅という甘い罠にしっかり捕まってしまった。
会社ではロリコンのレッテルを張られて、女性からは縁遠い。
若くてピチピチに比べられるのはイヤだと言う。
確かに正論である、悪いと思いながらも沙羅の肌と比べてしまう。
情事の途中で興ざめする事もしばしばだった。
私の肩書きがあると女の方から寄ってくる。
それも沙羅が男を受け入れる体に成るまでの間だけだったが。
ここまでくると、沙羅が16歳になると結婚するというのは誰にも覆せない。
ケックス、二条、鷹司でコンゴロマリットが形成されつつある。
お互いの傘下で重なる業種の企業は独自でいくか、合併させるか調査中である。
中核にあるのが、沙羅という存在だ。
ここにイーシャングループも関わってきた。
沙羅はどれ程の運をもっているのだろう。
イーシャンが敵になるか味方になるかはわからないが、関わらざるを得ないのだ。
「明日は鷹司との会合だ。精力的だね、宇宙開発を狙っているよ。」
「海王星で採れるパラサイトモフはケックスでも喉から手が出るほど必要でしょ。」
クスッと笑って沙羅が言う。
「多分、イーシャンも狙ってくる、負けることはないが、争いたくないな。」
「つまり、調整するってこと?
リーライに会う事になるの?」
「期待に添えるようにするよ。」
沙羅が抱きついてきた、甘い香りがただよう。
そのまま抱き上げ、ベッドに運ぶ。




