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冬野つぐみのオモイカタ ―女子大生二人。トコロニヨリ、ヒトリ。行方不明―  作者: とは


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聞き取る言葉と使えない力

 前を走っていたシヤが唐突に立ち止まった。

 後ろをついていた品子は、彼女に声を掛ける。


「シヤ?」

「品子姉さん。つぐみさんが多分、捕まりました」


 シヤは目を閉じ、右耳に手を当て集中している。


「体を操られて、どこかへ移動させられているようです」

「ならば、リードで彼女のいる所へ!」

「それが出来ないのです。昨日もそうでしたが、この辺りに何か邪魔が入ってしまって。つぐみさんの声は聞くことが出来るのですが」


 品子は昨日の惟之の話を思い出す。

 ヒイラギが彼の元に辿り着くのに、ずいぶん時間が掛かっていた。

 つまりこの周辺には、何かしらの感知を鈍らせる妨害がなされているということだ。


「でも逆に考えれば、この近くに店とつぐみさんの存在があるはずなんです。リードの力、もう少し発動を強めます。なので品子姉さんには、私がどこか隠れられるような場所を見つけて欲しいのです」


 シヤはストールを握りながら、戸惑いの表情を浮かべている。

 確かにこの場で発動を強めたら、この子には困ることになってしまう。

 品子はシヤの頭をそっと撫でると優しく語り掛けた。


「すまない。この辺りなら車を停めておいても大丈夫そうだから、ここへ車を移動させる。少しだけ待っててくれ」

「はい、お願いします。惟之さんと兄さんにも、こちらに来てもらった方がいいと思います」

「わかった。二人にも来てもらおう」


 品子をまっすぐ見つめながら、シヤは続ける。


「もう、……間に合わないのは嫌なのです」


 冬野つぐみに対し、シヤの母親であるマキエの面影を垣間見ることは品子にも何度かあった。

 同じ思いをこの子も抱いていたということか。

 それにしてもシヤが他人に対して、ましてやたった一日、一緒に居ただけの彼女にここまでの思いを抱いていることに品子は驚く。


「……あぁ、そうだな。冬野君のことだ。きっと何か、こちらに気づかせるような行動を取るはず。私達はきちんとそれを見つけ出すよ。必ず彼女を取り戻すんだ」


 惟之達に連絡をしながら、品子は走り出す。

 今度こそは、あの時のような結末にはさせない。

 もう二度と彼らに、あんな顔をさせてはいけないのだ。

 強い決意を胸に、品子はひたすらに足を進めていくのだった。

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