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クエスト名称:不安と期待を乗せて


 鬼勇者と変態女賢者の冒険がクライマックスに入ろうとしているが、ここに来て、一抹の不安が、僕の頭の中をグルグル旋回している。


 その不安とは……。

「真衣、お金ちょーだい」

「……なにに使うの?」

「あそこに易者がいるだろ?」

 ナスカーサのメインストリートから脇へ逸れて、人気のまばらな路地に、小さなテーブルひとつ、易者がぽつんと商売をしている。


 それを指さして僕は、

「李里ちゃんへの告白が上手くいくかどうか、見てもらいたいんだ。アドバイスとかも受けたいしさ。な、いいだろ? お金ちょーだい!」

「……本気で告白する気なの?」

 不機嫌に顔をしかめて真衣は、僕の正気を疑っている。

 まるで、僕に告白させたくないようだ。


「そりゃあ告白するさ。でも、告白するタイミングってのがある。効果的なのはやっぱり、魔王を倒して李里ちゃんを救出した直後が、僕の勇士と頑張りを見ているぶん、僕の告白に対して、『イエス』の回答が得られやすい気がする。けど、成功率を高めたいしさ、易者に見てもらいたいんだよ! 頼むから、お金ちょーだい!!」

 半分ダダをこねて、お願いする。


 すると真衣は、人の恋路を摩邪するわけにもいかないというふうに頭をふって、

「はあ……ユッキーのバカ……。これで見てもらいなさいよ」

 3Gくれた。


「え、もうすこし、色をつけてくれたっていいじゃないか」

「これで充分よ、ふんっ」

 早く行って来なさい、と背中を押された。


「なんだ? 人の恋を邪魔するでもないし、応援するでもない、その態度は」

 愚痴をこぼしながら僕は、ヤギのような髭を蓄えた易者の前に立ち、3Gを出して、

「すみません。これで、僕の告白が上手くいくか見てもらえますか?」

「ほほう、告白とな? 縁談についてのことじゃが、どれどれ……ん? たった3ゴールドの見料では、すべてを見る事はできんのう。20ゴールドじゃ」

「20ゴールドも……それじゃ、」

 僕は、うしろにいる真衣へ振り返り、

「あと17ドールドちょーだい」

 両手を差し出して言えば、真衣がツンとした澄まし顔で、

「3ゴールドぶんの価値で見てもらいなさいよ。占いに17ゴールドは高いわ」

「うえぇ……ひどい! まるで、おもちゃをねだる子どもを無視して売場を立ち去る無慈悲な鬼母みたいだ!」

「だれが鬼母ですって!? そんなこと言うなら、もう絶対にあげない!」

 腕組みして、プイッとそっぽを向いた真衣、

「見てもらわないなら、さっさと行くわよ」

 冷たく言い放つ。


 くそぉ……僕に恨みでもあるのか? 血も涙もない。

「んじゃ、そういうことなんで……3ゴールドぶんの価値で、僕の告白が上手くいくか見てください」

「無茶な事をおっしゃるお方じゃのう……うんにゃ、仕方ない。3ゴールドぶん、見てさしあげよう」

 しぶしぶ承知した易者は、テーブルの隅に、ひょいっとひっくり返した砂時計を置いて、

「どれ、手のひらをみせなされ…………ふむふむ。ほほう……なーるほど」

 僕の手のひらを見下ろして、手相を確認しているようだ。

 しばらくの間、じっくり熟視すると、

「ほーう、これはなかなか、三角関係のようでもある……じゃがのう……お、これは!!」

 カッ!! と眼を瞠った。

「わかったぞい」

「僕の告白は上手くいきますか!? どうなんです? きかせてください!」

「ふむ、じゃがその前に、砂が全部落ちた」

 テーブルの隅に置いた砂時計を指さして易者は、

「時間切れじゃ」

「ざんけな! 詐欺じゃねーか! あやしいと思ったよ、砂時計とかさ!!」

 僕の手相より、時間を見ていやがる。

 こんな易者の言うこと、当るわけがない。


「ユッキー、こっちも時間切れ。早く魔王城に行くわよ。李里が待っているんだから」

「ああん、そんなあ……」

 告白の成功率を高めようとしたら、いたずらに金と時間を消費して終わった……。






 ところで、肝心の李里ちゃんなのだが……。

 教会で通信を頼んだら、神父に、

「残念ながら、その人との通信はできません」

 と言われた。


 通信って……。

 ゲーム世界のNPCがそれを言うのはメタ発言ではないかと僕は首をひねった。


「魔王城のバリアを破壊したのが原因かも。それで、李里と通信ができないのよ」

 と、これは名探偵勇者真衣の推理で、

「私たちの、リアル世界への帰還も近いわね」

 ゲームストーリーを逆算しはじめる。

 僕も、クエクエなどのRPGにかぎらず、『あ、そろそろ終盤だな』ってのは肌で感じるけどさ……。ここまで来て、魔王に敗れることがあれば、最悪だぞ。


 なんてったって、この世界での『死』は、リアル世界での『死』と同意である。

 リセット不可能なんだから、いままで以上に慎重な態度で臨みたい。


「李里も不安に思ってるはず。装備も整えたし、救出に向かうわよ」

「おう! 僕だって、李里ちゃんを助けた英雄になりたいし、最高にカッコいい場面で、告白したい」


 僕は想像する。

 魔王を倒し、燃えさかる魔王城から、李里ちゃんをお姫様抱っこした僕が華麗に飛び出すシーンを。


 そして告白をして受け入れられて、永遠の愛を誓った僕と李里ちゃんは口づけをかわし、リアル世界へと帰還を果たす。

 ゲーム世界のおかげで僕は、彼女と結ばれてハッピーエンドになりました!!


「よっしゃー! 早く気球を出せよ、真衣!! 李里ちゃんが僕を待っている!」

「ユッキーが助けに来てることを知らないのに、待ってるわけないでしょ」

 気球を準備する真衣が、軽く僕を一蹴して、

「だいたい、李里がユッキーのこと、好きでいるのかすら不明なんだからね。フラれたときのことも考えておきなさいよ」

「フラれるなんて100パーセントないから大丈夫だ」

「……あっそ」

 準備の整った気球に乗り込んで、真衣は、

「恋は盲目っていうけど、灯台下暗しよね」

「はあ……?」


「見えないなら良いわよ、バカ。……さ、魔王城に行くわ」

 3つのしるしが涙滴型の石になった〔しるしの石〕は、虹色の光を放ち、魔王城の方角を示している。

 しるしの石をペンダントのようにして、首からさげている真衣。


 虹色の光がしめす方角へ、気球を進める。

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