七夕
3Mの第四十六弾、七夕のお話
「何をしてるの?」
キキキの問い掛けに逢歌が七夕飾りを作りながら答える。
「七夕飾りを作ってるのよ?」
「七夕?」
首を傾げる異界娘達に恵が答える。
「星座の逸話に因んだ行事だよ」
「どんな逸話ですか?」
クククが聞くとオオオが答える。
「リア充の恋人達がいちゃつきすぎて、仕事しないからって離れ離れにされるって話だ。そんで、七夕の日だけあっていちゃつけるって奴でな、その幸せにおすそ分け貰おうと、願い事を書く風習だったよな」
半眼になる恵。
「まあ、大きく外れてないけどね。何処の世界でも星座には、逸話がつき物なんだけど、この七夕って言うのは、ちょっと特殊かな」
「特殊ってどういう事ですか?」
詩莉阿が訊ねると恵が地面に簡単に星座を描いて言う。
「この星座配置って天体魔法に適した配置なんだよ」
「それじゃあ、短冊の願い事って叶うの!」
目を輝かせる逢歌に対して恵が苦笑する。
「ちゃんとした知識と形式をそって行えば天体魔法を起動させられるってだけで、好きな願いが叶うって訳じゃないよ」
「なんだ、つまらないの」
逢歌が残念そうな顔をしていると、ケケケが大きな笹を持ってくる。
「これで良かったですか?」
「十分。それじゃあ飾りを始めようか」
恵がそういって飾りつけを始めるとクククが素朴な疑問を上げる。
「何でここでその七夕飾りをしているんですか?」
短い沈黙の後、恵が言う。
「うちは、勿体無いって笹買うことすら認められなかった」
「うちの笹は、こんなのよ」
腰の辺りを示す逢歌。
「えーとうちでは、七夕自体をやらないもので」
詩莉阿が申し訳なさそうに言う。
「詰り、折角のイベントを思いっきり楽しむ為にここを使ったって事だな」
オオオの突っ込みに恵があっさり頷く。
「偶には、いいじゃん。それより、デビンは、どうしてる?」
「七夕絡みで仙台のページで見つけた牛タンに嵌ってるぞ」
オオオの答えに眉を顰める恵。
「また高い物を、うーんあちきの裏資金もどんどん減ってるな」
「俺も稼ぐから安心しろ」
胸を張るオオオに対して恵が一枚の証文を見せて言う。
「そういう台詞は、先月貸したお金を返してからいいな」
「それは、次の仕事のギャラで必ず」
オオオが必死に取り繕うのであった。
七夕飾りも終わり、短冊に願い事を書く逢歌達。
「叶わないって解っているのに書くのですね」
意外そうな顔をするキキキに逢歌が笑顔で答える。
「こういうのって気分だろ。あんたも書いたらどうだ?」
「私は、そんな願い事なんて……」
言葉に詰るキキキ。
「今日の鍛錬始めるよ」
恵にそう声を掛けられたのをチャンスとその場から離れるキキキであった。
深夜、キキキは、七夕飾りをされた笹の前に居た。
「私の願い……」
星空を見上げるキキキ。
「この世界は、殆ど星が見えないんですよね」
そこにオオオがやってくる。
「ホームシックか?」
「ホームシック?」
言葉の意味が解らず聞き返すキキキ。
「あっちの世界に帰りたくなったんだろうって事だよ」
オオオの説明にキキキは、沈黙する。
「まあ、お前達は、嫌でも帰るんだ。少しでも早く帰りたかったら鍛錬を頑張るんだな」
「そういう貴方は、どうするのですか?」
キキキの問い掛けにオオオが真剣な顔をする。
「俺は、こっちに永住するつもりだ」
「メグミお姉様がいるからですか?」
キキキが確認するとオオオが強く頷く。
「俺にとって一番大切な女だからな」
迷いの無いオオオの顔にキキキが呟く。
「メグミお姉様は、今もお父様の事を好きだと思います」
嫌そうな顔をするオオオ。
「そうだな。恵にとってアアアは、特別なんだよ」
「前から聞こうと思っていたのですが、メグミお姉様とお父様とは、本当は、どんな関係だったのですか?」
深く切り込むキキキにオオオが頭を掻きながら答える。
「唯一全てを晒せる人間。アアアも恵もそういう相手が他に居ない」
「お父様には、お母様が居ます」
キキキの主張にオオオが苦笑する。
「アアアにとってイイイは、護るべき者であり、同じ位置に居る者じゃない。一緒に死地に居られる女性だって事だよ」
「よく解りません」
キキキの答えにオオオがあっさりという。
「だろうな。男と女なんてそうそう簡単に理解できるもんじゃないんだよ」
翌日、オオオは、武器を準備してバイクに跨る。
「稼いでくるぜ」
「失敗するんじゃないよ」
恵の突っ込みにオオオが溜め息を吐く。
「お前は、何で俺への信用度がそんなに低いんだ?」
「実例を挙げられたい?」
恵の言葉に何も言わずバイクを発進させるオオオであった。
「そんじゃ今日も鍛錬始めるよ」
そして恵による異界三娘の鍛錬が始まるのであった。
暫く経った時、恵が眉を顰める。
「オオオ、ドジッたな」
「ドジッたってどうかしたの?」
笹飾りを見に来ていた逢歌の言葉に恵が嫌そうな顔をする
「邪悪な気配があふれ出してる」
そして恵の電話が鳴る。
『恵ちゃん、ヘルプ!』
紫影のからの助けを求める声に恵が面倒そうに言う。
「何がどうした?」
『古代の悪魔を封印した壷を奪取をやってたんだけど、オオオさんの一撃で壷の封印が壊れて復活しちゃったの』
紫影の答えに呆れ顔になる恵。
「だったらオオオに責任とって倒させなよ」
『それが、そのオオオさんの体を使って復活したのよ』
紫影の返事に顔を押える恵。
「本当に、馬鹿なんだから。場所は、何処?」
紫影から場所を聞いて恵は、少し思案顔して一枚の短冊を取り出す。
「天体魔法って奴を見せてあげる」
そういうと短冊に複雑な紋様を描き、笹に吊るす。
すると、風が無いのに笹が揺れる。
それは、ここの笹だけに止まらず、周囲に飾られていた笹にも広がっていく。
笹から光が立ち昇っていき、それが一定の方向に集まっていく。
「何をしたの?」
逢歌の質問に恵が答える。
「今の天体配置の時にしか使えない天体魔法で、笹というか七夕飾りをした時の人々の純粋な思いを光に替えて邪悪な者を排除するって奴。今頃、オオオにとりついた悪魔があの光で撃退されてる筈だよ」
『今更だけど、遠距離から古の悪魔を撃退するなんて、どんだけ凄い魔法なの?』
紫影の言葉に恵が苦笑する。
「時期限定の魔法だけどね。そんで、仕事は、失敗って事になるの?」
『いいえ、元々、古の悪魔を利用するつもりは、全く無かったから、排除でも問題ないわ』
紫影の答えに恵が言う。
「だったら、オオオに言っておいて、今回のギャラを全部、差し出すか、貸しにするか好きな方を選べって」
『究極の選択ね。伝えておくわ』
そう言い残して紫影は、電話を切るのであった。
「凄いですね!」
目を輝かせるキキキを他所に恵が解説する。
「今回は、かなり特殊な例だったけど、物にたずさわった人の気が宿る。それを利用するのは、神器の強化にも応用できるから覚えておきな」
「はい!」
元気に返事をするケケケであった。
ちなみにオオオは、ギャラを全て差し出すほうを選んだ。
「これ以上、借りを作ったら対等の立場に立てねえからしかたねえんだよ」
と切れていた。




